
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)06月02日 月曜日 徳洲新聞 NO.1494 4面
札幌東徳洲会病院が昨年4月に開設したハイブリッドERが好調だ。ER(救急救命室)の一角に、CT(コンピュータ断層撮影装置)室と血管造影装置(アンギオ)室が隣接し、必要に応じCTのガントリ(ドーナツ状の放射線照射装置)をアンギオ室にスライド可能。これによりアンギオCT(IVR-CT)として検査・診断・治療が並行して行え、一刻を争う重症患者さんの救命率向上が期待できる。
「症例を積み重ね当院のハイブリッドERを完成させたい」と松田・副センター長
札幌東病院がハイブリッドER導入により解決を目指した課題は、①ER関連問題(画像検査待ち時間を短縮し、治療を早期化)、②CT関連問題(予約患者さんの待ち時間を短縮)、③冠動脈造影検査(CAG)関連問題(CAG室スタッフの残業時間短縮)、④ERと放射線部門の動線問題。
同院はハイブリッドERの効率的な運用を目指し、運用基準やプロトコル(救急患者さんの診療場所決定支援フロー)を作成。たとえば蘇生が必要な場合、または気管挿管やCV(中心静脈カテーテル)などデバイスが必要な場合は、ハイブリッドERに搬入、画像を最優先で見たい場合(片麻痺や高齢者の股関節痛など)は、CT室(アンギオ室にスライドしない状態)に直接搬入など設定した。
ガントリは自走式で奥のアンギオ室に移動可能
開設から1年が経過、外来算定CTは平均して月間1,000件稼働と好調だ。ただし課題は、ハイブリッドER関連以外の使用も多い点。この傾向はアンギオでも同様だ。
要因について松田律史・救急センター副センター長は「プロトコルの順守率が低い点、ハイブリッドERの使用に慣れていない点が考えられます。当院は昨年、救急車受け入れ件数が1万件以上あり、重症患者さんも運ばれますので、本来であれば、ハイブリッドERの使用件数がもっと多くなるはずです」と分析する。
ハイブリッドERでシミュレーション訓練
ハイブリッドERの対象疾患のひとつに、多発外傷がある。交通事故や高所転落などによって複数部位に損傷を受けた患者さんに対し、迅速なCT検査で損傷部位を把握し、出血源に対してIVR(画像下治療)による止血や外科的介入を同時に行うことが可能。とくに骨盤骨折や肝損傷など、出血性ショックに至るような病態では、処置時間の短縮がそのまま生存率の向上に直結する。
月1回の頻度で症例検討会を開き研鑽
松田・副センター長は「ハイブリッドERを使い、成功体験を積み重ねていけば、早く治療ができる、救命率が上がることを実感できると思います」と強調。導入当時、研修医や若手医師からは夜間の利用報告で「CT撮影に時間がかかる」などネガティブな意見が多かったが、運用していくなかで、看護師や診療放射線技師からは「移動なしで検査と治療ができるからスムーズ」といった感想も出てきた。
「数カ月でローテーションする研修医だと、ハイブリッドERのメリットを感じる前に研修を終えてしまうケースもあります。一方、看護師や診療放射線技師は長く勤めるので、慣れることで、利点を享受できるようになってきたのだと思います」(松田・副センター長)
そこで力を入れているのは、教育体制の確立だ。月1回の症例検討会や研修医オリエンテーション、多職種で実際の流れを確認するシミュレーション訓練――これらを定期的に行うことで、夜間の稼働件数を増やしていく考えだ。
今年度は関連診療科との研修も計画。ハイブリッドERで体外循環式心肺蘇生法(ECPR)を行うための循環器内科や臨床工学技士との訓練、外科手術を行うための外科や手術室看護師との訓練などを考えている。
また、プロトコルは松田・副センター長が作成したものを、関連診療科の医師に確認してもらい完成させたが、「まだ発展途上なので、症例を重ねて現場の声を取り入れながら改善していきたい」と展望。同様に、室内レイアウトも「現場の声から、人工呼吸器の蛇管を長くするなどして、この1年で2回レイアウト変更しています」と明かす。
松田・副センター長は「試行錯誤を繰り返し、当院のハイブリッドERを完成させたいと思います」と意欲的。「救命率の向上のためにハイブリッドERがあり、利用件数アップが患者さんのためにつながります。今後もスタッフと協力しながら、ひとりでも多くの命を救っていきたいです」と力を込める。