徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

岸和田徳洲会病院(大阪府) 院長
畔栁 智司(くろやなぎさとし)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

畔栁 智司(くろやなぎさとし)

岸和田徳洲会病院(大阪府) 院長

2024年(令和6年)07月22日 月曜日 徳洲新聞 NO.1450

非効率なシステムや惰性で続いている業務
余裕がないからこそ見えてくるものがある
一つひとつ改善し一段と強い組織に脱皮を図る

4月より当院の院長を拝命いたしました。2002年に滋賀医科大学を卒業して以来22年、自らの思う心臓外科医を目指して邁進してきました。私のこれまでの医師人生は21年8月16日付の「直言」に書かせていただいたとおりで、可能な限りの時間と努力を心臓血管外科医になるために費やしてきたつもりです。そんな自分にとって院長というのは、まったくもって新しい挑戦で、右往左往している昨今です。

誰に対してもつねに敬意をもち 謙虚な気持ちを忘れずに接する

心臓血管外科医としてのキャリアのなかで、周囲の方々には、すごく助けていただきました。手術室、ICU(集中治療室)、病棟、外来。看護師、臨床工学技士、リハビリスタッフ、事務スタッフ。心臓外科はチーム医療で、多くの人がかかわって成り立っています。心臓外科の部長になった時、感謝の気持ちを大切に、この病院の心臓外科チーム皆が、楽しく仕事をして幸せに過ごしてほしいと思いました。我々の日常は、まるでジェットコースターのように目まぐるしく変化します。平和に思えた1日も、緊急手術を告げる1本の電話で一変します。当院の心臓血管外科は緊急手術24時間即応体制で、転院搬送なら救急隊がそのまま手術室まで直接搬送、手術となります。この体制は心臓外科医だけでなく、多くのスタッフに負担となるのですが、だからこそ助けられる命があり、だからこそ岸和田徳洲会へと連絡をいただけるものと信じています。

良い医療とは内容も必要ですが、何よりも必要とした時に必要なものを提供できる医療だと思います。献身と、ある程度の犠牲が必要かもしれません。ただ、自分が幸せでなければ、人を救い、幸せにすることなんて、できないと思います。人生の多くの時間を仕事が占めるのは確かですが、家族との時間や自分の時間も必要です。時間をつくり出すためには業務の効率化を進めて、効率良く仕事を終わらせていくことも大切です。仕事を共有してシェアすることも必要です。そんなシステムをつくることが管理者の仕事だろうと思います。小さなことを積み重ねて改善をしていきます。システムが良くなっても、つねにそれを実行するのは人間ですから、人間関係は非常に大切です。患者さんに対しても、職員同士でも、相手に敬意をもって、つねに謙虚な気持ちを忘れずに接することができたら良いのにと思います。きっと、そんな毎日の積み重ねが働きやすい職場をつくり、働きやすい職場であるからこそ、皆が同じ方向を見つめる強い組織をつくり出せるのだと信じています。

恩師の人間万事塞翁が馬の言葉 辛い時も楽しい時も永続はない

人間万事塞翁が馬――。滋賀医大ラグビー部顧問の前田敏博教授(故人、解剖学)が、僕たち部員に言い続けていた言葉です。誰もが聞いたことのある言葉で、難しい話でもありませんが、聞き続けると、不思議と心に残るもので、以来、僕の心のどこかに、いつもあります。辛い時は永遠に続くものではないし、楽しいことも永遠には続かない。良いことがあっても浮かれず、悪いことがあっても気を落とさず。当院は内科医の異動と「働き方改革」が同時にやって来て、正直、極めて困難な状況にあります。当直業務の整理や、外来の縮小などで、なんとか乗り切ろうとしていますが、それでも毎日が自転車操業で、翌週の外来勤務も不確定な状況です。本当は必要な時に必要な医療を提供すべきで、夜間の外来縮小などは褒められたものではありませんが、ない袖は振れません。

しかし、こうして余裕がなくなると、いろいろなものが見えてきます。非効率なシステム、惰性で続いている業務など、順調に続いていたら、きっと、そのまま埋もれていたであろうことが見えてきたのです。一つひとつ改善していくつもりです。自分の足元を見てみると、心臓血管外科はいつも人員不足で、これまでも、さまざま工夫しながら、なんとか持ち堪えてきました。今もまた人員不足で、働き方改革真っ只中です。本当に四苦八苦していますが、これもまたタスクシェアを進めるチャンスにもなっています。余裕があったら思いもよらなかったことも、少しずつ形になってきています。今は本当に大変ですが、ここを乗り越えた時に、より強い組織ができるものと確信しています。

まずは同じ目標を目指し、皆で頑張りましょう。

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