直言
Chokugen
Chokugen
直言 ~
後平 泰信(ごひらやすのぶ)
札幌外科記念病院 院長
2024年(令和6年)05月27日 月曜日 徳洲新聞 NO.1442
4月より当院院長を拝命しました。私は大ヒット中のアニメ映画の舞台、北海道函館市で生まれ育ちました。父が薬局を経営しており、当時、医師の高齢化により閉院する診療所を見て、自分が医師となり地域医療を支えたいと考え、医師を目指しました。中学、高校の通学路に徳洲会グループの共愛会病院があり、現在、外来診療の応援をさせていただいていることから、ご縁を感じています。大学は旭川医科大学へ進学し、入部したバスケットボール部の先輩たちが札幌東徳洲会病院に初期研修医として入職していたため、漠然と私も同院で研修したいと考えるようになりました。見学させていただいた際、初期研修医に同行し各科の病棟業務から、夜間途切れなく救急車を受け入れる救急外来での業務を見て、厳しい環境に身を置くことで成長できると考え、最終的に志望しました。この時の選択は振り返ってみても、最高の選択であったと思っています。
同院では初期研修医、循環器内科後期研修医、スタッフとして15年間勤務し、後期研修の際に、現在の山崎誠治院長からお声をかけていただき、循環器診療のかたわら睡眠時無呼吸症候群の診療にも注力しました。ゼロからのスタートでしたが、10数年経ち、道内トップの実績を誇る施設になりました。海外での診療にも興味をもち、中国の医師免許を取得し、上海での在留邦人の診察をとおして国際医療の経験を積むことができました。
故・清水洋三・名誉院長、太田智之総長、山崎院長の3人の歴代の院長から行動力や決断力、覚悟など、たくさんのことを学ばせていただいたことが、私の目指す院長像の礎となっています。とくに山崎先生に徹底的にたたき込んでいただいた「絶対に断らない医療」を、これからも自らが先頭に立って実践していきたいと考えています。
つい先日も、腹痛を訴える患者さんが搬送されて来ましたが、救急当番病院など複数の医療機関に断られており、苦悶の表情をした患者さんの第一声が「受け入れてくれて、ありがとう」でした。頭では理解していても、このような体験をすることで、徳洲会の理念について、より深い理解が得られました。私の好きな考えのなかに中国・戦国時代末期(紀元前3世紀頃)の思想家、荀子が残した「蓬も麻中に生ずれば、扶けざるも直し」という一節があります。蓬は曲がって生えますが、真っすぐに伸びる麻の中に一緒に植えると、同じく真っすぐに伸びていくということから、環境によって人は成長するという意味で引用されます。徳洲会では、このような体験ができる機会が圧倒的に多く、当院でも徳洲会の理念を心から理解し、行動できる職員を一人でも多く育てていきたいです。今回、一緒に赴任した外科の前島拓副院長は初期研修からの同期で、着任の挨拶の際、私を助けるために行動を共にすることを決断したと、言ってくれたことが何より頼もしく、涙がこぼれそうでした。
当院は、これまでカバーしていなかった札幌市の中心であり、世帯数が最も多い中央区や、面積が最も広い南区をカバーする徳洲会グループで市内4番目の病院です。日本新3大夜景の藻岩山ロープウェイが徒歩圏内、周囲には市電が走り、自然と暮らしが調和した恵まれた環境に立地しています。
一方で築42年の老朽化した建物や医療機器、人手不足など課題も多いのが実状です。そのようななかでも、職員は私の自慢であり家族であり、病院の宝です。毎日のハードワークには本当に頭が下がります。管理者となり、自分でも驚いたのですが、感謝の気持ちが自然と心の底から込み上げてきます。当院は徳洲会グループに入ったばかりの手漕ぎボートのような小さな舟ですが、地域の患者さんや医療従事者の方々の信頼を獲得できるよう、実直に一歩一歩、努力し、理念を共有する仲間と共に大海を目指して皆でオールを漕いでいます。
将来は循環器内科、心臓血管外科、消化器内科、外科を充実させ、地域医療を担う基幹病院となるのが私の夢です。5年後、10年後に、今回の「直言」を読み直した時、同じ姿勢であり続けたい。どうぞ、これからも伸びしろの大きい当院を何卒よろしくお願いいたします。
皆で頑張りましょう。