徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2026年(令和8年)01月01日 木曜日 徳洲新聞 NO.1524 3面

“生命だけは平等だ”の理念広がる
国際医療協力が加速度的に進展

医療協力を通じて徳洲会の理念を世界に

「解離が弓部まで及んでいます。胸骨正中切開で手術を行います」。心臓血管外科医が早口の英語でまくし立てると、経験豊富な外回り看護師が「麻酔導入が完了し、ライン確保しました。エコーの準備もできています」と応じた。

手術室には緊迫した空気が流れていた。この救急患者さんが、スタンフォードA型急性大動脈解離だったからだ。心タンポナーデなど致命的な合併症や、破裂による突然死のリスクも高く、緊急手術を要する。搬送後、血圧管理を行い、造影CTなどに基づく診断、麻酔の導入・ライン確保など救命を目指し迅速に動き出した。手術では、人工心肺を開始して超低体温循環停止下に4分岐の人工血管を吻合。自己心拍の再開を認め、リーク(吻合部からの血液の漏れ)がないことや心機能を確認し、7時間におよぶ弓部大動脈全置換術を終えた。

手術室内に飛び交う言葉は英語だが、そこにいるのは日本人とインドネシア人だった。執刀医は半年の予定でインドネシアに滞在している徳洲会の心臓血管外科医。インドネシア人の医師や看護師、臨床工学技士に交じり、数人の日本人医師も手術を見学、研鑽を積んでいる。

これは、インドネシアの首都ジャカルタにある「ハラパンキタ・徳洲会循環器病センター」での出来事だ。時は近未来というにはやや時間的な隔たりの小さい2027年某月のこと。同センターは、技術支援や人材交流などを通じて徳洲会が同国の循環器医療の向上に貢献することを目的に、国立ハラパンキタ循環器病センターとの共同プロジェクトとして26年に開設した。時計の針をもう少し進めた3年後の29年には年間で開胸手術が5,000例、心臓カテーテル治療は1万例を超えた。周辺国の患者さんも多数受け入れ、東南アジアの循環器病センターとして存在感を発揮する未来社会が靴音を立てている。

「患者さんのために」を行動原理に

“生命だけは平等だ”の理念の下、徳洲会創設者の徳田虎雄・名誉理事長は「世界の厚生省になる」ことを目標に掲げた。それはアフリカやアジア、東欧、南米各国で、透析機器の寄贈や透析センターの開設支援、腎移植支援、病院開設、病院開設支援などに結実した。

国際医療協力を支えるのは打算のない理念と哲学だ。種まく人がいれば落穂を拾う人もいるし、糸をつむぐ人もいる。下準備から条件の調整・折衝、役割分担、運用ルールの整備、実際の運用、不測の事態への備え……。

デジタル社会でも、泥臭さを厭わない懸命さと清廉さが欠かせない。インドネシアのケースはそのひとつであり、これ以外にも近い将来、医療協力の覚書(MOU)を締結した中国の徳州医院との人材交流による両者間の臨床・研究・教育の充実、タンザニアでの腎臓病・移植センター設立支援、ベトナムでの病院開設・運営支援などが実現し、徳洲会の理念に共感する人たちによって、「患者さんのために」を第一の行動原理とする輪が広がっていくことだろう。

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