直言

Chokugen

与論徳洲会病院(鹿児島県) 院長
高杉 香志也(たかすぎかしや)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

高杉 香志也(たかすぎかしや)

与論徳洲会病院(鹿児島県) 院長

2026年(令和8年)04月13日 月曜日 徳洲新聞 NO.1538

島を丸ごと守り続けられるよう
今後とも成長の歩を進めていく
なりたい自分になれる・なりたい病院になれる

与論島は鹿児島県最南端にあり、沖縄本島から約25kmに位置する周囲約23kmの隆起珊瑚が美しい島です。ヨロンブルーと呼ばれる透き通る海、天の川が横たわる満天の星空、そして、じいさま、ばあさまの笑顔がとても素敵な島です。当院は島唯一の入院施設を持ち、81床と小規模ながら救急、急性期、回復期、慢性期、終末期医療と、かかりつけ医としての役割を担っています。私が与論に赴任したのは2007年、「最期は自宅の畳の上で過ごしたいな」と天を仰ぎながら言われる患者さんの言葉が転機となり、在宅死率80%を超えるこの島へ赴任しました。

変わり続ける姿こそが自然である New Wildの考え方が当院に必要

島に台風が直撃すると、流通を支える船便が止まり、スーパーマーケットから商品がどんどん消えていきます。1週間も船が止まると、野菜、牛乳、卵、豆腐、パンなどが陳列棚からなくなり入手することはできません。苦情を言う人は誰もおらず、逆に船が着いて物が並ぶ時、感謝の気持ちでいっぱいになります。また、高い在宅死率は与論の死生観と、ご先祖様への感謝によるものです。家には神棚が祭られ、そこにおられるのは祖父母を含めたご先祖様です。日々語りかけ、日常の報告やお願い、感謝の声かけをする身近な場所です。在宅死は、ご家族や親戚のみならず、ご先祖様にも見守られ息を引き取り、自分も見守る側になるということであり、そのお手伝いをさせていただいています。

そんな感謝の気持ち、ご先祖様、魂を大切にする与論の文化に引き込まれ、今日に至るのですが、実際の生活は厳しい面もあります。「牛乳1ℓ指数」(物流コストと輸送リスク)は本土料金+110円程度、ガソリンも+20円強/ℓで、日々の生活コストは高くなってしまいます。「生コン・ブロック指数」は本土相場の1.2~1.5倍で、インフラ整備やマイホーム、施設建設が圧迫されます。「Amazon段ボール指数」(注文してから届くまでの日数)では東京の当日〜翌日と比較すると、与論は中3日〜5日となり、また物によっては配達されません。

島内もこの20年で変化があります。約5,700人だった人口が5,000人を切り、年間出生数も60人から30人弱へ、高齢化率も約23%から約39.6%となっています。人口は減っていますが、世帯数は微増し、核家族化が進んでいます。それにともなって80~90%あった在宅死率が半分程度まで減少し、また、本屋、ラーメン屋、お豆腐屋さんもなくなってしまいました。一方、SNSで「ヨロンブルー」が共通言語になり、星空も含めて皆が与論の魅力に気付き、観光客やIターン、Uターンの人々が増え、新しい特産品やお店が増えてきています。流れていく歳月の中で、今後も変化を続けるでしょう。

私たちはつい、美しい海や懐かしい風景を「そのまま」留めておきたいと願ってしまいます。しかし、自然界を見渡せば、珊瑚礁も私たち人間も、絶えず細胞を入れ替え、環境に適応し、変化し続けることでしか「生きる」ことはできません。この「変わり続ける姿こそが自然である」というNew Wildの考え方が、当院に必要だと思っています。現在進行している新築移転プロジェクトは、単に古い建物を新しくするものではありません。与論の文化を大切にしつつも、変化していく「これからの与論島」を守り続けるため、進化し続ける病院をつくるのだと思っています。運営面では2026年度に、地域包括ケア病床への転換を一部行いつつ経営状況を改善させ、27年度に病院機能評価を受け、28年には新築移転を迎え、さらなるマンパワーの充実を目指します。将来的には大腿骨頸部転子部骨折や、白内障の方の加療を島で完結できればと思っています。

「感謝・魂・誠」を大切にする 島の心だけは永遠に続いていく

東上震一理事長は「なりたい自分になれる」と言ってくださっています。当院も、なりたい病院になれるはずです。南部、中部、福岡徳洲会病院、湘南鎌倉総合病院をはじめとした全国の徳洲会病院の仲間が、当院を応援してくださっています。本当に日々感謝しています。変化し続ける社会情勢の中で、今後も島の営みは続き「感謝」、「魂」、「誠」を大切にする島の心は続いていくでしょう。与論島を丸ごと守り続けられる病院であるよう、当院は成長し続けたいと思っています。

皆で頑張りましょう。

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