徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

日高徳洲会病院(北海道) 院長
井齋 偉矢(いさいひでや)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

井齋 偉矢(いさいひでや)

日高徳洲会病院(北海道) 院長

2025年(令和7年)02月25日 火曜日 徳洲新聞 NO.1480

新病院建設地は標高42mの高台に
浸水の可能性がなく地盤もしっかり
移転先の新冠町からは多様なサポート提案も

去る1月10日の徳洲会執行理事会で、日高徳洲会病院を隣町である新冠町の西泊津に新築移転することが正式に決まりました。この土地は新冠町の町有地であり、その面積は1万596坪と、現在の約2倍になります。新ひだか町にある現病院からの距離は約4kmです。

実は、この土地を選ぶ前、新ひだか町内に、2022年に9,000坪の土地を取得しました。しかし、土地の詳細な地質調査の結果、予想以上の軟弱地盤で、土の入れ替えに莫大な費用がかかることから、病院建設を断念した経緯があります。

日高自動車道が新冠町まで延伸 札幌市への転院搬送時間が短縮

そこで、新たな土地の対象を新ひだか町だけでなく、隣接する新冠町にも広げることを北海道新聞紙上で表明しました。これをきっかけに、新冠町が病院誘致に大きく踏み出してきました。この時点では、まだ現病院から近い新ひだか町内に適当な土地があるのに越したことはないと考えていましたので、新ひだか町にも候補地を挙げていただくよう要請しました。これにより新ひだか町から3カ所、新冠町から11カ所の候補地が示されました。

候補地を詳細に検討した結果、新ひだか町の1カ所と新冠町の2カ所が最終選考に残りました。この過程で、新ひだか町からは新築移転に関し、特段のサポートをいただけないことが明言されていましたが、新冠町からは役場と議会から新築移転に関するさまざまなサポートの提案をいただきました。最終選考では、新ひだか町の土地は現病院から近いのですが、土地が農地で、形が歪であり、敷地面積が現病院と変わらないこと、浸水予測が津波でも洪水でも最大3mであることから不適当となりました。新冠町の民有地は十分な広さがありましたが、浸水予測が津波で1.5m、洪水で5mあり、しかも軟弱地盤で、土の入れ替え費用が新冠町の支払い能力を超えていたため、不適当となりました。

新冠町のもう1カ所は標高42mの高台にあり、浸水の可能性がなく、地盤もしっかりしていましたので、この町有地が最終候補地となりました。

これについて1月24日にプレスリリースを配信しました。北海道新聞の記事を引用します。「災害時の代替路としての役割を期待される『日高自動車道』の日高厚賀インターチェンジ(IC)-新冠 IC(仮称)間が 25 年度に開通予定で、移転先は新冠 IC に近づくため、札幌の高度医療機関などへの重篤患者の転院搬送時間が短縮される見込みだ。防災を最優先に移転地を決めたことについて、北大大学院地震火山研究観測センターの髙橋浩晃教授(地震学)は『安全な場所に地域医療を守る病院を移転することは住民の安心にもつながる』と話す」。

新冠町は国保診療所閉鎖へ 当院が町唯一の医療機関に

最近では病院の新築移転において、防災を第一に考え、高台に移転する傾向が見られます。高台に移転するメリットは、①浸水被害の軽減(津波や洪水による浸水被害を軽減できます)、②建物の安全性の向上(地盤が安定している高台に建設することで、地震による建物の倒壊リスクを低減できます)、③医療機能の維持(災害時でも医療機能を維持し、患者さんの受け入れや治療を継続できます)。

新冠町は住民説明会を開催し、当院が同町に移転した後に、国保診療所を閉鎖する方針であることが示されました。同じ自治体の中に有力な病院がある場合、自治体が病院をもたない例として、北海道では北見市(赤十字病院)、網走市(JA厚生病院)などがあります。新ひだか町には当院があるにもかかわらず、当院の1/3以下の規模の町立病院を維持しており、どうしても当院に残ってほしいという熱意が感じられなかったことも、新冠町移転の遠因になっています。まもなく仕切り直しの設計がスタートします。

最後に3月5日刊行の拙書『漢方で腸から体を整える』(青春出版社刊、1,265円)を紹介します。漢方薬の適切な使用により、腸内の善玉菌を活性化し、腸管免疫力が上がりますので、お腹の不調はもとより、風邪やインフルエンザ、新型コロナなどの感染症にかかりにくくなり、糖尿病や腎臓病、肥満を予防し、精神の安定ももたらしてくれます。そんな腸から体を整える漢方薬の活用法を執筆しました。

しっかり“腸活”をして、皆で頑張りましょう。

PAGE TOP

PAGE TOP