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直言

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松本 裕史(まつもとひろし)(埼玉医療生活協同組合理事 羽生総合病院院長)

直言 生命いのちだけは平等だ~

松本 裕史(まつもとひろし)

埼玉医療生活協同組合理事 羽生総合病院院長

2016年(平成28年)11月7日 月曜日 徳洲新聞 NO.1056

新築移転に7万5,000人分の賛同署名
高機能目指しさらなる社会貢献に尽力
新病院オープンは2018年5月の運び

羽生総合病院は10月23日、新築移転用地で地鎮祭を行いました。移転先は当院から車で2分の場所です。ここに至るまでに約10年の歳月を費やしました。新病院のオープンは2018年5月を予定しています。

13年前、私は大和徳洲会病院の寺田康(やすし)院長(現・庄内余目病院院長)から「羽生病院の院長になりませんか」と誘われました。彼とは学生時代にバレーボールで対戦し、三井記念病院でも机を並べて学んだ仲ですが、羽生病院の困難な状況を知り、決断までに3カ月かかりました。

幼くして父を亡くし、戦争のさなかに一家の大黒柱として苦労を重ねた私の父からは常々、「楽をして儲けられる仕事にろくなものはない。選択に迷ったら苦しいほうを選べ」と言われてきました。山道で迷った時に楽なほうを選んで沢に下り、正確な位置をつかめず、さらに迷うケースが少なくありません。迷った時は苦しい思いをしても峰に上がり、高所から周囲を見回さないと進むべき方向を把握できません。このことは病院経営にも言えることだと思います。

職員全員で署名活動を実施 羽生市の人口の半数が署名

院長就任を決めた時、徳田虎雄・前理事長(当時、理事長)に言われた「新築移転は君の最後の仕事だね」という言葉が今も思い出されます。地鎮祭の実施まで10年を要したことを思うと、前理事長の先を読む目の確かさを感じます。

移転候補地の選定で行き詰っていた5年前、職員全員で「新築移転賛同署名活動」を実施。羽生市内で約2万5000人、近隣地域を含めると約7万5000人分の署名を集めました。羽生市5万人余の実に半数の方々が署名してくださった事実が、新築移転に立ちはだかる重い扉を開く契機となりました。

市民の皆さんに、これまでの当院の実績が評価されたことが、市長をはじめ多くの方々に多数のコミュニケーションチャンネルを開くことになりました。各種の行き違いが徐々に解消され、固い信頼関係が構築されて計画は一気に進展。大事をなすには多くの方々の手助けが必要で、そのためには良好な人間関係が大切だと改めて思い知りました。

現場の声を極力反映して設計 誰にでもやさしい病院と確信

新病院を設計するにあたり、徳洲会グループの湘南鎌倉総合病院、千葉西総合病院、千葉徳洲会病院、中部徳洲会病院、グループ外の佐久総合病院、星総合病院など高機能病院を見学しました。それぞれに工夫が凝らされていましたが、病気で入院されている方々の不安と孤独は、健常人には計りきれないものがあります。私自身、医師になった頃に急性肝炎と胸水がたまった結核で1カ月間入院。この時、ベッドに横たわる私を見下ろす医師や看護師の顔つきに、怖さを感じたものです。新しい病院の設計には、この入院経験も生かしたいと考えていました。

当初はフロアが三角形の病棟にすることで、全室に1日1度は陽が当たり、患者さんの動線と職員が動く経路を分け、職員の経路を最短化できると考えていましたが、現場で最も長い時間働くスタッフの意見を取り入れ、計画を修正。病棟の中央にナースステーションを設けて患者さんとスタッフの距離が近くなる設計に変更。それ以外の場所でも極力現場の声を反映させるようにしました。結果として、患者さんや職員に、やさしい病院ができあがると確信しています。また、災害に備え、屋上にヘリポートを設置。トリアージ(重症度選別)は多目的ホールで行うことを考えています。

首都圏に震災などが発生した時、地理的に当院が最前線の病院として機能を発揮しなければなりません。実際、東日本大震災時には被災地域の透析患者さんが透析を受けられない事態が発生。そのような事態にも対処できる病院を目指しています。

当院周辺ではこの5年間、医療施設の新規開院はなく、逆に2つの診療所が閉鎖。埼玉県は人口当たりの医師数が全国で最少なだけに、当院の責務はますます重要になっており、あえて高機能病院を目指すのは、そうした状況と無縁ではありません。さらに団塊世代が高齢者となる25年を控え、急性期のみならず回復期や慢性期の患者さんのための病床拡張など、やるべきことが山積しています。

私たちは「生命だけは平等だ」の哲学の下、地元への社会貢献に努めてきました。新築移転を機に、さらなる社会貢献に励みます。皆で頑張りましょう。

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