徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

三角 和雄(みすみかずお)千葉西総合病院 院長

直言 生命 いのち だけは平等だ~

三角 和雄(みすみかずお)

千葉西総合病院 院長

2020年(令和2年)11月2日 月曜日 徳洲新聞 NO.1260

特殊感染病棟の独立設置には3つの意義
患者さんと医療者双方に大きな安心担保
困難症例も積極的に受け入れ社会貢献を果たす

4月上旬のことでした。新型コロナウイルス感染症が日本でも爆発的に増加傾向を示し、日本国中の医療体制が危機に陥ろうとしている、その矢先でした。当院かかりつけの患者様が肺炎とは無関係の症状で入院され、その後、新型コロナウイルス感染症と判明しました。その当時はPCR検査が院内で行えず、まだ全国的にも十分普及していない状況でした。当然のことながら、当院の感染対策も現在ほど充実したものではない状況で、医師2人、看護師2人を含む11人の院内感染が起きてしまいました。その影響で、外来、新入院、診療の抑制を余儀なくされ、約3週間余り、病院の診療実績は下降の一途をたどりました。もっとも、当院における診療の柱である循環器科、心臓血管外科だけは、診療実績上はほとんど変化せず、ほぼ順調に推移しました。しかし病院全体としては、4月はかろうじて黒字を出したものの、5月は過去20年間で初めて赤字となり約9900万円の損失を出してしまいました。

本館での感染リスクほぼゼロ 他院からの転院が顕著に増加

その時に思い付いたのが、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)のプレハブ病棟を参考にした重症にも対応できる特殊感染病棟でした。この病棟(CIW=Contagious Infection Ward)を独立させ、医療スタッフを極力専属としたほか、CT(コンピュータ断層撮影装置)、更衣室、食堂、事務室をすべて独立病棟の中に入れ、本館との交通をほぼ100%遮断しました。これによって、物質的な交流を99%断ち、一方で本館に出入りするすべての人の新型コロナウイルス感染のチェックを施行しました。

さらに、本館と渡り廊下でつながっているアネックス館およびその連絡橋、その下にあるカフェテリアすべてに厳重な感染対策システムを置き、病院職員のマスク着用、1日数回の手洗いを励行させることとしました。そのおかげで職員全体に感染対策の大切さが浸透し、しかも膨大な数の患者様やそのご家族にもご理解いただき、5月以降一度も院内感染のリスクにさらされたことはありませんでした。

CIWを独立病棟として発足させることには3つの意義があります。まず第一に、病院の社会的使命のひとつであるコロナ患者様の受け入れを積極的に進め、病院としての機能を保ち、社会貢献という観点から病院、そして医療法人の評価を高めることです。自分たちの得意な分野の治療しか行わず、新型コロナウイルス陽性者を含め発熱患者様を一切診ないなどという病院も散見されますが、これでは病院の使命が果たせません。第二は、院内感染やクラスター(集団感染)を徹底的に封じ込めることができる点です。いくら感染対策を施しても、更衣室や食堂が共用なら、院内感染のリスクはゼロにすることはできないと考えました。実際には、この方針が功を奏し、現実に院内感染およびその徴候や前触れは全くなく、きわめて安全な医療環境が整いました。その良い影響もあってか、本来の病院業務の実績はほとんど低下することなく現状を推移しています。また、患者様および職員のコロナ感染リスクが、本館ではほぼゼロに近いということを内外に浸透させることができました。これは非常に大きなメリットで「この病院なら安心」ということで、他の病院から転院して治療を受ける患者様が明らかに増加しました。第三は、医療崩壊を防ぐことができる点です。従来の診療と新型コロナウイルス感染者の受け入れを並行して行うことが可能となったため、病床不足にはならず、理想的な医療体制が維持できています。

病院や法人の評価を高める 経営的にも大幅なプラスに

われわれ徳洲会グループは〝生命だけは平等だ〟の理念の下、他病院での診療が躊躇(ちゅうちょ)されるような新型コロナウイルス感染症の患者様をグループ全体で積極的に受け入れています。これは取りも直さず病院や法人の評価を高めることになります。それが相乗効果として、他病院や他医療法人に比して、患者様の戻りが非常に早く、病院経営的には大幅にプラスになったという背景があります。われわれ徳洲会は今後も新型コロナウイルスによる肺炎に限らず、他病院では受け入れづらい疾患も積極的に受け入れ、社会貢献を果たしていきます。この方針を貫き、患者様のみならず、医療従事者にも大きな安心を担保していきたいと思います。皆で頑張りましょう。


CIWS(出典:自衛艦隊ホームページ)CIWS(出典:自衛艦隊ホームページ)

【CIWの由来】当院のイメージは卓越した防御力を誇るイージス艦です。「イージス」とはギリシャ神話に登場する盾のことで、当院は患者様を守る盾になろうという発想です。同艦自身を守る最後の砦(とりで)がCIWS (Close In Weapon System=近接防御火器システム)。これは接近してくる敵のミサイルが防御網を突破した後、最後にそれを迎撃する最終兵器で1分間に約5,000発の弾丸をレーダー制御で発射します。コロナ対策のCIW病棟は当院を守る“切り札”という意味合いもあります。

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