徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

鈴木 隆夫(すずきたかお)一般社団法人徳洲会理事長

直言 生命いのちだけは平等だ~

鈴木 隆夫(すずきたかお)

一般社団法人徳洲会理事長

2019年(令和元年)12月2日 月曜日 徳洲新聞 NO.1213

一人ひとり置かれた場所で最善の努力を
「一隅を照らし」続ける活動は未来を救う
「心の灯」を共有する世界の仲間たちと共に

「径寸(けいすん)十枚、是(こ)れ国宝に非ず、一隅(いちぐう)を照らす、此(こ)れ則ち国宝なり」。これは天台宗開祖の最澄の教えです。「径寸十枚」とは金銀財宝などのことで、「一隅」とは今自分がいる場所や置かれた立場を指します。お金や財宝は国の宝ではなく、自分の置かれた場所で精一杯努力し、明るく光り輝くことのできる人こそ、何物にも代えがたい貴い国の宝だという意味です。

一人ひとりが持ち場で最善を尽くすことで、まず自分自身を照らし、それが自然に周囲の人々の心に響いていくことで他の人々も照らしていく。そうして、お互いに良い影響を与え合い、やがて社会全体が明るく照らされていくという教えです。

「魚を与えるのではなく釣る方法を一緒に考えてくれた」

私がこの教えに心惹かれたのは、徳洲会の過去の医療活動のなかに、この教えを見たからです。医療のすべては弱者のために、生命だけは平等であってほしいという世界を求め、「いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療を受けられる社会」の実現を目指し、徳洲会は北海道から沖縄県まで約360におよぶ医療・介護・福祉施設を展開。多くの職員が日夜頑張って働いてきたことで、現在の徳洲会があります。職員一人ひとりが置かれた場所で理念を実直に遂行、努力の積み重ねが、徳洲会の歴史をつくり上げ、民間最大の非営利の医療グループに成長させたのです。

創立後しばらくは、徳洲会の理解者は少なく、「大阪商法」、「コンビニ治療」と揶揄(やゆ)されたこともありました。しかし、医療の〝最後の砦(とりで)〟となれるように尽力し、今では地域社会はもとより国からも認められるようになってきたと実感しています。

離島・へき地で救急を断らない(断れない)という現実を突き付けられながらも耐え、地域社会のために限界まで尽くしている仲間を私たちは知っています。また都市部でも膨大な数の救急患者さんや外来・入院患者さんに対して、少ない人数で何とか対応し、ここまで来ました。それぞれの職員がまさに社会の「一隅を照らす」灯だったのです。欧州で最貧国と言われたブルガリアに、1016床の最先端のソフィア徳田病院を開設したのも、同じ思いからです。徳洲会から経営が離れても、同国の現地スタッフたちは「決して断らない」徳洲会の医療を実践。その理念は誇り高く彼らの胸に輝いていることでしょう。

急性腎不全が死刑宣告とされるアフリカでは透析センターの設立を支援。今や16カ国で、多くの腎不全患者さんが治療を受けられるようになりました。

タンザニアは透析医療から発展し、3年前に腎移植のトレーニングがスタート。来年1月には、そのプロジェクトが完成を迎えます。今年8月に開かれた第7回アフリカ開発会議(TICAD7)では、同国初の現地スタッフによる腎移植に成功した病院のチャンディカ院長が「徳洲会は魚を与えるのではなく釣り方を一緒になって考えてくれた。今度は私たちが学んだことをアフリカに広げるため、私たちが教育の拠点となりたい」とスピーチ。私たちの心の灯が受け継がれたのです。

「病院を中心とした街づくり」人生100年時代をサポート

1973年の徳洲会創立から半世紀近くが経ち、気付けば日本は4人に1人が65歳以上と本格的な高齢社会を迎えています。人生100年時代にあって、「地域の中に病院をつくる」のではなく、「病院を中心とした街づくり」が必要だと感じています。健康な高齢者も、病を得た人も、死が迫った人でさえ、生きてきて良かったと思えるように、徳洲会がどうサポートできるか考えたい。世界から見る日本はまさに極東の離島・へき地。日本にある離島・へき地の姿は、将来の世界の中の日本を暗示しているかのようです。

私は夢を見ます。徳洲会が創立100年を迎える頃、超高齢社会の日本で、今の子どもたちが〝生命だけは平等だ〟と願い、「いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療を受けられる社会」の実現を目指す医療人に成長している姿です。そして、その「心の灯」を共有する世界の仲間たちと一緒に行動しているのです。その中心にあるのは、国境を越えた医療人としての「誇り」や「良心」です。一人ひとりが置かれた場所で精一杯最善の努力を続け、「一隅を照らし」続ける活動は、まさに日本の未来を救う宝となるでしょう。皆で頑張りましょう。

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