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直言

Chokugen

黒木 則光(くろぎのりみつ)湘南厚木病院(神奈川県) 院長

直言 生命 いのち だけは平等だ~

黒木 則光(くろぎのりみつ)

湘南厚木病院(神奈川県) 院長

2020年(令和2年)10月19日 月曜日 徳洲新聞 NO.1258

感染対策に必要なことは非常にシンプル
「手指衛生5つのタイミング」の唱和を
コロナに立ち向かい信頼を回復するよう職員一丸

100年前に流行したスペイン風邪。1918年、大海原を最も速く渡る手段が蒸気船だった時代に、数カ月で世界中を駆け巡り、1年もしないうちに、それ以前にあったパンデミック(世界的大流行)や戦争での犠牲者の数をはるかに超える人々の命を奪ったインフルエンザです。第一次世界大戦での戦死者の3倍に相当するとも言われ、日本で38万人、米国で50万人が亡くなったとみられています。世界中で多くの人々が罹患(りかん)し、世界で亡くなった人の数は5000万人とも推測されています。スペインで発生したと思われがちですが、元々、第一次大戦に参加する米国で広がり欧州に拡大。しかし戦争中ゆえ、参戦国はその事実を伏せましたが、中立国のスペインは感染拡大を公表、それでスペイン風邪と言われました。スペインにとってはいい迷惑です。

スペイン風邪と新型コロナ 100年前も今も対応同じ

NHKの「映像の世紀プレミアム」で紹介された当時の欧米での映像に「マスクをしましょう。マスクをすることは社会的義務、しない人は軽蔑の目で見られます」、「人との距離を置きましょう。挨拶で抱き合ったり握手したりするのは、やめましょう。人と会ったら敬礼すれば挨拶として十分です」、「体調が悪ければ自宅で休みましょう。手を洗い清潔にしましょう」というシーンがありました。まるで今のコロナ対応と一緒です。このインフルエンザは収束するまでに2年かかりました。集団免疫ができて、ようやくのことでした。

8月、当院にコロナのクラスター(集団感染)が発生しました。入院患者さん17人、職員13人、退院患者さん4人、そのご家族4人、合計38人でした。患者さん・ご家族、関係者の方々に多大なるご迷惑、ご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。

私たちは、このクラスターで多くの経験をしました。発熱が続く患者さんが4回目のPCR検査でようやく陽性と診断されたケースもありました。濃厚接触者に該当した職員のなかには、自宅待機12日後、現場復帰する際に微熱が出てPCR検査で陽性と診断された人もいました。個室に入院していた患者さんで、周囲の患者さんとかかわりがなかった人からも陽性者が出ました。新型コロナウイルスは、症状が出るまでに長い潜伏期間を置く場合があります。無症状の陽性者が抵抗力のない人に感染、発症させるリスクもあります。

クラスターを経験して、あらためて、私たちが痛感したのは非常にシンプルなことでした。手指衛生の徹底、サージカルマスク・ゴーグルの着用、食事中の会話の禁止、発熱者に関する情報共有などです。院内感染対策に必要なことは非常にシンプルです。しかし、ついつい疎(おろそ)かになりそうなことばかりです。今は朝のミーティングの際に各部署で「手指衛生5つのタイミング」を唱和しています。ほとんどの職員が暗記し唱和できるようになりました。

100年前に経験したパンデミックは忘れ去られ、初めて人類が経験したかのようにコロナ報道が繰り返されています。副作用の少ないワクチンは来年には開発されるのでしょうか?私たちは同じ過ちを繰り返しているような気もします。

クラスター発生により、一度失った信用を回復するには職員一同で院内感染対策に取り組むしかありません。急性期病院、救急を断らない徳洲会病院の一員として、コロナ感染症に立ち向かい信頼を回復するよう職員が一丸となり頑張っています。

今、私たちができることは100年前と何ら変わらない非常にシンプルなことの繰り返しです。「マスクをしましょう。手指衛生を徹底し、ソーシャルディスタンスを保ちましょう」。

正当に怖がるのは難しい 寺田博士の70年前の言葉

最後に私がクラスターを経験して出会えた名著を紹介します。『史上最悪のインフルエンザ 忘れられたパンデミック』(アルフレッド・W・クロスビー著、西村秀一(ひでかず)訳)。そのなかで寺田寅彦博士が70年前に言った言葉が紹介されています。「ものを怖がらなすぎたり、怖がりすぎたりするのはやさしいが、正当に怖がることはむつかしい」。

読書の秋です。名著を読みましょう。朝礼では徳洲会の理念を唱えるように手指衛生の5つのタイミングを唱えましょう。①患者さんに触れる前、②清潔・無菌操作の前、③体液に曝露された可能性のある場合、④患者さんに触れた後、⑤患者さん周辺の物品に触れた後。

皆で頑張りましょう!

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