
直言
Chokugen

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直言 ~
三角 和雄(みすみかずお)
医療法人徳洲会 専務理事 千葉西総合病院 院長
2025年(令和7年)08月25日 月曜日 徳洲新聞 NO.1506
8月15日、80回目の終戦記念日です。この日に公開された映画「YUKIKAZE」を観ました。太平洋戦争中、修羅場を何度もくぐり抜け、海に投げ出された多くの兵士を救助し、沈没することなく最後は復員船として活躍した駆逐艦「雪風」の物語です。映画好きな私は、この映画の封切を心待ちにしていました。私の母方の叔父は日本海軍の少尉で駆逐艦「高波」の水雷長として、1942年11月のルンガ沖夜戦に参加し魚雷戦を指揮しました。真っ暗闇の中、肉眼だけで約1万m先の敵艦に最初から命中弾を与える神業を見せた乗組員を有していましたが、たった一隻、囮となって米国の強力な重巡艦隊の集中砲火を引き受け、奮戦むなしく沈没。乗組員244人中、艦長の小倉正身中佐以下221人が戦死しました。
この夜戦は日本の圧勝に終わりましたが、叔父は重傷を負った水兵を背負い、流れてきた木材に身体を縛り付け、ガダルカナル島まで泳ぎ生還しました。叔父は横須賀海軍基地の水雷学校の教官となって終戦を迎え、故郷の福井県大野市に帰り、そこで私の叔母と結婚しました。小学校の頃から毎年、夏休みはほとんどをそこで過ごし、叔父叔母に可愛がってもらい、叔父には戦争中の多くの話を聞き、日本海軍の誇る高性能「九三式酸素魚雷」の発射マニュアルまで教わりました。
叔父の体内には貫通銃創や砲弾による傷痕が多数あり、約15年前に亡くなった際、最期の言葉は「敵だ、敵が来るぞ」でした。その叔父はよく「目の前で米軍の発射する機関砲弾が船体を貫通し、部下の身体がばらばらになった。今から思うと敵も同じような目に遭っており、とにかく戦争は決してしてはいけない」と言っていました。
「政治家の仕事は戦争をしないことと、国民を食べさせること」と言われますが、では翻って「病院長の仕事」とは何でしょうか。私は「患者さんを救うことと、職員を食べさせていくこと」だと思います。「職員を食べさせていく」つまり「自分の食い扶持を自分で稼ぐ」ことは、単に赤字を出さないということだけではありません。「食べていくだけで精一杯」では、必要な備品や医療機器を買うことすらできません。自分の家の家計と同じで、収入の10%程度は手元に残す必要があります。そのためには当然、強力なリーダーシップが不可欠です。病院を一つの軍艦とするなら、艦長は院長そのものです。そして大砲や魚雷など武器、通信機器、エンジン、炊事などを担当するのは、各診療科の部長であり、看護部、薬剤部、医事課、栄養科などの職員でしょう。病気との戦いに勝ち、過酷な病院経営競争の中で、あの「雪風」のように生き残るには、皆が一致団結して行動しなければならず、全員が同じ方向を向き、一つの命令や指示通りに動く必要があると確信しています。
トム・ハンクス主演の「グレイハウンド」という米駆逐艦をモデルにした映画があります。そこでも艦長の一つひとつの命令に全員が「Aye, Aye, Sir」と言い、もう一度命令を復唱し従います。一つでも命令に反することを行ったり、命令を実行しないでいたりすると、その軍艦あるいは組織に多大な損害を与えることになります。
徳田虎雄・名誉理事長の一声で、院長を拝命してから20年以上経ち、徳洲会の中では最古参院長の一人になってしまいました。元々、自分に院長の素質などなく、今でも実際にその仕事ができているのか、わかりませんが、とにかくできる限りのことはしようとやってきました。最近、病院を巡る社会情勢は非常に厳しく、全病院の6割、国公立病院の9割が赤字と言われています。幸いにも徳洲会グループは各病院の努力により、何とか黒字を維持し、東上震一理事長の指示の下、救急からの入院率や病床占有率も上昇し、そこそこの数字を上げています。
しかし、少しでも油断をすると計画通りの経営目標が達成できません。当院では、モチベーションの維持のために、単月の医業利益率12~15%、税前利益率10~12%、利益額2.5億円以上、年間利益額30億円以上を目標としています。当たり前のことを普通にやって、厳しくコストを削減していけば、困難な病院経営といえども黒字になると信じています。
皆で頑張りましょう。