徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

松浦 甲彰(まつうらこうしょう)(名瀬徳洲会病院院長(鹿児島県))

直言 生命いのちだけは平等だ~

松浦 甲彰(まつうらこうしょう)

名瀬徳洲会病院院長(鹿児島県)

2017年(平成29年)11月6日 月曜日 徳洲新聞 NO.1107

生命を脅かす格差は許されない
理念の下で島の人口減少に対応
奄美の社会基盤を支える医療・福祉産業

「学校が廃校になれば、集落としての機能は保てなくなる」

児童生徒の減少にともなう小中学校存続に危機感をもった父は、奄美で里親制度の導入を住民の方たちに働きかけ、全国から山村留学生の募集を計画するなど学校存続のため努力し続けました。約30年前の出来事です。

父は数年前に他界。私が在校時に100人以上の生徒数を抱えていた学校は、2009年に休校、13年に廃校。集落は“限界集落”への道をたどっています。集落が共同体としての機能を果たす支えとなっていたのが、学校の存在だったのです。今、離島にある病院・介護施設は、大なり小なり、この学校のような役目を担っています。奄美群島の島々も高齢化と人口減が確実に進んでいます。

徳之島徳洲会病院(鹿児島県)が開設された31年前、15万人を超えていた奄美群島の人口は、今や11万人にまで数を減らしました。人口減により失ったものは数多くあります。しかし見方を変えると、この数字はある取り組みがもたらした成功の表れとも言えます。

日本の医療・福祉の充実 世界に類を見ないと賞賛

かつて徳田虎雄・前理事長は人口減や産業衰退による島の将来を危惧され、その解決策の一手として、「ヘルシーリゾートアイランド構想」を掲げました。その一端を担ったのが徳洲会グループの活動です。現在、奄美群島に配置された医療・介護施設は31年前には考えられない規模を誇ります。構想は実現されているのです。グループの活動は高齢化と人口減の波に対する防波堤となってきたのです。

今年4月現在、奄美群島の徳洲会グループの施設職員数は1969人。これは同群島の人口の約1.8%に当たります。さらに他の公立および私立の医療施設で働く人の数を合わせると、かなりの数に上ります。医療・福祉および関連サービス業が、奄美群島の重要産業としての位置を占めていることがわかります。一時代を築いた大島紬の織物が主力産業としての地位を失い、他の産業での経済発展も困難ななか、重要な役割を担っているのが医療・福祉サービス産業です。これが弱体化すると奄美の社会基盤が揺らぎます。

「珍しい世の中だからどうしようかね……」とは先日、外来を受診されたご高齢の患者さんのひと言です。「珍しい」とは「素晴らしい」という意味であり、(痛んだ体で生きながらえることの困難さはあるが)恵まれたこの世からいなくなるのはもったいないとの気持ちが込められています。転倒による骨折があっても日常的に手術が行われ、開腹手術も、開頭手術も、内視鏡による治療も、産科診療も、透析治療も島々で行われ、時にはドクターヘリによる搬送で島外での専門的治療もスムーズに受けられる環境になりました。

在宅療養が困難な方には、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、グループホームなど介護施設を利用するという選択肢もあります。「この医療・福祉の充実は世界に類を見ない」と海外から訪問された皆さんも証言されています。

そこに生きている人がいる限り最善の医療を

社会基盤としても重要な役割を担う医療・福祉サービス業も、岐路に立たされています。「2025年問題」の解決策の一環で掲げられた病床削減計画と、予想される診療報酬抑制政策は現状のままでは医療・福祉サービスの低下を招き、受ける側の住民の方たちの流出と、提供する側の人材の流出を加速させそうです。集落から学校がなくなることで島の過疎化は進み、限界集落へと加速。そのような結果を招く政策になりかねません。

そうさせないための手立てをしっかりと実行していく必要がありそうです。失われるものによって格差が生まれ、それが住民の方たちの生命を左右するのであれば、到底、受け入れられません。「そこに生きている人がいる限り最善の医療を!」というのが徳洲会グループの理念であり、格差を埋めるためにも、この理念は重要です。

埋めがたい格差は存在し、避けがたいものとして受け入れなければならない格差も存在します。しかし、生命を脅かされる事態にまで格差が広がることは決して許されません。これまでコツコツと実践してきた理念の追求を続けましょう。高齢化と人口減に対する私たちの選択は、理念の下に判断するならば、迷うことはないと思います。

皆で頑張りましょう。

PAGE TOP

PAGE TOP