徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

東上 震一(ひがしうえしんいち)医療法人徳洲会副理事長 岸和田徳洲会病院総長(大阪府)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

東上 震一(ひがしうえしんいち)

医療法人徳洲会副理事長 岸和田徳洲会病院総長(大阪府)

2020年(令和2年)8月31日 月曜日 徳洲新聞 NO.1251

焦がれるような強い思い・絶対諦めない
意志の力・弛まぬ努力が事を成すに必要
「本気で正しさを行う気概」を問われる時

人口100万人当たりの新型コロナウイルス感染症の死亡者数は、季節性インフルエンザのそれよりも低くなっており、感染の実効再生産数:Rt(1人の感染者が平均で何人感染させるかを表す数理モデル。たとえば、Rt=2なら1人が2人に感染させて拡大)が1を切り0・9になっている現在、このウイルス感染による日本でのアウトブレイク(感染爆発)は収束に向かいつつあるようにも見えますが、先行きは不透明です。ただ医療の現場では今なお混乱が続いています。たとえば無症状のコロナ陽性患者さんは、東京や大阪などの大都市では行政が借り上げたホテルに10日間隔離された後、陰性化を確認することなく社会生活に復帰します。一方、感染者と濃厚接触と判定された場合は、たとえ症状がなく検査陰性でも2週間の自宅待機が指示されます。コロナ対応上の齟齬(そご)が医療の現場にさらなる混乱と人的負荷をもたらしています。

通常医療の質・量を落とさず コロナ感染症治療にも粛々と

また病院の中では、安全に感染患者さんを隔離するというゾーニング(区分け)が、結果的にはコロナ以外の治療を、人・空間(病床)・時間の面で圧迫し制限することにつながってしまいます。大都市圏にある徳洲会グループの急性期病院それぞれがコロナ治療の最前線に立ち、対応する職員は直接感染リスクと向き合いながら困難な状況下での病院運営に取り組んでいます。限られた医療資源で、コロナ感染症以外の医療の質・量を落とすことなく、同時にコロナ感染症の治療にも粛々とあたっているのです。

地域医療の中核を担うべき徳洲会グループ外の急性期病院の中には、経営面を危惧して「コロナ対応は無理です」と、その門戸を閉ざす病院があることも事実です。しかし私たちは、常に弱い人、病気で苦しむ人の立場に立ってものを考え、どうすれば一番人のためになるかを行動の指針としてきました。新型コロナウイルスに対する取り組みも例外ではありません。強い意志と精一杯の工夫と努力、習熟した感染予防技術があれば、このコロナ危機を乗り越え、通常医療とコロナ医療の困難な両立が可能になると信じています。

新型コロナウイルスのパンデミック(大流行)がもたらした世界規模での医療危機、経済不況はコロナ大恐慌と呼ぶべきものですが、「大恐慌」という表現は1929年から始まった30年代の世界的不況に対して付けられたものです。ケインズという経済学者をご存じでしょうか。マクロ経済学理論を唱えた著名な学者で、世界大恐慌に対して、その経済理論に基づいた大規模な財政出動が行われたことは、あまりにも有名です。彼の経済理論は現代政治にも用いられており、日本政府の財政政策も恐らくマクロ経済学理論に基づいていると思われます。「Go Toトラベルキャンペーン」、全国民一律10万円給付などの財政出動もマクロ経済学的発想によるものかもしれません。

こう書くとケインズに対する親しみが急に起こってきますが、経済学はあくまでも数理論的な分析を基本とする学問で、冷たい数式のイメージが付きまといます。しかしケインズは著書『雇用・利子および貨幣の一般理論』の中で、非常に興味深い表現を用いています。経済を発展させていくものとして、「アニマル・スピリッツ」と彼が名付けた起業家のやる気とか、理屈を超える野心的な意欲、努力こそが大切であると言うのです。経済は、結局は生きた人間の活動ですから「いろいろあっても最後は人間の意志力、ガッツだ」ということになります。理論で成り立つ経済学に、理屈を超越する人間の本質に根差した精神論を持ち込んでいるのです。

「アニマル・スピリッツ」具現化した徳田・元理事長

物事を成そうとする時に必要なことは、成し遂げたい対象に対する焦がれるような強い思い、絶対諦めない意志の力、弛(たゆ)まぬ努力である。「無理な努力、無駄な努力、無茶苦茶な努力」。そして実現できない夢はない―― 。

皆さん気付かれたでしょうか。そうです。ケインズの「アニマル・スピリッツ」を具現化したのは徳洲会の徳田虎雄・元理事長なのです。新型コロナ感染症の蔓延初期段階で、コロナ感染症に対する極めて常識的な慎重論に終始した私を見て、おそらく元理事長は苦笑いしダメ出ししたことでしょう。「おまえ、本気で正しさを行う気概があるのか」と。皆で頑張りましょう。

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