
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)06月02日 月曜日 徳洲新聞 NO.1494 1面
湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は2025年度文部科学省科学研究費助成事業(科研費)に20の研究課題を申請、このうち今後、臨床開始予定のBNCT(ホウ素中性子補捉療法)に関連した研究課題を中心に8課題が採択された。申請した課題数、採択された課題数、採択率(40%)のいずれも同院では過去最高。同院は研究成果を患者さんに還元することに重きを置き、基礎研究のなかでも「人に応用できる可能性の高い研究」を推進する方針を掲げている。
「競争的資金の獲得という自助努力を行いながら研究を実施」と小林院長
科研費は社会科学や自然科学など、あらゆる分野の基礎から応用までの学術研究の発展を目的とした競争的研究費。独創的・先駆的な研究に助成を行う。今回採択された8研究課題は表のとおり。研究期間はそれぞれ3年間を予定。
医療法人徳洲会専務理事で湘南鎌倉病院の小林修三院長は「研究活動は短期的には利益を生み出すものではなく、大学でもない医療法人の本来のマターではありません。しかし医学の進歩、ひいては患者さんに貢献するため、当院は科研費をはじめ民間の研究助成金なども含め競争的資金の獲得という自助努力を行いながら、研究に取り組んでいます。加えて徳洲会は懐の深い組織であり、日本の未来を支える研究活動の意義を理解し、研究環境の整備などを通じ後押ししています」と説明する。
過去最高の採択件数については「当院のような民間の高度急性期病院で、採択率40%という結果は素晴らしい実績だと自負できると思います。もちろん一朝一夕には望めません。アクティブに臨床医療を行いながらも、これだけの数のレベルの高い研究課題に取り組める能力をもった医師や医療者が増えてきたからこそ、可能になったのです」とアピールしている。
同院では「人に応用できる可能性の高い研究」を推進。そのため基礎研究を行う場合でも、トランスレーショナルリサーチ(基礎研究の成果を臨床に橋渡しする研究)を行う方針を掲げている。
新たながん治療法の開発を目指す柴・主任研究員
採択された研究を一部紹介。「陽子線とホウ素中性子捕獲反応を用いた新たながん治療法の開発」を課題とするのは同院臨床研究センター臨床研究部の柴慎太郎・主任研究員(医師)。陽子線治療(2022年1月~)とともに、BNCT装置(今後、臨床使用予定)がある同院ならではの研究課題だ。「陽子線治療の増感に関する研究の一環で、陽子線照射により体内で発生する中性子と、あらかじめ投与しておいたホウ素剤によりホウ素中性子捕獲反応を起こし、陽子線治療の効果を上げることに主眼を置いた研究です」と説明する。
胃型腫瘍の解明に取り組む佐々木研究員
湘南先端医学研究所がん医療研究部の佐々木亜希子研究員(医師)は「高悪性度十二指腸腫瘍発生の分子基盤の解明」が課題。十二指腸腫瘍のうち、乳頭部よりも口側に発生する胃型腫瘍は臨床的に悪性度が高く早期に浸潤がんとなることが知られている。佐々木研究員は自身のこれまでの研究により、高悪性度のがんの発生リスクが高い組織には、通常よりも高度なエピゲノム異常(DNAメチル化[遺伝子発現制御]異常)が蓄積していることを解明している。
核医学治療の高精度化を目指す八木橋研究員
「本研究では、胃がんの発がん機序を応用し、十二指腸の胃型腫瘍でも高度なDNAメチル化異常が蓄積していることを解明するとともに、その発生機序を明らかにすること、また病変や背景粘膜の内視鏡的、病理学的特徴とあわせ、臨床における早期発見・低侵襲治療に寄与することを目的としています」(佐々木研究員)
線量特性予測システムの開発を行う山野研究員
病理診断部の中村ハルミ主任研究員(医師)も「分子的肉腫分類のためのRNA発現とDNAメチル化によるクラスタリングの比較検討」で採択された。
臨床研究センター臨床研究部の八木橋貴之・主任研究員(医学物理士)の研究課題は「深層学習を用いた核医学治療の高精度化に向けた新たな線量評価法の開発」。核医学治療に関する研究課題で、腫瘍や正常臓器の吸収線量を高精度に評価できる深層学習を用いたシステムの開発を計画。

「これにより吸収線量と治療効果・有害事象発生リスクの関係解明を進めるとともに、患者さん・医療者双方の負担を軽減するSPECT/CT単回撮影による高精度評価システムの開発を目指します。最終的には最適な投与量・回数を患者さんごとに決定する個別化治療の実現への貢献が目的です」と展望を語る。
同部の山野彰大研究員(医学物理士)の課題は「個別化治療のためのX線・陽子線定位放射線治療の新しい線量特性予測システム開発」。「X線と陽子線による定位放射線治療は、それぞれに特性や適応の違いがあります。とくに陽子線治療は、呼吸運動や体内構造の変化など不確定要素の影響を受けやすく、治療法選択の際の客観的な基準が十分に確立されていないのが課題でした」と背景を説明する。
研究全般をサポートする湘南先端医学研究所事務室の平田昌浩室長と國田香菜職員は「当院は救急・急性期医療に注力する総合病院という特徴を有し、急変や合併症への対応を含め手厚い診療体制が強みと言えます。これにより特定臨床研究など高度な研究を実施できる環境が整っています」とアピールする。