徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

寺田 康(てらだやすし)庄内余目病院院長(山形県)

直言 生命いのちだけは平等だ~

寺田 康(てらだやすし)

庄内余目病院院長(山形県)

2019年(令和元年)12月9日 月曜日 徳洲新聞 NO.1214

僻地・離島医療は徳洲会の「根」に相当
職員の人的な交流こそ大切な肥料となる
医療弱者の多くは移動手段をもたない高齢者

昨年12月の雪の降る夜23時過ぎ、83歳女性が腰痛で当院に救急搬送されてきました。「4、5日前からの腰痛」との救急隊からの一報を聞き、なぜ今頃、この時間になって救急車で来るのだろうと思ってしまいました。「腰、いてえ~」。救急外来で、着ぶくれして達磨(だるま)のようになった老婆が、狭い診察台からはみ出して横になっていました。

「はあ~、腰いてえの~」

聞くと患者さんは、雪に埋もれた月山(がっさん)の麓の集落にひとり暮らしで、4、5日前から腰痛で歩けなくなり、家の中を這(は)って移動していたものの、その日になって這うこともできなくなり、救急車を呼んだのだそうです。

「ひゃ~! 何これ、婆ちゃ?」

カルテを記載し指示を出している私の背後で、患者さんの着物を脱がし診察の準備をしていた看護師が、驚きの声を上げました。着物の懐からテレビのリモコンが出てきました。その後、出てくるわ、出てくるわ、内服薬、老眼鏡、封を切っていない菓子パン、財布、湿布、メモ帳……。まさに「ドラえもん」のポケット状態でした。やっと患部に到達すると、腰から遥(はる)かに離れた側腹部に、皺(しわ)くちゃになった湿布が貼ってありました。

京都で徳洲会心外部会に参加 上座も下座もなく意見交わす

この患者さんは、整形外科的には軽症でしたが、総合診療科の見地から診断がつき入院、約1カ月間のリハビリテーションを経て杖歩行ができるまで回復しました。退院支援として最大限の福祉サービスを手配したうえで、患者さんの希望もあり、ひとりで雪に埋もれた自宅に帰って行きました。これが冬の「僻地(へきち)医療」の現実の一端です。

さて、10月30日から4日間、京都市で第72回日本胸部外科学会定期学術集会が開催されました。その2日目の夜、同市内で第5回徳洲会心臓血管外科部会が開かれ、参加してきました。

現在に至る経歴や経験、手術方法や手技が異なる心臓外科医たちが、誰にも束縛されず、ただ徳洲会の仲間という連帯感でつながっていました。上座(かみざ)も下座もなく、野武士たちが車座(くるまざ)になって意見を交わし、熱く語り合う、そんな痛快な会でした。

驚いたのは京都の町が変貌していたことです。情緒のあった先斗町(ぽんとちょう)は、スマートフォンを持った外国人観光客で溢(あふ)れ返り歩けませんでした。大柄の外国人女性たちが、着物を着て記念写真を撮るために横丁を塞いでいました。その京都からは新幹線「のぞみ」が5分間隔で関東、関西方面に客を運んでいました。

帰りの新幹線の車中で、庄内のことを思い浮かべました。5分間隔の「のぞみ」に対して、2時間に1~2本コトコトと走る2両編成・気動車の羽越本線鈍行列車。昔、京から陸奥(みちのく)へ都落ちしていった人たちの気持ちが痛いほどわかりました。

これから庄内は暗く、冷たい冬を迎えます。

さらに車中での思いです。

「寄らば大樹の陰」。今や徳洲会は民間で国内最大の医療グループになりました。樹は逃げることができません。台風の暴風雨や干ばつなどに、じっと耐え年輪を刻んで大樹になります。そうなるには大地にしっかりと根を張らなければなりません。根は地中から水分や養分を吸収します。また植物の体を支える機能ももちます。

僻地では最新の医療ではなく地域最善の医療を求めている

徳洲会にとって僻地・離島の医療は、「根」に相当するのではないでしょうか。「医療弱者を助ける」、「いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療を受けられる社会を目指す」。こうした理念をつねに医療現場から吸収し、枝葉まで送り届けることは、組織を支える「根」そのものに違いありません。

そして、その根は決して太陽の光を浴びることはありません。

僻地の医療弱者の多くは、移動する交通手段のない孤独な高齢者です。僻地では「日本で最新の医療」ではなく、「その地域の最善の医療」を求めています。医療・経営効率の観点だけで集約化したり、医療の質を落としたりすることはできません。

この思いを共有するためにも、ぜひ、僻地・離島の医療を春夏秋冬の年単位で応援してください。徳洲会の職員の人的な交流こそが「根」にとって大切な肥料になるのです。

これから庄内が広がる東北の日本海側は、鉛色の冬を迎えます。「根」に日の光は当たることはなく、その太陽すら照りません。じ~っと耐えて、皆で頑張りましょう。

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