徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

白部 多可史(しろべたかし)(成田富里徳洲会病院院長)

直言 生命いのちだけは平等だ~

白部 多可史(しろべたかし)

成田富里徳洲会病院院長

2017年(平成29年)6月5日 月曜日 徳洲新聞 NO.1085

助かる命を助ける努力こそ医の本質
4年間の徳洲会勤務でようやく実感
断らないことが本来あるべき救急医療の姿

徳洲会に入職して4年。それまで外部から見た徳洲会の評判は決して芳(かんば)しいものではありませんでしたが、実際に徳洲会で仕事をさせてもらって、そうした評判の多くは正当ではないと感じています。病める人の力になりたいと願う心温かき人たちが、頑張って仕事をしている立派な医療機関です。救急を断らない精神や本来、行政が担うべき離島・へき地医療に取り組んできた実績、アジア・アフリカなどへの医療支援など、他の医療機関では行えない立派な活動は、誇るべき点が多数あります。

このような事績を理解されていない一般の方々がいることは、本当に残念です。まだ離島・へき地医療や国際貢献に関して知られていないのは、残念で済みますが、断らない救急医療に関して「金儲けのためでしょう」と誤解されている方がいるのは悔しい話です。しかし、徳洲会入職以前、平気で救急を断る医療機関に長く勤務していた私が、断らない救急医療の意義を真に理解できるようになったのは、つい最近の話ですから、世間に理解されていないのも仕方がないかもしれません。断る理由が、「専門分野でないから」というのは、一見正当に見えて、そうではありません。救急隊が救急搬送を断らないように、救急医療機関は救急車を断るべきではないのです。救急車内で受け入れ先を探して、徒(いたずら)に時間が経過し、助かるべき命が助からないという事態は何としても避けなければなりません。どんなに疲れていても、どんなに忙しくても、助けられる人を助ける努力をすることこそ医の本質です。

病が癒えて喜ぶ患者さんの笑顔が最高の贈り物と実感

江戸時代の医師で蘭学者の緒方洪庵(こうあん)は『扶氏医戒之略(ふしいかいのりゃく)』で「医の世に生活するは人の為のみ、おのれがためにあらずということを其業(そのぎょう)の本旨(ほんし)とす」と述べています。当院での講演をお願いした京都府立医科大学救急医療学教室の太田凡教授(前職場は湘南鎌倉総合病院)は「救急病院はブラックリスト(お断りする問題患者リスト)を持つべきではない」とまで言われました。

残念ながら、その境地には達しておりませんが、断らないことが本来あるべき救急医療であるということだけは、徳洲会勤務で身に付いたと思います。

職員なら暗唱できる徳洲会の理念の実行方法のなかで、気に入っているのは「患者さまからの贈り物は一切受け取らない」というところです。長年、外科医を務めてきて、手術の謝礼を受け取ることが当たり前のように感じていた私に、この言葉は新鮮な驚きでした。院長になってから、置いていかれたお菓子などに関しては礼状を添えて同等の品や商品券を送っています。「一切受け取らない」ということを徹底するのは、医療を職業として選んだ者が、本来抱いている「人のために役立ちたい」という純粋な気持ちを風化させない効果があります。病が癒えて喜ばれている患者さんの笑顔が、最高の贈り物であることを実感でき、幸せな気分に浸らせてくれます。思えば外科医になって以来、一貫して「誰よりも上手くなりたい」という気持ちを強くもち、診療や学会活動に精励してきました。

絶対に助けるという強い意志 逃げずに立ち向かうことが要

学会では、上手くいったケースの発表が中心ですので、上手な外科医のひとりに見られる存在になったと思いますが、思い出すのは合併症で苦労したことばかりです。消化器外科では術中に死亡することは非常に稀です。しかし術後合併症で患者さんを亡くしてしまうことは決して珍しくありません。合併症が起きると対策を考えて眠れないこともあります。

絶対に助けるという強い意志をもち、逃げないで立ち向かうことが必要です。自分の命であれば諦めることは勝手ですが、かかっているのは自分を信じて身を委ねてくれた人様の命です。

神ならぬ外科医が勝手に命の終わりを決めてはならないのです。絶対に諦めず、最後の最後まで全力で立ち向かい救命する。それが外科医の宿命であると思います。福沢諭吉は『贈醫(いにおくる)』という七言絶句(しちごんぜっく)を残しました。その意味は「医学は自然と人間との限りのない戦いであり、医師は自然の家来だと言ってはならない。最高の診断力と最高の治療技術をもって、できる限りのことを行うのが医業の本質である」というものです。今も苦しい時には、この言葉を反芻(はんすう)して最善を尽くすようにしています。皆で頑張りましょう。

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