直言
Chokugen
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直言 ~
木戸岡 実(きどおかみのる)
六地蔵総合病院(京都府) 院長
2023年(令和5年)10月16日 月曜日 徳洲新聞 NO.1411
私が医師を目指したのは、高校時代に左鎖骨骨折の手術を受けた経験からです。大学は高校時代の担任の勧めもあり、地元の滋賀医科大学に進学しました。新設医大の1期生で先輩のいないなか、ラグビー部も創設しました。医局は脳神経外科に入局し、医局人事により30歳で京都府宇治市の病院に赴任しました。宇治徳洲会病院のライバル病院です。ともに400床規模で競合していました。末吉敦院長とは、その頃からのご縁です。大学の脳神経外科では脳虚血について博士論文を書き、赴任してからは「脳卒中、命」と脳卒中治療に専念しつつも、サブスペシャリティーとして脊髄外科専門医を取得しました。大学関連施設として手術数トップを目指し、京都府で5番目ながら脳卒中センター「ストロークケアユニット」(SCU)を開設しました。京都府南部の患者さんは京都市内の大病院への志向が強く、何とか地域で医療を完結できないかと、選ばれる病院になる努力をしました。宇治病院も同様の思いだったと推察します。
副院長職を長年務め病院管理者を目指していましたが、定年を迎えることとなりました。ちょうどその頃、末吉院長から新規リハビリテーション病院建築のお話があり、昨年4月に宇治病院リハビリ科部長として採用していただきました。リハビリ病院建設は建築費高騰で頓挫しておりますが、昨年11月に徳洲会グループ入りした六地蔵総合病院で、コロナ病棟として運用していた回復期リハビリ病棟の再開があり、リハビリ科医が不在ということで、今年4月に同院院長を拝命しました。
当院は199床のケアミックス病院(急性期101床、回復期リハビリ病棟60床、地域包括ケア病棟38床)です。着任以来、「救急を断らない、病床を使い切る」をモットーに、全職員の協力の下、毎月、目標を達成できれば、ご褒美と称して和菓子や洋菓子を全職員に配布し、好評です。一方、大学医局派遣の当直医は突然撤退となり、常勤医3人が退職しました。とくに看板診療科の整形外科の常勤医ゼロは大打撃です。宇治病院とのカルテ閲覧により、同院の整形外科医に治療方針の示唆をいただいての診療を検討中です。また、私と副院長が専門とする脳神経外科を新たな看板診療科にできないか模索しています。この間、宇治病院から4人の医師を派遣いただき、さらに3人の医師補充も予定され、心強い限りです。救急総合診療科医や救急救命士、看護師、リハビリテーションセラピスト、救急車の応援も大変感謝しています。
当院は築41年で老朽化が進み、病棟改修を9月末まで行っていました。今後、良好な立地を生かし、健診センター開設や外来部門拡充を計画しています。宇治病院と補完的に役割を果たし、地域医療に貢献したい考えです。具体的には高度救急医療を宇治病院で、かかりつけ医的な役割を当院で担い、宇治病院の亜急性期以降の受け皿としても機能していきます。10月に4番目の病棟開設に至りましたが、目下、看護師不足で、168床の運営です。法人の変更や救急の積極的な受け入れに付いていけないと、退職が続いています。職場環境の改善に取り組み、今後、看護師の採用促進に向け、求人活動を強化し、早急に199床が使えるように努めます。
私は、つねに患者さんや地域が求めている医療は何なのか、それにどう病院が応えるかが重要だと考えています。自分の家族だったら、どう対応するのか。急な受診が必要だったら、救急車を呼ぶでしょうし、時間外でも受診せざるを得ない状況もあります。やるべき検査はその日にやります。そもそも検査の予約とは患者さんのためなのでしょうか。病院の都合もあるのではないでしょうか。要望があれば、順次検査していけば良いのではないでしょうか。入院が必要な時は、その日に入院を依頼します。つねに受け入れを想定した病床管理を行うべきです。東上震一理事長はよく「当たり前のことを当たり前にする」と言われます。すべての患者さんにそうあるべきです。そうした需要に応じるための体制づくりに、院長として今後とも尽力したいと思います。自分が患者になったら、どんな医療を受けたいか、どんな病院で、どんな職員に接してほしいか――つねに考えながら、皆で頑張りましょう。