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直言

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阪本 敏久(さかもととしひさ)武蔵野徳洲会病院院長(東京都)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

阪本 敏久(さかもととしひさ)

武蔵野徳洲会病院院長(東京都)

2020年(令和2年)9月14日 月曜日 徳洲新聞 NO.1253

職種を越えて皆が学び分かち合う大切さ
職員に教えるだけでなく職員からも学ぶ
「正しいことを言う時は少し控えめがいい」

このたび鈴木洋通(ひろみち)院長の辞任にともない、院長職を拝命いたしました。5年前の開院当初より副院長・救急部長として砕身してまいりました。周辺地域には、すでに確固とした同規模の病院があり、新規に当院が参入することで、地域への新たな貢献ができるかは未知数でした。

前院長が掲げたのは「かかりつけ病院」です。「かかりつけ医」に対抗する新語で、商標登録までされました。早期から医師会に入会し、地域になじむ取り組みをされました。東京都で最も長い29・2㎞の直線である遊歩道、多摩湖自転車道に接することから、都民ウォーキングデーに積極的に参加し、自らウォーキングすると同時に出店して健康相談を行うなどアイデアを実現されました。また、病院名を略して冠した「むさとくフェスティバル」を開催し、市民に病院の一部を開放しながら「かかりつけ」になじんでいただけるようなお祭りも、職員が一丸となって開催しました。

新型コロナ感染症勉強会開催 正しく恐れることを共有する

新米病院としての5年間は順調だったとは言えません。人材確保が最大の障壁でした。あちらを立てればこちらが立たずといった具合で、一歩前進、半歩後退の連続でした。病院のカラーを確立するとは、かくも困難なことかと全職員が思ったことでしょう。

前院長は昨年9月から体調を崩され、小生が代行を務めましたが、本年3月に復帰されました。新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)—19)が市中感染化し始めたなかで、西東京市発熱外来、西東京市医師会PCRセンターを設置。医師会と協力することで株を上げ、これら試みに賛同を得る一助となりました。COVID—19の第2波初期から軽症患者さんの収容も開始しました。私が職員と救急隊にCOVID—19の勉強会を開催することで、正しく本症を恐れることを共有できました。

COVID—19の診断、治療法、疫学が世界的に統一されつつあり、初期の誤情報が超一流の医学雑誌でも修正されるなどして、全体像が把握されつつあることが勉強会で役立ちました。臨戦態勢がほぼ確立した時点で、前院長は辞任されました。

私は大阪府出身で、大学卒業まで大阪に在住し、以降、岡山県、沖縄県、米国セントルイスに移住しました。大阪市内で病院長職を6年間経験し、当院での院長代行を含め、今回で3回目の院長職となります。

大阪での院長経験は長いのですが、30年前と今とでは医療体制がかなり異なります。現在では当たり前の電子カルテ、安全管理、感染管理、診療録管理などはなく、各職種の義務も全く異なります。それだけ病院が社会的に要求されることが多いことを意味します。今後も医療従事者(救急搬送を含む)には厳しい目が向けられることを我々は自覚すべきです。

当面の課題はCOVID—19対策です。米ハーバード大学は2022年まで収束(終息ではなく)しないであろうと予測し、京都大学は海外からの渡航者数によって再度、パンデミック(大流行)の可能性は十分あると推測しています。このウイルスは2週ごとに変異することから、良いワクチンが登場するには、まだ時間がかかりそうです。インフルエンザの季節を前にして、双方の鑑別など感染対策に気を緩めることはできません。

心に余裕なければ奉仕できず 人材確保が最優先課題と認識

小職にあたり、私が自身に命じた言葉を挙げます。「上に立つ人は、仕える者のようになりなさい」。仕えるとは服従ではなく、謙遜の意味です。地域医療の充実には、設備も大切ですが、何よりも人材の充実がキーワードとなります。職員が充実した毎日を過ごせることが、患者さんへの奉仕につながります。心に余裕のない人に奉仕はできません。退職の回避を含む人材の確保が最優先課題と考えます。

そのためには職種を越えて皆が学ぶこと、それを分かち合うことが必要でしょう。それが教育ということですが、職員に教えるだけでなく、職員からも学ぶ姿勢が大切です。「正しいことを言う時には、少し控えめにするほうがいい」という言葉は、夫婦のあり方にも通じます。相手が間違っている(と思っている)場合でも、上からの視点で言うと反発が生じますが、控えめにすると平和が訪れます。これらの言葉を信条に院長職を務めていきたいと思います。皆で頑張りましょう。

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