直言
Chokugen
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直言 ~
池田 佳広(いけだよしひろ)
鹿児島徳洲会病院院長
2020年(令和2年)3月16日 月曜日 徳洲新聞 NO.1227
2018年1月1日に鹿児島徳洲会病院の院長を拝命して、丸2年の月日が経ちました。当時、当院は築30年と古く、患者数は減少、経営も赤字で、非常に厳しい状態でした。そうしたなか、一般社団法人徳洲会の鈴木隆夫理事長から、経営を立て直し、新築移転を無事に成功させてほしいと、院長に任命された次第です。古堅剛(ふるげんつよし)事務長、倉掛(くらかけ)真理子・副院長兼看護部長も同時に就任となりました。
私が目指しているのは「患者さんと、そのご家族に寄り添う医療」です。良い医療の実践はもちろん、患者さんのために良いサービスを提供し、さらに患者さんの背景にあるご家族やご家庭までも考えた医療や看護を行う――そうしたことを実現したいと、常日頃考えています。
経営が悪いことと、患者さんが少ないことは、ほぼ同じです。患者さんが少ないのは、地域の皆さんに信頼されていないからではないでしょうか。信頼していただくために、自院周辺の介護施設や病院、診療所への訪問などをたくさん行い、当院の良いところや、できることを伝えてきました。職員が一丸となって患者さんのために、そして新築移転に向かって、一生懸命に働いてくれました。その結果、たくさんの紹介患者さんや救急患者さんが来られるようになり、入院患者数は約20%増加。経営的にも顕著な改善を見ました。18年春には、徳洲会グループの幹部会でプレゼンテーションを行い、新築移転が決定。秋には設計会社も決まり、19年冬には設計図も完成、建設会社も決定しました。そして20年3月8日、ついに地鎮祭を行うところまできました。長いようで短かった2年間。あと2年ほどで新病院が竣工します。新病院の場所は鹿児島市の谷山という地域で、現病院から南に約8㎞の距離にあります。恐らく徳洲会グループの病院移転でも数少ない長距離の移転となります。
谷山地域は、旧谷山市が市町村合併で鹿児島市になった地域で、人口16万人を抱える新興住宅街です。鹿児島市は全国でも有数の病院・病床過剰地帯で、急性期病床(一般病床)は人口当たりで全国平均の約1・6倍もあります。とくに現在の鹿児島病院が立地する鹿児島市中央部( 荒田(あらた)、与次郎(よじろう)地区など)には、鹿児島県の0・7%の面積に県の4分の1の病床が集中していると言われています。
一方、谷山地域では、大きな急性期病院は鹿児島生協病院くらいしかありません。同地域の救急搬送件数は年間約5000件あり、その半数を同院、残り半分を鹿児島市の中心部にある病院が受け入れています。
鹿児島市でも高齢化が進み、病院に来られる患者さん、とくに入院患者さんは、ほとんどが高齢の方です。そのような「年配の方たちにも過ごしやすい病院」を第一に考えています。高齢の方たちが落ち着くのは、和風でゆったりした空間ではないかと思い、新病院の設計コンセプトは“和のテイスト、鹿児島らしさ”がある病院としました。
新病院として最も力を入れていこうと考えているのが、「救急・災害医療」、「リハビリテーション」、そして「離島・へき地医療」の3つです。
鹿児島市、とくに谷山地域は人口も増えており、今後も救急搬送件数は増えることが予想されます。なるべく多くの救急患者さんを受け入れたい。
また、高齢者になると高度な医療よりも、自宅に帰るためのリハビリテーションが重要になります。さらに、鹿児島県全体を考え、より医療が不足している離島・へき地に貢献したい。こうした思いから、この3つを新病院の柱に決めました。
新病院の移転先である谷山地域は、診療所の数が比較的多く、診療所の先生たちも頑張っておられますが、前述したとおり救急車を受け入れるような大きな病院は不足しています。地元の方々が、できるだけ地元で医療を受けられる環境を整えたい。地域で完結する医療提供体制を築くために、当院で状態が安定した患者さんは診療所や慢性期医療を主体とする病院、介護施設などで対応していただくという機能のすみ分けと連携を地域で行っていく必要があります。
現在、こうした取り組みに力を入れていますが、今後はより一層、努力し、さらに地域の皆さんに信頼される病院を目指します。皆で頑張りましょう。