徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

白根徳洲会病院(山梨県) 院長
石川 真(いしかわまこと)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

石川 真(いしかわまこと)

白根徳洲会病院(山梨県) 院長

2024年(令和6年)03月11日 月曜日 徳洲新聞 NO.1431

研修医は可能性を阻む壁を乗り越える
複眼的思考力もち挑戦する心忘れずに
そして自信と誇りを胸に人生を歩んでいこう

学生時代は何でも対応できる医者を目指そう!と考える一学生でした。手術実習での出来事。消化器外科の先生が血管を傷付け、「血管外科を呼べ」と額に汗かき、狼狽するのを目にした瞬間、「私の目指す道は心臓血管外科だ」と決意しました。卒後、胸部外科、腹部外科の統合外科である第一外科に入局し、医師人生がスタート。学位研究、心臓血管外科を専攻し卒後14年目、私の心は決められたレールの上を、ただ走るのを許しませんでした。学生時代の思いが頭をもたげ始めたのです。目指すは総合外科!と大学医局を退局後、徳洲会に入職しました。

医学の基本となる大切な哲学 総合診療を置き去りにしない

私は職員に働く意義、働く目的を絶えず問うています。それぞれの価値観に根差した問題ですが、「労働は自己実現への道であり、働く様は人格の延長である」と。人生に逆境や試練は付きもの。どんな態度で向き合うかによって、人生は大きく左右されます。逆境や試練には気付きや学びがあり、笑顔と感謝で向き合うことが大切。今日一日を全力で頑張りましょう。新入職員に「君たちの心は躍動している?」、「人の喜び、悲しみを考えて」と問いかけます。病気の前に人を理解する、取り巻く社会を理解することが重要です。初心を忘れず、感動する心を持ち続けて懸命に生きてください。君たちの目標を達成する延長線上に、病院の目指すところがあるのです。

風光明媚な山梨に研修に来た思い出に、一緒に登山をすることを考えました。窓の外には富士山、北岳など3,000m峰が連なっています。登山は苦しいけど、止められません。人生に通じる教えがあるからです。登りは振り返る余裕もなく、ひたすら山頂を目指します。そこには成長の喜びがあります。下山は思索と回想の時、成熟の喜びを味わえます。道に迷ったら、沢に降りず、しんどくても、また尾根に向かって登り、視野の開けるところで方向性を決めます。これは人生にも当てはまります。道に迷ったら、迷わず険しい道を選択するべきです。君たちは急な上り坂が始まったばかり。明日への扉を共に開けましょう、きっと広い視界が広がるはずです。 

現代社会では、究極の一番を目指す激烈な闘いの後に、勝ち組、負け組をあぶり出します。勝ち抜く戦略として、各領域の専門性を徹底的に先鋭化させるシステムと気概が欠かせません。それは医療の世界も同様で、先進医療など、耳に心地良い言葉が心をくすぐります。そこには離島・へき地で行われている高齢者医療などが存在する余地はありません。しかし、あえて研修医には回り道といえども悠長な時間を提供したい。「君たちはナンバーワンの幻想への執着ゆえに、医学の基本となる大切な哲学、いわゆる総合診療を蚊帳の外に置き去りにしてはいけません。もっと、まったり行きましょう」。徳洲会には先端医療あり島嶼医療あり、やらねばならないことが多いのです。ナンバーワンも大切ですが、当院では意味をなしません。人間は生まれ、育ち熟し、やがて老いていきます。老いた顔の裏には、経験を積んだ心や魂が息づき、世の不条理に耐えて生きてきた影が潜んでいます。高齢者から学ぶことは多いのです。

研修医諸君、エモーショナルに生きること、それが私の定義する人間の幸福の本質です。喜び、怒り、哀しみ、楽しみを生き生きと経験できる主体であり続けることができれば、人生は結構、楽しく捨てたものではありません。組織への貢献に自ら高い目標を課すのも、飽くことを許さない予防策を講じるのも、挑戦し続ける決意をするのも、君たち自身です。君たちの将来は99%、自分自身の決意にかかっているのです。

グループと共に成長することこそ 患者さんを幸せに結び付けられる

最後に私の信念を残します。自己をしっかり見つめ、我々の目指す理念を通じて、君たちの目指す人生観を体現し、グループと共に成長すること、それこそが患者さんを幸せに結び付けることができます。なんと理想的な循環でしょうか。若さは可能性の泉。可能性を阻む壁を乗り越える複眼的思考力と、意志の力を身に付けてください。そして自信と誇りをもち、人生を生きてください。人生の待ち時間には限りがあります。若さは失いましたが、いまだ研修医から学び続ける院長からの激励です。皆で頑張りましょう。

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