徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

東上 震一(ひがしうえしんいち)(医療法人徳洲会副理事長 岸和田徳洲会病院院長)

直言 生命いのちだけは平等だ~

東上 震一(ひがしうえしんいち)

医療法人徳洲会副理事長 岸和田徳洲会病院院長

2017年(平成29年)5月15日 月曜日 徳洲新聞 NO.1082

いかなる状況下でも患者さんを諦めない
あらゆる要請に対しても絶対に断らない
これまでの心臓血管外科手術は累計1万例超

今回は院長という立場を離れ、あくまでも27年間、心臓外科チームを率いてきた一外科医として、その悪戦苦闘の過程を紹介させていただきたいと思います。

本年4月時点で当院の心臓血管外科手術数累計は1990年10月以来、1万13例(心臓手術:8183例、腹部大動脈瘤(りゅう)手術:1830例)に達しました。畔栁智司(くろやなぎさとし)・心臓血管外科部長がチームの采配を引き継いだここ数年は、年500例以上のペースに加速しています。

わずか2人で当院の心臓血管外科を立ち上げた当初から、私が一貫して守り続けている基本的な姿勢があります。

いかなる状況であっても、患者さんの命を決して諦めないこと。心停止を要する心臓外科では、術前の状態の悪さや心停止時間が影響して心臓の回復が思わしくなく、人工心肺(心臓と肺の機能を代行する補助装置)からの離脱が困難になる場合があり得ます。その時、たとえ論理的には絶望的な状態であっても、心臓外科医が諦めると、それは直接、患者さんの死を意味しますから、何が何でも徹底的に粘って頑張るということです。

これは、心臓血管外科開設早期に、急性心筋梗塞に対する緊急手術の実体験から学んだ得難い教訓に基づくものでした。朝から始めたその手術は、夕方には心臓の血管(狭くなったり詰まったりしている冠動脈)へのバイパス手術が終わっているにもかかわらず、心機能は回復せず人工心肺に依存した状態に陥ってしまいました。ショック状態での緊急手術であったことを考えれば、複数回の離脱の試みが不成功なら一般的な外科医であれば諦めるという判断を下したと思います。しかし心臓外科医として自立間もない私は粘りに粘り「もう一度、完全に補助して心臓を休ませ10分たったら再度ウイニング(離脱)しよう」。これを何回も繰り返し、ついに翌朝、離脱に成功しました。

その後、この患者さんは10年以上にわたって私の外来に通院されました。命を諦めないことの大切さに加え、手術の結果に対して真摯(しんし)であることも外科医にとっては守るべき基本的な姿勢です。不満足な手術結果を前にして、ともすれば、患者さんの体や状態に、その原因を求めがちですが、つらくても絶えず自らの手術手技に結果をフィードバックさせることが必要です。未熟さを正確に自覚して初めて、それを克服する努力が始まるわけですから、これに気付く謙虚さをもちあわせていない外科医に成長はないと思います。

手術中でも紹介患者さんを断ったことがないのが誇り

あらゆる要請に対しても絶対に断らないこと。「断らない医療」は徳洲会グループ共通の理念ですが、臨床現場では、さまざまな状況があり、それを達成するのは容易ではありません。

私のチームは、たとえ手術中の緊急手術紹介であっても、今までただの一度も断ったことがなく、これが私たちの誇りです。実際には、紹介を受けた患者さんが病院に到着し手術室に搬入するまでには、ある程度の時間を要します。その間に進行中の手術の山場は越えているという計算があったことも事実です。絶対に断らないというチームの統一した姿勢が、結果的には紹介をいただく先生方との信頼関係につながっていきました。

多くの人々と先生方の信頼に支えられ成り立つ心外チーム

心臓外科を取り巻くネットワークが次第に拡大していた頃、遠方の病院から紹介された患者さんの手術で重篤な合併症を引き起こしたことがありました。申し訳ない結果をご家族に謝罪した後、紹介をいただいた先生方に報告すべく片道約100㎞の道のりを自分ひとりで悄然(しょうぜん)と運転したことを思い出します。ところがその後、この病院からの手術依頼は途絶えるどころか、むしろ増加したのです。「紹介先の外科医自らが、血相を変えて手術の結果を謝罪に来たことがあったか。その必死さは評価できる」。随分後、その病院の院長が循環器内科の先生方にこうコメントされたと聞きました。

心臓外科チームは多くの人たち、多くの先生方の信頼という支えにより成り立っています。これに応え続けるためにも、私が守り続け次世代に引き継いだ外科医としての基本姿勢を真摯に追い求め、発展させてほしいと思います。極(きわ)めて個人的な体験談になりましたが、これを読まれた皆さんが何かを感じ取っていただければ望外の喜びです。

徳洲会グループの未来を信じ、皆で頑張りましょう。

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