
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)03月24日 月曜日 徳洲新聞 NO.1484 4面
犯罪被害や性的暴力、事故、自然災害など生命を脅かすような重大な出来事(トラウマ体験)によって発症するPTSD(Post Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)。本人が直接体験したケースだけでなく、身近な人が体験したり、他者がそうした体験に巻き込まれるのを間近に目撃したりした場合でも発症することがあります。自分の意思と関係なく恐怖の感情や記憶がよみがえり、また、身体症状などによって、社会生活に支障を来す重大な疾患のひとつです。徳洲会グループで唯一の精神科単科病院である横浜日野病院の馬場淳臣院長が解説します。
馬場淳臣・横浜日野病院院長
PTSDという疾患概念が登場したのは1980年のことです。米国精神医学会が策定した「DSM-Ⅲ(Diagnostic and Statistical Manual 3rd、精神疾患の診断・統計マニュアル第3版」に収載されました。それ以前から、極度に強い精神的ストレスにさらされた場合に精神症状を呈することは知られていましたが、医学的に定義されたのが、この年でした。
ベトナム戦争(55~75年)に派兵された米国の帰還兵のなかに、帰国後、悪夢を度々見るようになったり、怒りっぽく暴力的になったり、情緒不安定になったりと、精神の不調が多く認められたことから、詳しい研究が始まったのが端緒です。
日本では95年に発災した阪神・淡路大震災をきっかけに広く知られるようになりました。被災された方々や、救援者の方々のなかにもPTSDの発症が確認され、「心のケア」の重要性を指摘する声が多数あがったことをご記憶の方も多いでしょう。
診断はDSM-5に基づいて行い、診断基準はA~Hまで8項目あります。紙幅の都合で詳細は割愛しますが、概要はおおよそ以下のとおりです。
A.実際の死亡または脅迫された死亡、重傷、または性的暴力への曝露を受けること、B.トラウマ体験に関連する侵入症状(再体験)がある、C.トラウマ体験に関連する苦痛な記憶、思考、感情と、それらを呼び起こす人、場所、会話などの持続的な回避、そのための努力が見られる、D.認知と気分の否定的な変化、E.覚醒と反応性の著しい変化。人や物に対する怒りの言動、攻撃的な態度、無謀または自己破壊的な行動、過敏な警戒、物事への集中の困難、睡眠障害など、F.障害の持続期間 (基準 B、C、D、E) が 1カ月以上。※1カ月以内の場合は、急性ストレス障害(ASD)に該当するとされる、G.社会的、職業的、臨床的に重大な苦痛または障害を引き起こしている、H.物質(例:薬物、アルコール)または別の病状の生理学的影響に起因するものではないこと。以上の8項目です。
治療法としては、PTSDの身体・精神症状を抑えるために、うつ病や不安障害の治療に用いるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる薬剤による薬物療法や、精神療法(心理療法)、認知行動療法があります。
他の精神疾患と同様に、診断や治療には高度かつ専門的な精神医学的知識・技術が必要であり、慎重さが求められます。安易な自己診断は疾患の長期化や治療機会の喪失につながりかねません。ご自身の状態について不安があれば、医療機関を受診することをおすすめします。