徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

田中 江里(たなかえり)葉山ハートセンター院長(神奈川県)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

田中 江里(たなかえり)

葉山ハートセンター院長(神奈川県)

2020年(令和2年)4月20日 月曜日 徳洲新聞 NO.1232

新型コロナ感染者受け入れミッション
成功の鍵は決断・実行の速さと組織力
院内感染なく大型クルーズ船クルー全員退院

新型コロナウイルスが猛威を振るっています。私は1月4日の仕事初めの朝礼で、中国・武漢市で広がるウイルス感染が大きな問題になるかもしれないと話しましたが、よもや自分の身にも降りかかってくるとは思いもよりませんでした。2月3日に横浜港に入港した大型クルーズ船内で、新型コロナウイルス感染症の集団感染が起き、連日のように感染者が病院搬送される様子が報道されました。当院に陰圧個室、感染症病棟はなく、患者さん受け入れの話はまったくありませんでした。

突貫工事で受け入れ体制整備 不安で病院に連日泊まり込む

ところが乗客の下船がそろそろという2月17日、当院で患者さんを受け入れるという話が舞い込んできたのです。しかも今はもう病棟としては使用していない、ベッドもない、物置やリネン庫などに用いているスペースを使うというのです。「無理でしょう」と思いました。ところが一般社団法人徳洲会(社徳)東京本部の職員が視察に来て、あれよあれよという間に「できる!」となり、19日には社徳の鈴木隆夫理事長と面談、受け入れを決断したのでした。

翌20日、その病棟からすべての物を搬出、21日には感染防止のため、不要な通路を塞ぐ壁を突貫工事でつくり、ベッドの搬入も開始するなど、感染者用の臨時病棟をこしらえました。同時に当院看護部には、徳洲会関東ブロックの病院看護師が応援のため集められました。22日には同病棟にかかわるスタッフが集合し、防護服の着脱訓練や患者さん受け入れの予行練習を行い、24日に受け入れを始めました。5人ずつ2日にわたり10人のクルー(乗組員)の患者さんを受け入れました。全員が軽症で、ひとりを除きすべて外国人、国籍もまちまちでした。入院後、発熱とともに肺炎を来した方も出ました。

これまでに経験したことのない疾患であり、当時の報告では最初は無症状でも急激に呼吸器症状が悪くなる症例もあったと言われていたため、不安から連日、病院に泊まり込みました。加えて患者さんの食事の問題もありました。イスラム教の方にはハラル食(イスラム教の戒律に適合した食品)を提供しましたが、国籍により好む食事が異なり、それぞれに対応するのは困難でした。ただ当院に入院したクルーの方々はとても協力的で皆、無事に退院できました。

近隣の静かな見守りに感謝 勇気と知識で立ち向かおう

このミッションを開始する前に立てた目標があります。スタッフのなかから感染者をひとりも出さない。そのため徹底した防護服の着脱、手指衛生、環境整備を行うというものでした。最終日にはスタッフ全員にPCR検査を行い陰性であることを確認、任務を終了し、解散しました。検査結果を待つ間は本当に不安でした。ミッション成功のポイントをここに挙げます。

まずは決断、実行の速さです。今回は発案から実行まで1週間。神奈川県、厚生労働省から入る情報は日々刻々と変わり、もたもたしていたら、準備はしたが、患者さんは来ないということになりかねない状況でした。

そしてなんといっても徳洲会グループの組織力です。突貫工事で壁をつくり1日で臨時病棟をこしらえた社徳建築部や、N95マスク、防護服を優先的に当院に回してくれた社徳医療機器部や医療材料部の職員、応援に来た勇気ある看護師、外部との折衝をすべて取り仕切った社徳医療安全・質管理部の野口幸洋・課長補佐。これら職員の連携が実行の速さを生み出しました。

また徳洲会は統一の電子カルテを導入しているため、応援の看護師がカルテ作業に時間を取られることなく看護業務に集中できました。看護教育のベースがしっかりしている点も互いの信頼感につながったと思います。

不安に思った近隣住民の方もいらっしゃったでしょうが、静かに見守ってくださいました。葉山町の役場もさまざまな問い合わせに対応してくださったことを後々、知りました。当院のスタッフも通常の業務をしながら支援してくれました。

新型コロナウイルス感染症はまだまだ広がりを見せることでしょう。今回の経験があっても、怖い気持ちに変わりはありません。しかし、このような経験はいつでもできるわけではありません。勇気を出して一医療人として正しい知識をもちながら、この未曾有の感染症に立ち向かおうではありませんか。

皆で頑張りましょう。

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