
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)02月25日 火曜日 徳洲新聞 NO.1480 4面
両下肢のしびれや痛みの原因となる疾患は複数ありますが、腰部脊柱管狭窄症は、その代表的な疾患のひとつです。骨や靱帯の変形・肥厚などによって、神経の通り道である脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されることで発症します。長時間の歩行が困難となったり、排尿障害が起こったりと、ADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)の低下を引き起こします。脳神経外科専門医や脊椎脊髄外科専門医など専門医資格を有する湘南大磯病院(神奈川県)の権藤学司院長が解説します。
権藤学司・湘南大磯病院(神奈川県)院長
狭くなった脊柱管を減圧手術で広げ、症状を取り除く(部分的椎弓切除術の術前・術後のMRI画像)
人間の脊椎(背骨)は上部から頸椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾椎で構成され、腰椎は5つの骨(椎骨)から成ります。
そして、これら一つひとつの椎骨は、靱帯や椎間板で連結され身体を支えています。
椎間板は椎骨と椎骨の間にありクッションの役目を果たしていますが、加齢にともない水分量が減少し、弾力が失われます。それにともなって椎骨同士の間隔が狭まり、椎間板を取り囲む靱帯がたわんで変形・膨隆したり、椎骨の変形も生じたりします。また、脊柱管の後方(背中側)にある黄色靱帯でも肥厚や石灰化が起こり、脊柱管が狭窄することがあります。
このように靱帯や骨の変形によって、下肢の知覚・運動と関係している馬尾神経や神経根が通る脊柱管が狭窄し、神経が圧迫を受けることで発症するのが腰部脊柱管狭窄症です。
これまでの報告によると、50代では約10人に1人が発症していると言われています。高齢になるほど発症割合は増加し、80代では約4割の方に見られるという報告もあります。
症状としては下肢のしびれや痛み、腰痛、排尿困難などの膀胱直腸障害などが現れます。最も特徴的なのは間欠性跛行です。これは数百メートルと比較的長い距離を歩くと、両下肢のしびれや痛みを感じて歩けなくなるものの、しばらく休んだり腰をかがめたりしていると、また歩けるようになるというものです。
間欠性跛行は原因によって神経性と血管性に分類できます。上述したのは神経性で、腰部脊柱管狭窄症によるものです。
一方、閉塞性動脈硬化症(ASO)をはじめ下肢の血流障害で発症するのが、血管性間欠性跛行です。足背動脈や後脛骨動脈といった足の血管を触知し、脈をほとんど感じることができない場合は、血管性が疑われるためABI(血圧脈波)検査を行い、下肢動脈の血流評価を行います。脈を感じることができた場合は、MRI(磁気共鳴画像)検査により、脊柱管の画像診断を行います。
症状が出ていても日常生活への影響が小さい場合は、消炎鎮痛剤やビタミンB12製剤といった痛みやしびれに対する薬剤、神経組織への血流を改善する薬剤の投与、腰椎を支える腹筋・背筋を強化する運動療法など、保存的療法を行います。それでも症状が改善せず、5分程度歩いただけで痛みやしびれなどで歩行困難になったり、運動まひや膀胱直腸障害などが進行し、重い症状が見られたりする場合は手術を検討します。
手術は部分的椎弓切除術という圧迫を解除(減圧)する手術を行い、必要に応じて、背骨のぐらつきを止める脊椎固定術をあわせて実施します。手術時間は1~2時間、手術翌日から歩行訓練を開始し、入院期間は術後1週間から10日ほどです。