徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

医療法人徳洲会 常務理事
八尾徳洲会総合病院(大阪府) 院長
原田 博雅(はらだひろまさ)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

原田 博雅(はらだひろまさ)

医療法人徳洲会 常務理事 八尾徳洲会総合病院(大阪府) 院長

2023年(令和5年)04月24日 月曜日 徳洲新聞 NO.1386

「ラジオ体操と初期臨床研修」
大勢の研修医が入職するために
多くの優秀な教育担当医師が早急に必要

2カ月に一度、朝8時より、「のびのびと背伸びの運動から……」というナレーションで始まるラジオ体操第一のビデオが流れ、そこに集まった方がラジオ体操を行っています。一糸乱れずとまではいかないまでも、すべての参加者は何の迷いもなく、立ち止まることもなく、熱心にラジオ体操を行っています。

このラジオ体操は徳洲会医療経営戦略セミナーのなかで行われているものです。最初に、このラジオ体操に私が参加したのは20年以上も前のことで、大変な驚きと違和感を感じたのを覚えています。「院長会でラジオ体操か?」

ラジオ体操に参加しながら、他病院の先生方を観察しました。私が感じたことは、日本で学校教育を受けたことがある、ほぼすべての方はラジオ体操ができるということでした。大袈裟に言えば、日本の学校教育を受けたかどうかはラジオ体操ができるかどうかでわかるのではないかとまで思いました。日本の教育の力を見る思いがしました。以来、院長会参加の先生方が、ラジオ体操ができることを毎回不思議だと思いながら、私は今も参加しています。

初期研修必修化以前に 米国から指導者を招聘

4月、多くの職員とともに初期研修医が入職しました。192人に達し、今までで、最も多くの研修医が研修を開始しています。徳洲会の研修の現場でずっと働いてきた私にとって、多くの研修医が入ってくれたのは本当に感慨深いものがあります。そして、その研修の質が問われていると思います。

研修必修化という大改革が行われたのは2004年です。それ以前より卒後研修に関係し、当院の研修委員長をしていた私は、研修医を教育するにはどうしたら良いのか、随分悩みました。良い教育とは何か、その方法はどのようなものかと考えていました。

03年、米国ピッツバーグ大学におられた赤津晴子先生(現・国際医療福祉大学大学院教授)がつくられたピッツバーグ・ジャパンプログラムが始まることを偶然知り、同年4月にピッツバーグでの第1回のプログラムに参加しました。米国で研修医の教育がどのように行われているのかを実際に見ることができました。

その方法は病歴と身体所見をしっかり取り、それをプレゼンするというものでした。研修医は担当の患者さんの病歴を取り診察をします。カンファレンスで、その受け持ちの症例を定型の形式で発表します。その発表で不足しているところを細かく指摘し、研修医に考えさせ、知識を整理させます。そして膨大な鑑別診断を上げます。その後、ベッドサイドで患者さんを一緒に診察し、ディスカッションします。これを毎日行うのが内科系の研修でした。

その後、同年11月にピッツバーグ大学のロールマン先生を当院にご招待し、5日間の研修医に対する教育を行っていただきました。その後、6年間にわたり先生方に当院に来ていただきました。赤津先生がスタンフォード大学に移られた後は、同大学からも先生に来ていただきました。それ以外にも、さまざまな関係から現在までに20人余りの外国人や日本人の先生で、外国でご活躍されている方に当院で研修医教育を行っていただきました。現在は英国出身のブランチ先生に当院で常勤の教育担当医師として、初期研修医の教育を担っていただいています。

地道な過程を手間暇かけ 繰り返し行う研修医教育

研修医の教育を行うということは、すべての教育に通じますが、地道な過程を手間暇かけて繰り返し行うことです。そこで思い出されるのがラジオ体操です。日本では、ほぼすべての人が教育によりラジオ体操を行うことができるようになっています。一方、すべての研修医は最低限、医師に求められる能力に到達することとされています。これは一般の方が、学校でラジオ体操ができることを求められるのと同様のことと考えられます。つまり初期研修は臨床の場における「ラジオ体操」なのです。初期研修という「ラジオ体操」が、誰でもができるようになるためには、「ラジオ体操」を教える人、指導者が必要です。日本には今までこの指導者が圧倒的に不足していました。今後もさらに多くの研修医に継続的に徳洲会で研修を受けていただくためには、多くの優秀な「ラジオ体操」を教えることができる指導者(教育担当医師)が早急に必要なのです。

皆で頑張りましょう。

PAGE TOP

PAGE TOP