直言
Chokugen
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直言 ~
末吉 敦(すえよしあつし)
医療法人徳洲会 常務理事 宇治徳洲会病院(京都府) 院長
2025年(令和7年)01月20日 月曜日 徳洲新聞 NO.1475
「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし」
1830年(天保元年)8月4日に長州・萩城下、現在の山口県萩市で生まれ、29歳で他界。わずか2年間、営んだ私塾「松下村塾」で、後の明治維新で重要な働きをする初代首相の伊藤博文ら多くの若者に思想的影響を与えた吉田松陰の言葉です。塾の内容は講義ではなく、意見を交わす場であったといいます。多くの弟子が育ったのは、一方的な講義形式を取らなかったのが、大きな要因かもしれません。
私は2022年に東上震一理事長から研修担当と介護担当を拝命しました。それぞれについて考えてみます。
研修関係の夢は「若手医師であふれる徳洲会グループにする」ことです。5年以内の中期計画は、①初期研修医を教育する基幹病院を増やす。23病院から35病院へ、グループ研修医181人から213人へ、②徳洲会の専攻医の数を倍増し81人から162人へ、③教育体制の質を充実させる、④離島・へき地の診療体制を充実させる――。
研修部門は先人たちが築き上げてきた歴史があることから、本部職員もしっかりしており、目標を掲げ、弱い部分を整備してく所存です。
介護関係の夢は「継続可能で良質な介護を提供し、地域貢献をする」。中期計画は、①事業を継続するには、経営力がないと継続できないので、まず経営状況を明らかにし、改善する、②グループですから、連携を取りながら、均質で良質な介護を提供できるようにする、③このため、多岐にわたる事業を業種別にグループ化し、グループで会議、学習をする――。
徳洲会は介護系事業を400事業ほど行っていますが、そのサービスの種類は大変多岐にわたります。一方、介護系専従本部職員はとても少なく、本部機能が確立していないのが最大の弱点です。担当して2年が経ち、損益が徐々にはっきりとしてきて、経営もだんだん改善、全分野の黒字化が目標です。
私は長年、医師をしてきましたが、いくつかの介護系のサービスなどの名前は知っていたものの、その多様性に驚きました。介護報酬改定で、対応すべきことが多いのにも仰天しました。どんなサービスがあるか、独立行政法人福祉医療機構のホームページを文末のQRコードから参照してください。
一部を掲載します。自宅で利用するサービス:訪問介護、訪問看護、夜間対応型訪問介護、看護小規模多機能型居宅介護、訪問入浴介護、訪問リハビリテーション、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、居宅療養管理指導。
介護保険の各種サービス一覧
厚生労働省は、これらすべての事業の需要、必要性を常に検討し、最近ではLIFE登録で有効性を検証しながら介護報酬で誘導しています。LIFEは、介護施設や事業所が介護受託者の状態やケアの内容を記録・分析・評価する利用者さんの状態の全例登録システムです。科学的な介護の検証が目標で、リハビリ、栄養介入などで利用者さんの状態が保たれるか検証し、今後の介護サービスを常に見直すという大きなプロジェクトです。LIFE自体の加算は小さいですが、LIFEを登録していないと算定できない加算が多く紐づいており、厚労省の強い意志を感じます。
介護系の利益率は収支差率といいます。厚労省は、これですべてをコントロールしようとしています。質が悪いサービスは排除するよう報酬が低くなります。また、その分野の事業所を増加させようとすれば、およそ収支差率は5%以上に設定されます。訪問看護は常に5%以上の収支差率が出るような報酬体系になっており、右肩上がりに事業所が増加しています。収支差率が平均で0%になると、赤字事業所が半分程度となり、事業所が減少します。
介護報酬改定で収支差率が悪いけれども、改定で改善しない分野は、明らかに事業所を減少させようとしている厚労省の意図が伺えます。
介護報酬改定は3年に1回。厚労省が何を考え、どういう方向性を取ることが良いことなのかを把握し、組織をリードすることが非常に重要です。まだまだ介護分野は課題が多く、整備が必要です。
皆で頑張りましょう。