直言
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直言 ~
大橋 壯樹(おおはしたけき)
医療法人徳洲会 副理事長 名古屋徳洲会総合病院 総長
2024年(令和6年)07月01日 月曜日 徳洲新聞 NO.1447
中国山東省徳州市にある山東大学斉魯医院徳州医院から、党書記で責任者である王暁東先生をはじめ4人の先生が3月27日、名古屋、宇治、湘南鎌倉の各徳洲会病院を訪問されました。名古屋病院では手術室、ICU(集中治療室)の見学や、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を実際に操作していただきました。また宇治病院の高齢者施設にも大変興味をもたれ、熱心に見学されました。湘南鎌倉病院では最新かつ高度な診療実績について小林修三院長から説明を受けられました。
5月26日には東上震一理事長、植嶋敏郎・事務局長と私が、中国の徳州医院を訪問しました。2,000床の現病院と新たにオープンする2,000床の新病院を見学し、日本では想像もできないスケールに圧倒されました。また、優れた先進的医療機器も惜しみなく設置されていました。徳州市の医療機関とオンラインで結び、心電図、画像などを集約的に診断し、適切な指示を瞬時に送信していました。AI(人工知能)を用いた各種診療を積極的に導入しており、我々も大変勉強になりました。山東省での病院間の競争は激しく、つねに順位を気にし、それが病院の診療技術・体制をさらにレベルアップさせており、徳洲会との連携により、さらなる発展を模索していました。見学後、王暁東先生、院長である王東海先生と東上理事長との間で、山東大学斉魯医院徳州医院と徳洲会グループとの人材交流、教育や研究、学術セミナーなどで、互いに協力支援していく協力意向合意書(MOU)を締結しました。
徳州医院との関係は6年前に王海慶先生が6カ月間、名古屋病院で血管外科研修をされたことから始まりました。昨年は孫志倹先生も当院で研修されました。また私は王先生が主催する「日本-中国血管フォーラム」にオンラインで参加しました。同フォーラムには中国、日本のみならず台湾、シンガポール、英国からも参加者がありました。この7月12~13日に開かれる第5回の同フォーラムには、岸和田病院循環器内科部長の藤原昌彦先生をはじめ名古屋、東京西、宇治の各徳洲会病院から計5人の発表者が、徳州医院に赴き参加します。まずは循環器領域での交流を行いますが、今後、がんをはじめとした多様な領域での交流を展開することを約束しています。
山東省徳州市は北京から南に車で3時間、高速鉄道で1時間20分、人口約600万人の都市で、日本なら大都市に相当しますが、中国では地方の小都市と位置付けられています。徳州市と徳洲会という名前の偶然性も重なり、互いに運命的なものを感じ合いました。MOU締結後、中国の古くからの宴の文化を体験し、さらに親密で深い関係を築くことができました。
山東省と言えば孔子の出生地であり、さまざまな場所に孔子の言葉を見付けることができました。また、三国志ゆかりの地も多くあります。乱世を憂い、劉備、関羽、張飛の3人が、義兄弟の契りを結び大志を誓った桃園の誓いの場所も近くにあり、劉備の片腕で天才的な戦略家である諸葛孔明の生誕地もあります。今回の宴で曹操の詩が、曹操ファンである東上理事長に贈呈されました。乱世の奸雄と呼ばれ、悪役として描かれがちですが、その強力なリーダーシップで魏を統治した曹操の老年期の野心的で情熱のある美しい詩を、地元の有名な書家が筆でしたためたものです。これを機に、吉川英治の『三国志』を読みました。1800年も前の魏・呉・蜀の三国時代を描いたものであり、出張の移動時間で読破しました。戦乱の時代での人間同士の激しい戦いの物語ではありますが、1800年も経過すると、それは仁、義、忠という言葉に飾られた壮大な叙事詩となり、英語では『The Romance of Three Kingdoms』と“ロマンス”となります。しかし今の世界情勢を見ていると、素直に快読できないところもあります。戦争はその後も至る所で繰り返し、未だにその愚行に気付かず、なくすことのできない無力感を感じるのは私だけでしょうか。
さて、戦争とは無縁の徳田虎雄・名誉理事長が闘って来た徳洲会も、将来的には壮大な叙事詩として語り継がれるのでしょうか。そうなるためには、三国志に見られる大志とロマンでさらなる拡大、発展を続けなければいけないと思います。皆で頑張りましょう。