直言
Chokugen
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直言 ~
山崎 誠治(やまざきせいじ)
札幌東徳洲会病院 院長
2023年(令和5年)11月13日 月曜日 徳洲新聞 NO.1415
10月1日付で、札幌東徳洲会病院の院長に就任いたしました。私は1993年に旭川医科大学を卒業し、循環器内科医を志しました。2年目の研修先として赴任したのが札幌東病院でした。ここで、数多くの急性冠症候群(ACS)のカテーテル治療を経験したことが、心臓カテーテル治療の道を極めようと思ったきっかけです。その後、北海道内で地方医療を経験した後、循環器カテーテル治療を学ぶためには、多くの症例を経験することが必要と考え、96年に札幌東病院に再就職し、循環器内科一筋で診療してきました。
その間、当院循環器内科でのカテーテル検査・治療件数は、地方都市ながら全国でもトップクラスを維持してきました。心臓血管センター(現・循環器センター)を立ち上げ、2008年に湘南鎌倉総合病院(神奈川県)心臓センター長の齋藤滋先生を当院センター長(湘南鎌倉病院と兼務)に招聘し、心臓血管外科や多職種を含めたハートチームを結成しました。齋藤先生と出会い、患者さんを救うために世界を飛び回っている姿に大いに感銘を受け、意を強くしました。循環器領域のカテーテル治療の進歩は目覚ましく、最新の機器を取り入れ、技術を習得することに力を注ぎ、臨床研究や治験にも積極的に参加してきました。
また、北海道は広大で、地方への平等で十分な医療の提供が課題となっています。そこで、当院循環器内科ではモービルCCU(冠動脈疾患集中治療室を備えた特殊車両)を導入し、遠方の患者さんの救命にあたっています。
循環器救急の患者さんは24時間いつ発生するかわかりませんし、治療は一刻を争うため、体力・精神力を維持しておかなければなりません。このため、齋藤先生に触発されて始めたロードバイクが一役買っています。
夏は郊外をツーリングし、冬は室内でローラーを使用して、ほぼ毎日トレーニングしています。おかげで体力・精神力ともに鍛えられ、仕事上でも衰えを感じることはありません。プレイングマネジャーとして引き続き循環器内科医としても現場で仕事を続けていきます。
さて、27年間、循環器内科一筋の私が、地方中枢都市の中核病院院長となり、今後の病院のあり方を考える立場になりました。
院長を拝命した時に、まず頭に思い浮かんだのは、徳洲会グループの創設者である徳田虎雄・名誉理事長の「命を懸けて、ひとつの目標をやり遂げれば、それは死線を一回越えたことになる」という言葉でした。これは、まさに私の座右の銘である作家の三島由紀夫の名言「人は最期の一念によって生を引く」に重なりました。
「“絶対に断らない医療”を実行する病院にする」と覚悟を決めた瞬間です。
まず、自ら救急外来(ER)を含めた現場に出向き、受け入れ調整にあたりました。また、現場で働く多くの職員から直に意見を聞き、迅速に課題を解決するようにしました。力を尽くしてくれている職員には感謝の言葉を忘れません。その結果、救急受け入れ件数は倍増しました。結果は自ずとついてくる――すべての職員は徳洲会の理念を共有する同志と確信しました。
今後は、この断らない医療を持続可能なものとするため、人材の確保にも力を入れ、ポストERを見据えて、各診療科のさらなる充実を図ります。
職員個人の使命感と責務だけに頼っていては、健全で持続可能な病院運営には限界がきます。モチベーションを維持し、働いている職員が満足して幸せであれば、自ずと病院は活気に溢れ、人が集まる病院になる――それがひいては、病院の運営を持続可能なものとし、良質な人材を確保して、最新の医療の導入が可能となり、さらに患者さんを救うことにつながっていくのです。
これからは多様性の時代です。国際化も相まって、患者さんも疾患も、働く職員も多様化していくことでしょう。ダイバーシティ・マネジメント(多様性を認め合うことで、さまざまな人材の能力を最大限生かし、組織の発展に役立てる手法)の手腕が問われます。
地域や患者さんの要望に応える、また全職員の期待に応えるリーダーでありたい――そう願うと、不思議と力が湧いてきます。志をひとつにする職員の皆さん、皆で頑張りましょう。