徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

医療法人徳洲会 常務理事
武蔵野徳洲会病院(東京都) 院長
桶川 隆嗣(おけがわたかつぐ)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

桶川 隆嗣(おけがわたかつぐ)

医療法人徳洲会 常務理事 武蔵野徳洲会病院(東京都) 院長

2026年(令和8年)01月26日 月曜日 徳洲新聞 NO.1527

数字を直視するのは冷たさではなく
地域医療を守るための責任ある姿勢
職員が主体的に力を発揮できる組織づくりが要

医療を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。人材不足、物価高騰、医療需要の高度化と複雑化など、これらは個別に対処できる課題ではなく、同時並行で医療現場に重くのしかかります。こうした時代に医療機関に求められるのは、短期的な収支調整ではなく「医療を止めずに続けるための判断を、日々どのように積み重ねていくのか」という姿勢そのものだと考えます。

理念は飾るための言葉でなく 判断に迷った時に立ち戻る軸

徳洲会グループは「生命を安心して預けられる病院」、「健康と生活を守る病院」という理念を、言葉として掲げるだけでなく、現場と経営の両面で受け継いできました。そして今年、その理念に「患者さまの権利と尊厳を大切にする病院」という一文が加えられました。それは新たな方向性を示すものというよりも、これまで徳洲会が実践し、積み重ねてきた価値観を、時代の要請に即して明確に言語化したものだと受け止めています。

私自身、医療経営を考えるうえで、稲盛和夫氏の経営哲学に大きな影響を受けてきました。稲盛氏は京セラやKDDIを創業し、日本航空の再建も成し遂げた経営者であると同時に、経営を「人のあり方」から捉え続けた思想家でもあります。医療と経営の両立に悩む中で、その考え方に共感し折に触れて学びました。稲盛氏は「経営の原点は人として何が正しいかを貫くことにある」と述べています。理念とは飾るための言葉ではなく、判断に迷った時に立ち戻る軸です。環境が厳しくなるほど、その軸を持ち続けられるかどうかが、組織の持続力を左右します。

理念は唱えるだけでは意味を持ちません。現実の制約の中で、どのような判断を選び続けるのか。その積み重ねによって初めて、理念は組織に根づいていきます。徳洲会グループが推奨している土曜日の手術実施や、大型連休中であっても通常診療を行う方針は、その具体例です。人員配置やコスト面での負担を踏まえたうえで、それでも「医療を必要とする患者さんの機会を奪わない」、「患者さんの権利と尊厳を守る」という判断を選び続けてきました。これは、理念を運営判断に落とし込んできた徳洲会全体の姿勢を示しています。このような場面で、私が常に意識しているのが稲盛氏の言葉、「動機善なりや、私心なかりしか」という自問です。その判断は誰のためのものか。組織や個人の都合が先に立っていないか。患者さんや地域にとって正しい選択か。この問いを持ち続けることが、理念を現実の判断へと結び付けるために欠かせないと考えています。

徳洲会は「現場を大切にする組織」と言われますが、現場に委ねるとは放任することではありません。判断を現場に近づけるということは、その結果を組織として引き受ける覚悟を持つことです。当院においても地域医療を担う病院として、何を守り、どこを変えるのかを現場と共有しながら運営を進めてきました。結論を一方的に押し付けるのではなく、背景や理由を丁寧に説明し対話を重ねる。その積み重ねによって、職員が医療の質と経営の両立を「自分たちの課題」として捉える場面が増えてきたと感じています。

病院経営において最も重要なのは、組織が力を発揮できる環境を整えることです。制度や設備は重要ですが、最終的に病院を動かすのは人であり、組織文化です。こうした考え方の下で進めてきた運営の成果は、当院においても医業利益率の改善という形で表れました。当院着任以降、段階的な改善を重ね、現在も安定した上昇傾向を維持しています。これは特定の施策による成果ではなく、理念と経営の方向性を共有し、職員一人ひとりが主体的に力を発揮できる環境づくりを積み重ねてきた結果だと受け止めています。

“同舟相救”の精神の下 医療を止めない歩みを

収益は目的ではありません。しかし、理念を実行し続けるための前提条件であることも事実です。経営が成り立たなければ、患者さんの権利も尊厳も守り続けることはできません。数字を直視することは冷たさではなく、地域医療を守るための責任ある姿勢です。理念を掲げることよりも、困難な場面でその理念を選び続けること──その積み重ねこそが、徳洲会が徳洲会であり続ける理由だと考えます。同舟相救の精神の下、医療を止めない歩みを、これからも皆で積み重ねていきたい。

皆で頑張りましょう。

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