
直言
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直言 ~
東上 震一(ひがしうえしんいち)
医療法人徳洲会 理事長 一般社団法人徳洲会 理事長
2026年(令和8年)06月01日 月曜日 徳洲新聞 NO.1545
本年度の診療報酬改定は、医療従事者の処遇改善や救急・周産期医療への重点配分など、医療の実務に対し一定の評価がなされました。このプラス改定の意味は、徳洲会の基本方針である許可病床を使い切ること、救急を断らないことと驚くほど合致します。私たちが提供する医療への後押しとして歓迎すべき構図ですが、これを単なる「追い風」として受動的に享受するつもりはありません。本年度の強気な事業計画は「さらなる進化(患者さんにも働く仲間にも最善)の礎」とするための決意と覚悟の表れでもあります。民間最大の医療グループとして、私たちには果たすべき社会的使命があります。それは「あくまでも医療の受け手の側に立つことで、健全な経営が可能」という事実を社会に呈示することに他なりません。
「許可病床を使い切る」、「救急を断らない」という私たちの病院運営の命題が、そのまま「診療報酬改定により直接的な収益」へと直結することを理解する必要があります。病院幹部の皆さんは、これを基本に現場を導いてください。プラス改定を理解するうえでの要点は、評価の二面性とも言える点です。評価は「出来高による積み上げ」と「DPC係数による評価」の2種類からなります。注意を要するのはDPC係数アップによる評価です。入院基本料加算は「包括される入院医療費に係数を掛けた点数」です。すなわち「ベッド利用率が低い=包括される入院収益が少ない」状態では、いくら係数が上がろうとも、経営に与えるインパクトは極めて限定的になります。許可病床を使い切り常に高い稼働率(ベッド回転率)を維持している病院こそが、この係数アップの恩恵を最大化できます。
日本の医療界には長年、「提供者側の論理」が蔓延していました。「この疾患は、うちでは診られない」、「夜間だから対応できない」、「人手が足りないから救急を断る」。これらはすべて提供者側の都合であり、病院の事情はあるものの患者さん側の視点に立てば、ただの「我儘」ということになります。徳洲会が持つべきは、こうした医療界の慣習、やり方を越えていく姿勢です。
救急を断らない姿勢は地域医療への貢献のみならず、重要な加算ポイントでもあります。救急受け入れの出来高評価、随伴する検査(血液検査やCTなど)の加算上乗せ、さらに入院時の看護必要度も押し上げます。「断らない医療」が、いかに病院の基盤を強固にし、ひいては働く環境を支える原資にもなるのです。
徳洲会は積極的にM&Aを進めています。地域で必要とされながらも経営困難に陥った病院を受け入れ再建し、地域医療を守るのが重要な使命と考えるからです。しかし、新たに仲間となった病院の再建には、多大なエネルギーと資金が必要です。建物や設備の老朽化、人材不足、地域との信頼関係の再構築など課題は山積です。徳洲会の既存病院についても、今後の地域ニーズに対応するため、新築移転や増改築が必要です。高度急性期病院の拡大強化、回復期・慢性期病院の整備、在宅医療支援、地域包括ケアへの対応など病院に求められる役割は年々広がっています。医療DXへの投資や最新医療機器の導入も避けて通れず、徳洲会全体の資金需要は今後さらに膨らみます。
しかし、私はこれを決して過大な負荷とは考えません。むしろ、成長と変革に伴う必然的な苦労であると捉えています。挑戦を止めれば、その瞬間から衰退が始まります。現状維持は一見、安定しているように見えて、実際には後退の始まりなのです。だからこそ徳洲会は変化を恐れず、新しい挑戦を続けなければなりません。どれほど立派な設備があっても、そこで働く職員の心が伴わなければ、地域から信頼される病院にはなりません。理念を共有し、患者さんのために努力する職員が集まれば、病院は必ず成功します。徳洲会は人を大切にし、人を育てる組織であり続けなければなりません。徳洲会創成期の先人たちは大きな反発を受けながらも、それぞれの地域へ飛び込み、断らない医療を実践してきました。その挑戦の歴史が今日の徳洲会を築き上げています。その精神を受け継ぎ、次の時代を切り拓かなければいけません。徳洲会の持続的成長と、さらなる進化のために、皆で頑張りましょう。