徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2025年(令和7年)02月10日 月曜日 徳洲新聞 NO.1478 3面

1月度 徳洲会グループ 医療経営戦略セミ
宮川・大阪大学招聘研究員
ドナー不足補う異種移植研究が進展
遺伝子改変したブタの臓器をヒトへ

1月度の徳洲会医療経営戦略セミナーの初日、日本異種移植研究会会長を務める大阪大学微生物病研究所・遺伝子機能解析分野の宮川周士・招聘研究員が「異種移植の現状と今後の展望2025」をテーマに講演を行った。ブタなど動物の臓器を人に移植するのが異種移植で、ドナー(臓器提供者)不足を背景に米国をはじめ各国で研究が進んでおり、注目が集まっている分野だ。

「ドナー不足を背景に異種移植の必要性が高まっています」と宮川・招聘研究員

米国メリーランド大学で、遺伝子改変ブタの心臓をヒトに移植したのは2022年1月。日本では、これまでに少数の動物実験が実施されたことがある。

宮川・招聘研究員は13年の第12回国際異種移植学会で大会長を務めるなど、日本の異種移植研究の第一人者。はじめに「世界でも日本はとりわけドナー不足が深刻です。そのため、日本でこそ異種移植の研究が発達するべきだと考え、研究に打ち込んできました」と述べ、異種移植の必要性を強調した。

続けて1900年代に始まった異種移植の歴史を概説し、「90年代になるとドナー動物としては、臓器の大きさといった解剖学的な理由、繁殖力、倫理的な理由などから、サルは適さず、ブタが適していると考えられるようになりました」と説明。

異種移植の大きな課題は拒絶反応をいかに制御するかだ。対策せず異種移植を行った場合、数十分以内に超急性拒絶反応が起き、臓器不全に至る。宮川・招聘研究員は拒絶反応を引き起こす補体や凝固、異種抗原、炎症、自然免疫細胞、獲得免疫細胞といった要因を挙げ、メカニズムを解説。たとえば補体は独自に、移植された臓器を異物として認識し、細胞を破壊する免疫機構を構成するタンパク質だ。また動物由来の臓器に存在するα-GALという異種糖鎖抗原に対しては、免疫系がつくる自然抗体が存在し、補体反応を引き起こし、強い拒絶反応が起こる。

これらに対して、遺伝子工学の進歩により、補体制御因子を導入したり、α-GALをノックアウト(特定の遺伝子を欠損させること)したブタを開発したりするなど、拒絶反応を制御するさまざまな方法が考案されてきた歴史をひも解いた。

この後、ブタの膵島や腎臓、心臓をサル(ヒヒ)に移植する前臨床試験(動物実験)の国際的な実施状況や、米国、ドイツ、アルゼンチン、中国、韓国の状況を紹介。最後に日本の研究拠点や日本発の遺伝子改変ブタ、遺伝子編集技術であるCRISPR-Cas3法、厚生労働省による法制度の整備など紹介した。

臨床医療として実用化・普及に向けては、まだハードルがあるが、ドナー不足を補う有効な方策となり得るだけに、研究のさらなる進展が期待される。

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