徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

医療法人徳洲会 専務理事
山形徳洲会病院 院長
笹川 五十次(ささがわいそじ)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

笹川 五十次(ささがわいそじ)

医療法人徳洲会 専務理事 山形徳洲会病院 院長

2025年(令和7年)10月06日 月曜日 徳洲新聞 NO.1512

得意分野を成長させつつ現行人員で設備を
可能な限り活用し病床利用率アップに尽力
全職員が互いの仕事を理解し助け合うことが要

山形徳洲会病院は2004年9月1日に開設され、今年で21年目となりました。当院は急性期病棟(60床)、障害者病棟(58床)、療養病棟(90床)で構成されたケアミックス病院です。徳洲会における病院規模では中規模に属しています。

医療依存度の高い透析患者さん 積極的に療養病棟で受け入れる

徳洲会グループの応援スタッフの尽力で、開設時には約30人の血液透析患者さんが登録されていました。当初は外来透析患者さんの受け入れを積極的に行っていましたが、透析患者さんの高齢化が進み、通院が困難な方も見られるようになりました。本来、自宅から通院して週2~3回の透析治療を受ける外来透析が望ましい形なのですが、高齢化とともに運動量・活動量の低下や、食欲不振などから介護が必要になるリスクが高まり、長期透析患者さんは合併症を抱えていることも多く、脳血管障害の後遺症や認知症などを発症し、通院が難しくなることがあります。

実際に、要介護の透析患者さんの半数以上が独居あるいは2人暮らしで、医療依存度が高く、介護施設などでの受け入れが困難な状況です。また、患者さんや、そのご家族が心身ともに疲弊し、治療を放棄するケースもあります。これに対し、外来透析クリニックでは、重症化した患者さんの対応に限界がある一方、急性期病院での長期入院も難しいのが実情です。そこで、医療依存度の高い透析患者さんを積極的に療養病棟などに受け入れることにしました。その結果、透析センターと療養病棟は継続的に黒字となり、病院全体でも何とか黒字を維持できるようになりました。

透析医療は度重なる保険診療点数の減算により、収益率が減少し続けています。さらに、わが国の慢性透析患者数は、21年の34万9,000人をピークに1年で約4,000人減少しています。今後の慢性透析患者数は年1%ずつ減少することが予想されます。当院は、繰り返す新型コロナ感染の院内クラスター(感染者集団)発生で、多くの透析患者さんがお亡くなりになったこともあり、22年3月の255人をピークに透析患者数は減少しました。その影響もあり、常に上位に位置していた利益率は、最近では中位に沈んでいます。

昨年より、コロナ禍で中断していた医療機関への訪問を再開しました。山形県内で重症度の高い透析患者さんを受け入れている病院は、現在もほとんどなく、医療需要が高いことを再認識しました。今年になって近隣の外来透析クリニックの閉院や、有床透析クリニックの無床化が続いたこともあり、当院の透析患者数は6月で下げ止まり、7月より増加しています。保険診療点数の減算が今後も続くと思いますが、地域でなくてはならない病院になるために、透析センターの充実が必要と考えています。

依頼を受けた治験を確実に遂行 依頼者との間に信頼関係を築く

当院には、もう一つ黒字部門があります。11年に開設された臨床試験センターです。開設当初、治験の依頼はほとんどなく、わずか55万円の実績でした。そこで、依頼を受けた治験を確実に遂行し、依頼者との間に信頼関係を築くように心がけました。その結果、22年には1億7,000万円となり、徳洲会グループでもトップクラスの実績を有するセンターとなったのです。新たな診療科を開設する以上のインパクトです。新しい作用機序を有する薬剤に携わり、その薬剤が新薬として世に出ることで充実感も得られ、最先端から程遠い地方の病院では感慨もひとしおです。最近では、庄内余目病院や仙台徳洲会病院に応援を出せるまでになりました。東北ブロック内の治験拡大に少しは貢献しているようです。

黒字部門は病院経営を支える重要な柱ですが、部門間の協力なしでは成り立ちません。健全な病院経営を維持するには、職員一人ひとりの協力と助け合いの精神が欠かせません。医師、診療看護師、看護師、薬剤師、診療放射線技師、臨床工学技士、臨床検査技師、各種療法士、事務職員など、すべての職員が、それぞれの立場で役割を果たしながら、お互いの仕事を理解し助け合うことで、困難な状況にも対応でき、より良い医療を提供できます。地方の中規模病院ができることは限られています。得意とする分野を成長させながら、現有の人員で設備を可能な限り活用し、病床利用率を上げる努力が必要と考えています。皆で頑張りましょう。

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