直言

Chokugen

北谷病院(沖縄県) 院長
仲間 直崇(なかまなおたか)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

仲間 直崇(なかまなおたか)

北谷病院(沖縄県) 院長

2026年(令和8年)06月08日 月曜日 徳洲新聞 NO.1546

「過ごしたい場所で、過ごしたいように
過ごす」を支えるのも医療の大切な役割
DX・最新技術・徳洲会理念の一体化を目指す

約20年前、研修医として伊良部島診療所(沖縄県)に勤務していた頃の話です。90代の女性が肺炎で入院したのですが、呼吸状態が悪化していました。当時の私は「悪くなれば病院で治療を続ける」ということを当然のように考えました。そんななか、ご家族から「家に連れて帰ってもいいですか」と。状態が悪いのに自宅へ帰るという選択は、大きな衝撃でした。

その夜、お看取りの連絡を受け、ご自宅へ向かうと、ご親族が集まり、笑い声が溢れ、お酒を飲んでいました。つまりは「いつもの時間」が流れていたのです。今でも私の記憶のなかで、旅立とうとしているその“おばあ”は、柔らかく微笑んでいます。当時の私は「人の死は医療の敗北」だと思っていました。しかし、それ以来、「人が過ごしたい場所で、過ごしたいように過ごす」ことを支えることもまた、医療の大切な役割ではないかと思うようになりました。私の医療の原点です。

私なりの“生命だけは平等だ”の徳洲会理念の解釈は、一人ひとりの選択肢を決して無視しないということです。正解があるなら、もちろんそれが良い。しかし、現実の医療には迷いや後悔が生まれます。だからこそ必要なのは、正確な情報を提示し、そのうえで患者さんやご家族が納得できる選択を支えることではないでしょうか。私は医療者には「納得ある後悔」に寄り添う覚悟もまた、必要だと思っています。

私がもっとも胸を痛めるニュースは介護殺人です。介護とは本来、家族愛の一つの形であるはずです。しかし長年、介護を続けた末に、その最後が殺人という形で終わってしまう。聞くたびに私の心には「間に合わなかった」という思いがにじみます。誰かがもう一歩踏み込めていたら、思い詰めた時の連絡先だけでも確保できていたら、結果は変わったかもしれない。選択肢を届けられなかったことを本当に悔しく思います。時代とともに価値観は変わります。しかし私は「すべての人が大切にされる社会」のほうが好きです。そしてそれを守る医療者でありたい。

「コザ徳洲会病院」新築移転へ 在宅診療とAI-CTC軸に展開

現在、北谷病院は1年後の新築移転を控え、「コザ徳洲会病院」という名称に変更し新たなスタートを迎えようとしています。当初は療養病床54床と介護医療院100床でスタートしますが、将来的には最大300床規模まで拡張可能な構造として設計されており、沖縄県の地域包括ケアシステムのフラッグシップホスピタルを目指します。また訪問診療にも力を入れ、1~2年以内に家庭医療・総合診療の専攻医プログラム構築にも挑戦します。

離島・へき地向け24時間診療 相談システムを試験的スタート

診療の目玉の一つがAI-CTC大腸検査です。これは「仮想腸洗浄」というAI技術により、下剤と大腸カメラなしに、大腸カメラに近い精度で大腸病変を評価できる可能性を持つものです。単なる最新技術ではありません。年齢やADL(日常生活動作)、検査への抵抗感などから十分な検査を受けられなかった方々に、新たな選択肢を届ける挑戦です。また、この技術が大腸がん死亡率減少に与える影響を検証する大規模コホート研究「OKINAWA Study」にも新生コザ徳洲会病院は取り組みます。そして、この技術は大腸がんの早期発見だけでなく、病状把握や緩和的介入のハードルを下げることで、その人が、穏やかに過ごせる時間を支えることにもつながると考えています。

4月27日にパイロット版が始まった離島・へき地向け24時間診療相談システム「それでいいよプロジェクト」も同じ発想です。Chatisを通じ徳洲会の専門医を横につなぎ、その地域にいながら高度な専門家相談を可能にすることを目指しています。私はこの取り組みを“生命だけは平等だ”のシステム化だと思っています。場所や年齢によって支援を諦めるのではなく、「どこにいても相談できる」、「どこにいても支え合える」をDX(デジタル変革)で実現したいのです。

私は多動的な人間に見えるらしく、「何がしたいの?」とよく聞かれます。しかし自分のなかでは全部同じことをしています。それは「人が過ごしたい場所で、過ごしたいように過ごす」を支えたいという思いです。その優しさと強さを持った組織へ徳洲会がさらに育つ。その一端に自分がいることを心から誇りに思います。むるチバリヨー!(皆で頑張りましょう!)。

PAGE TOP

PAGE TOP