2020年(令和2年)12月14日 月曜日 徳洲新聞 NO.1266 一面
徳洲会グループ
修復腎移植を体制強化しスタート
厚労省・先進医療技術審査部会が承認
厚生労働省は12月10日、第109回先進医療技術審査部会を開き、東京西徳洲会病院が申請した先進医療である修復腎移植の臨床研究実施体制の変更申請を承認した。修復腎移植は2019年1月に官報に告示された先進医療のひとつ。今回の体制変更は、移植施設と腎摘施設の追加による実施体制の強化が狙い。腎移植待機期間は約15年と長く、その間、多くの透析患者さんが亡くなっている。先進医療として修復腎移植の実施が本格的に始まれば、新たな治療の選択肢が増え、透析患者さんにとって朗報と言えよう。
移植施設と腎摘施設拡大
修復腎移植は、直径7㎝以下の小径腎腫瘍が発生し治療のため摘出した腎臓をドナー(臓器提供者)腎とし、病変部分を切除後、修復したうえでレシピエント(臓器受給者)である透析患者さんに移植する治療技術(図)。
ドナーとレシピエントの選択基準などを厳格に定め、説明と同意を慎重に重ね倫理面に十分配慮して実施する。移植施設と腎摘施設それぞれで倫理審査を行い、第三者からなる修復腎移植検討委員会で腎摘の妥当性やレシピエントの候補順位などを審議し実施する。
将来的に保険適用を目指し、治療効果や安全性をさらに評価するため、新たな臨床研究として取り組んでいく。目標症例数は42例、研究期間は29年6月まで。研究総括責任者は宇和島徳洲会病院(愛媛県)の小川由英・泌尿器科部長が務める。
臨床研究の実施体制は20年6月の先進医療技術審査部会で、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)を移植施設とし、東京西徳洲会病院と宇和島病院を腎摘施設とすることで承認していた。今回の変更で移植施設は湘南鎌倉病院と宇和島病院の2施設、腎摘施設は東京西病院、南部徳洲会病院(沖縄県)、中部徳洲会病院(同)の3施設に拡大。今後も徳洲会グループ内外の施設に協力を呼びかけていく。
徳洲会は、宇和島病院(実施責任者:万波誠副院長)を移植施設とし、先行する臨床研究を9年12月から実施。17年3月までに第三者間13例、親族間5例を行い、目標症例数を達成していた。
広がる治療の選択肢
一般社団法人徳洲会の安富祖久明理事長は「徳洲会は10年以上前から修復腎移植の臨床研究に取り組み、先進医療の適用を受けました。その後、責任医師の退職で中断していましたが、体制強化して再開します。準備が整い次第、レシピエント登録を行っていきます」とコメントを発表。
腎移植が年間30件ほどを数える湘南鎌倉病院の篠崎伸明院長(医療法人沖縄徳洲会副理事長)は、「修復腎移植は待機患者さんの新たな選択肢となり、移植を受けるまでの期間を短縮できる医療です。適切なルールに基づき取り組んでいきたい」と意気込みを示した。
また同院腎臓病総合医療センター長の小林修三・院長代行と日髙寿美・主任部長(腎移植内科担当)は「摘出し廃棄されてしまう腎臓の中に、まだ使える腎臓があるならば、修復して移植医療に用いることは医学的な進歩と言えます。ただし本当に摘出されるべき腎臓なのか、本当にまだ使える腎臓なのか、医学的に適切に判断し、きちんとした体制やルールの下、献腎移植の普及・啓発も並行して行いながら推進していきたい」と抱負を語った。
同院腎移植外科の三宅克典部長は「研究のポイントは安全性の担保と、ドナー腎の公平な分配システムが機能するかどうかです。徳洲会発の医療ですが、一般的な医療として社会に受け入れられることが目標です。患者さんにとってひと筋の光になれるのであれば、症例数の多寡に関係なく取り組む意義は大きい」と述べた。
※修復腎移植に関する問い合わせは「徳洲会グループ」ホームページの「お問い合わせ」メールフォームから。
先進医療適用までの経緯
2011年10月に厚生労働省に先進医療申請。書類不備の指摘を受け12年6月に再度申請。同年8月の第67回先進医療専門家会議での指摘をふまえ研究実施計画書を新たに作成。16年8月の第46回先進医療技術審査部会で追加の指摘を受け継続審議。また同年4月に「ロボット支援腹腔(ふくくう)鏡下腎部分切除術」が保険適用となった状況をふまえ、当該部分切除の対象となる腎がんを研究対象から除外するなど見直しを行い、17年3月の第55回同部会で審議も追加の指摘を受け継続審議。17年10月の第63回同部会で、レシピエントの腎生着率の評価期間を術後5年に延長、中間解析を設定、目標症例数を42例に変更し、審議を経て条件付き承認となった。18年7月の第66回先進医療会議で、移植時の評価に第三者(関連学会から推薦)の検討委員を加え、当初の5例までは1例ごとに先進医療会議に報告することを条件に先進医療として承認、19年1月に官報告示。