
直言
Chokugen

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直言 ~
東上 震一(ひがしうえしんいち)
医療法人徳洲会 理事長 一般社団法人徳洲会 理事長
2026年(令和8年)02月02日 月曜日 徳洲新聞 NO.1528
徳洲会グループは創設以来、都市部での病院規模拡大と同時に、離島・へき地医療への取り組みや24時間365日の救急受け入れなど、既存の医療制度の隙間にある弱者を救うべく、猛烈な勢いで突き進んできました。その結果、現在では日本最大級の民間医療グループとして成長を続けています。
しかし、これが到達点ではありません。今の我々の姿は、あくまで急速な拡大という「成長の一過程」に過ぎないのです。挑戦はここから始まると考えています。いかにして私たちが持つエネルギーを「持続的な成長」へと進化させていくか。今、私たちは大きな転換点に立っていると言えます。
徳洲会は創成期から一貫して、他にはない強みを武器として成長してきました。“断らない医療”を貫く覚悟、全国どこへでも医療を届ける行動力、多職種が一体となって患者さんに向き合う現場力、そして離島・へき地など、そもそも医療の提供が困難な地域や厳しい経営環境になる地域でも、逃げずに挑戦してきた歴史があります。これらは簡単に真似できるものではなく、長年、積み重ねてきた徳洲会の財産なのです。
一方で、規模が拡大すれば課題や弱みが見えてくるのも事実です。人材不足、経営のばらつき、地域差、業務の非効率など、挙げればきりがありません。しかし私は、徳洲会の強みを最大限に生かし、さらに伸ばすことで、結果として弱みが必ずカバーされていくと考えています。強い部分が組織全体を牽引し、底上げしていくからです。
人も同じです。すべてを平均的に、こなせる人間はいません。得意なことに集中し、その力を発揮できる場を用意することが、組織としての成果を最大化します。弱い部分は、他の誰かの強みで補えばよいのです。互いの強みを尊重し、組み合わせることで、個人では到達できない高みに組織は到達できるはずです。
「成果を上げるには、人の強みを生かさなければならない。弱みからは何も生まれない」(ドラッカー著、『経営者の条件』、1966年原著刊行)。この組織論は医療現場においても不変の真理であると思います。我々の一人ひとりの職員、そして個々の病院には、必ず独自の「強み」があります。ある者は高度な外科手術に長け、ある者は献身的な看護に秀で、ある病院は救急医療において圧倒的な対応力を誇ります。徳洲会のリーダーが果たすべき使命は、これら個々の強みを最大限に発揮できる環境を整えることです。
弱点を矯正し、瑕疵を除く。優等生的指向からは、せいぜい現状維持の「平庸」しか生まれません。得意分野を磨き上げ、それを最大限に伸ばすことによって、弱点をカバーし、組織全体の価値を高めていく。これが徳洲会の新しい成長の形と考えています。
強みを生かすことと、自身の欠点から目を背けることは同義ではありません。むしろ、自らの「弱さ」や「至らぬ点」を、客観的に分析する真摯な姿勢が不可欠です。組織に綻びはないか。肥大化した組織ゆえの硬直化、コミュニケーションの断絶はないか。「徳洲会なら何でもできる」という驕りはないか──。自らの弱さを知るからこそ、他の人の強みに頼ることもでき、チームとしての結束が生まれます。
グループ内のネットワークの強化:病院や徳洲会の特徴でもある各部会が持つ強みを有機的に結びつけ、徳洲会の治療に反映させる。
人材育成:才能を見出し新たな資格を獲得させる教育へ。自らの強みが生かされていると実感できる組織こそが、最も高い生産性と効率性を生み出す。
デジタルと人間力の融合:DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務の効率化を徹底する。生み出された「時間」を、人にしかできない「心の通う医療」に充てる。
徳洲会は急速に拡大していく成長過程の一段階にあります。基盤を固めることができれば、その先には大きな飛躍が待っています。過去の成功体験が未来の足かせにならないように、自らを戒め、そして強みを正しく再認識し、この巨大なグループを「持続的に進化する組織体」へと変革していかなければなりません。全ては、徳洲会を必要とする患者さまのためにあります。
皆で頑張りましょう。