
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2026年(令和8年)01月01日 木曜日 徳洲新聞 NO.1524 3面
完全自動手術は医療×ロボット×AIの究極形のひとつ
囲碁のトッププロ棋士にAI(人工知能)が勝利――。AIブームの端緒のひとつとなった出来事だ。それも、かれこれ15年以上前のこと。そう、今は2030年代も半ばの世の中だ。ブームは冷めたが、多くの技術が日常に溶け込んだ。
医療現場の光景も大きく変わった。フルオートメーション手術(完全自動手術)の夢が叶ったのだ。医療×ロボット×AIが生み出した“未来医療”の究極形のひとつと言える。
手術ロボットメーカーは膨大な手術動画を収集しAIで解析。最も安全で成績良好な術式を基本とし、患者さんごとに異なる臓器・組織の癒着や高難度症例などに臨機応変に対応するため、仮想空間で1万台の手術ロボットを並列し、膨大なシミュレーションを実行。数万年分の時間を超高速で早送りして学習させ、自動手術用のアルゴリズムを組成、治験によって安全性・有効性を確認した。
自動手術に先駆けて実用段階に突入していたのが、セキュリティを確保した超低遅延の閉域網による遠隔手術だ。ひと昔前の遠隔診療と言えば、ビデオ通話を用いた診察を主に指すが、この時代は手術の遠隔施行も認められている。離島やへき地など専門医が少ない地域の病院に手術ロボットを置き、それを都市部の専門医が遠隔操作して手術を行うというものだ。
新たなフェーズに移行しても、トラブル対応などのために医師や臨床工学技士らが患者さんのそばにいる。また患者さんに寄り添い、支えとなる看護師の存在など医療者の役割は重要だ。
「それではタイムアウトを行います」。看護師がこう切り出すと、手術室内に流れていたBGMの音量が自動的に絞られた。奄美群島にある徳洲会病院で、今まさに自動手術が始まろうとしていた。離島・へき地をはじめ地域医療を担う徳洲会にとって、遠隔手術や自動手術は親和性の高い技術だ。
「患者さんの氏名は〇〇〇、生年月日は〇〇〇、IDは〇〇〇。年齢は68歳。予定術式は『完全自律型ロボット噴門側胃切除術』で間違いありませんか?」。看護師が続けると、ロボット手術の責任医師が「間違いありません」と返答し、予定出血量や注意点など共有事項を確認した。
この後、手術器具を入れるポート(穴)をつくる手技を医師(人間)が行い、ロボットアームに腹腔鏡や鉗子をセッティングして挿入。腹腔鏡の画像を認識したAIがアームの操作を開始し、スムーズで的確な手技を実行した。医師がうなずきながら画像を見つめる。噴門側の手術は、食道の組織がもろく、残った胃と吻合する際に繊細な操作を要し、高度な技術が求められる。ロボットは経験豊かな専門医と変わらぬ見事な手術を行ってみせた。
技術の進歩と反対に、外科医不足や専門医の偏在など課題は尽きない。ひとつのブレイクスルーとして、遠隔手術や自動手術は期待できるテクノロジーだ。患者さんに恩恵のある技術であれば、徳洲会グループはこれからも安全性を確認しながら取り入れていく方針だ。