直言
Chokugen
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直言 ~
桶川 隆嗣(おけがわたかつぐ)
徳洲会泌尿器ロボティクスチーム/部会 部会長 Tokushukai Robotic Urology Seminar 会長 武蔵野徳洲会病院(東京都) 院長
2024年(令和6年)07月15日 月曜日 徳洲新聞 NO.1449
Tokushukai Robotic Urology Seminar(TRUS)を7月20、21日、東京国際フォーラムで開催します。開催にあたり東上震一理事長はじめ理事の皆様、関係各位に厚く御礼申し上げます。ロボット支援手術は医師のみならず臨床工学技士や看護師の活躍が必須であり、真のチーム医療が求められます。ロボット支援手術の安全かつ適切な運用には、技術面での標準化や制度の整備が急務です。今後、医療界で生き残るには知識、技量、マインドが欠けることなく備わっていなければなりません。徳洲会に必要なことという意味も込め、メインテーマを「知技心で新時代を切り拓く」としました。ロボット手術の現状や将来展望、手術手技、医療安全対策などについて、シンポジウムを中心としたプログラムを企画しました。
インテュイティブ社の「ダヴィンチ」の大部分の特許が期限切れを迎えた2019年を潮目に、手術ロボット業界は群雄割拠の時代へ突入しました。15年にはグーグルの親会社Alphabetと、Johnson & Johnsonが手術用ロボット企業Verb Surgicalを設立、19年にはSiemensが血管手術ロボットシステムを開発するCorindus Vascular Roboticsを買収、21年にはマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏やグーグル元CEOのエリック・シュミット氏らが出資するVicarious Surgicalが、外科用手術ロボットの効率化を掲げ、SPAC(特別買収目的会社)を上場するなど、ロボット手術の未来は期待で溢れているように見えます。日本でも川崎重工業とシスメックスの共同出資会社、メディカロイドが開発した初の国産手術ロボット「hinotori」が20年に製造販売を認可され、さらに東京工業大学と東京医科歯科大学による国立大学発ベンチャー、リバーフィールドが開発した触覚を有する手術支援ロボットシステム「Saroa」が23年に認可されました。今後、手術ロボットの精度がさらに上がるとともに、AI(人工知能)を活用した予測機能がともなったり、手術と同時に画像でシミュレーションできたりする付加価値が付いてきます。シンポジウム1は「新規手術支援ロボットの特徴と今後の展望」、同4は「ロボット手術の近未来を語る」としました。
医学部の女子学生の割合は23年度、初めて4割を超えました。一方、外科医は男性92.3%と女性が少ない状況です。さらに女性外科医は35歳以上で急速に減少しています。多様な課題解決には働き方や支援の見直しが急を要しています。シンポジウム2「女性ロボット外科医:現実と未来」では女性外科医が抱える多様な困難を克服し、労働環境改善、キャリア継続、活躍の場拡充、また女性外科医が輝き続けるために必要な方策について、4人の女性ロボット外科医に語っていただきます。
今後、手術を経営の軸とする病院の生き残りは相当厳しい状況となります。医療は勝ち負けではありませんが、病院は手術例の多いハイボリュームセンターになれるかで優勝劣敗が分かれます。手術ロボットがあり腕の良い医師がいると、手術の精度は上がります。命やその後の人生に関わるため、より安心して確実な手術を行う病院が選ばれるのは当然です。術例が増えれば手術当たりのコストも下がります。良い手術を受けられる病院には患者さんがさらに集まります。経営がうまくいけば最新の手術ロボットもそろいます。すると、腕の良い医師もやってきます。そんな良いスパイラルが生まれることになります。すでにこの現象が米国で起こっています。泌尿器系の病院では手術ロボットを有していない病院が姿を消しつつあるのも事実です。手術ロボットの有無による病院の淘汰はすでに始まっています。徳洲会のロボット導入28病院が、24年3月までの13年間で約1万件の手術を施行した実績を踏まえ、徳洲会シンポジウム1、2は「徳洲会病院のロボット手術の現状・未来と医療安全対策」としました。
本セミナーへの参加により、交流を通じ知見を深めたり刺激を受けたりすることで、徳洲会のロボット手術の質向上やアカデミックな医師の育成の第一歩となることを期待しています。徳洲会グループのさらなる躍進のため、皆で頑張りましょう。
TRUS参加申し込み受け付け中(参加希望者はTURAホームページhttps://tura.tokushukai.or.jp/から)。