徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP 45th

直言

Chokugen

鈴木 隆夫(すずきたかお)(一般社団法人徳洲会理事長(東京都、大阪府))

直言 生命いのちだけは平等だ~

鈴木 隆夫(すずきたかお)

一般社団法人徳洲会理事長(東京都、大阪府)

2018年(平成30年)2月5日 月曜日 徳洲新聞 NO.1119

5年後に勤務医4万人分の労働力消失
大きなイノベーション生み出すAI導入
“生命だけは平等だ”という世界を実現へ

徳洲会が英国ケンブリッジ大学病院の敷地内に病院を建設するプロジェクトの協議を重ねていた10年ほど前、同院を見学する機会がよくありました。同院の1000床の占床率は99%超、平均在院日数は4日という、私たちには考えられないくらい多忙極まる病院でした。1日250台を超す救急車が到着し、ウォークインを含めると時間外の患者さんだけでも優に500~600人を超えていました。

驚かされたのは、それらの一次スクリーニングは、すべて看護師が行い、軽症者には採血から検体、画像検査の指示ばかりでなく、最終的に処方箋を書くことも許されていたのです。さらには医師の監督の下、診察や手術の補助など医師が行う医療行為の8割方をカバーするPA(フィジシャン・アシスタント)という専門看護師が、上部内視鏡や簡単な局所麻酔、ヘルニアなどの小手術を行っていました。

「看護師が医師の業務を遂行することに対し、院内に対立は生じないのか」という私の疑問に、当時の最高経営責任者は「当初は医師から猛反対を受けたが今では彼らを心から信頼し、その協力なしには仕事は回らないと認識している」と笑いながら話していたことを覚えています。

さらに遡(さかのぼ)ること40年前、米国では麻酔専門看護師が全身麻酔を実践、また無資格者が何の困難もなく外科医に手術の器具渡しを行っていました。

看護師や無資格の一般職員の潜在能力を最大限に引き出す考えや、彼らを研修するシステムが当時すでにあり、医師は専門医としての能力を存分に発揮していました。残念ながら今の日本は、当時の欧米の制度に未だ追い付いていないのが現状です。

「仕事の報酬は仕事」の言 働き方改革により今や禁句

政府が推進する「働き方改革」は、医療を取り巻く環境にも大きな影響を与えます。自由業と認識されていた医師も例外なく労働者とされ、働き方改革により週40時間労働と月80時間内の時間外労働に制限されるようになります。かつて徳洲会では1日おきに当直したり、数週間も帰宅せず患者さんを診たりした時、「仕事の報酬は仕事」と笑みを浮かべ言っていたものですが、この言葉はもはや禁句です。

働き方改革の医療界への最大のインパクトは、本格スタートする5年後に病院勤務医の場合、約25%(約4万人)に相当する労働力が消失するという試算があることです。一方、新しい医師は年間約8000人しか生まれません。医師の確保は今以上に過酷になり、高給を保証しても確保できず、病院経営を圧迫します。医療供給体制の崩壊が目前に迫るなか徳洲会をどう維持し、発展させるか知恵を絞らなければなりません。

徳洲会は10年前から電子カルテを統一化し、同じ言語で話せる仕組みを構築してきました。また、先進各国は、しのぎを削ってAI(人工知能)の開発を進め、各種の画像診断から病理診断に至るまで膨大な画像データをAIに学習させ、熟練医に匹敵するレベルの高精度な病変検出を実現しています。たとえばAIを用い内視鏡画像から胃がんを検出する精度は92.2%。迅速な対応が必要な6㎜以上の病変に絞ると、実に98.6%という高精度ぶりです(出典:がん研究会)。

AIは経験が浅い医師を強力に支援し、熟練医師にも力強いパートナーとなるでしょう。このAIが普及すれば、離島・へき地でも都市部の徳洲会病院で行っているのと同じように、がんの発見が可能になります。

AIにより生まれた余力使い患者さんの体験価値を高める

AIの導入により、軽減されるのは医師の業務だけではありません。患者さんが来院されてから退出されるまで、あらゆる場面でルーティン業務を代行します。その結果、生み出された全職員の余力を患者さんに振り向けて、患者さんの病院での体験価値を高めることができるようになります。

IT化にともなうAIの導入は、徳洲会に大きなイノベーション(革新)をもたらします。徳洲会の理念である“生命だけは平等だ”という世界の実現に思いを馳せ、私たちは現状とのギャップを埋めていかなければなりません。技術革新は想像を絶するスピードで進んでいます。私たちがもつITシステムは、多くの情報を有しており、これを最大限に活用するためにも、AIという新しい波を自らつくり出す気概をもつことが大切です。皆で頑張りましょう。

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