徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

鹿児島徳洲会病院 院長
保坂 征司(ほさかせいじ)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

保坂 征司(ほさかせいじ)

鹿児島徳洲会病院 院長

2023年(令和5年)09月19日 火曜日 徳洲新聞 NO.1407

量的・質的に提供できる医療充実へ
地域の方々に選ばれる病院を目指す
自身の“地の利”生かし医師確保推進

4年間過ごした宇和島徳洲会病院(愛媛県)を離れ、この4月に鹿児島徳洲会病院へ異動しました。当院は旧病院から直線距離で8㎞離れた谷山地区に移転し、1年9カ月が経過しました。鹿児島市の南部に位置し、この地域には救急応需病院が限られ、需要が高かった背景もあり、救急搬送件数は旧病院の約3倍、年間2,500件に達しています。病院としてのhardとsoftは、ほぼ整っており、ケアミックス型病院ではあるものの、大規模病院となった当院の今後は、経営的な面も含め、より急性期医療を充実させなければならないと実感しています。救急搬送件数が増えた一方で、当院の課題として①外来患者数が少ないこと、②当院で完結できるsoft面での医療資源が不足していること――が挙げられます。まだまだ地域での認知度が低いことを実感し、地域住民の方々や近隣の診療所の先生方に当院を知っていただくための取り組みや、当院へ通いやすい環境の整備を行っています。また、九州生まれ九州育ち、大学卒業以降も、ほぼ九州で過ごした私の多少の“地の利”を生かしつつ、現在1人科の医師の充実や、新たな診療科開設に向けての医師確保も順調に進んでいます。

鹿児島には頑固・不言実行など男性気質を指す「薩摩隼人」、優しくて気立てが良い女性を指す「薩摩おごじょ」という言葉があります。8月以降、新型コロナ感染症のクラスター(感染者集団)が連続して発生しているなかでも、皆で協力して入院患者数を大きく減らすことなく、前向きな病棟運営を実行し、患者さんから退院時に「皆さん、よくしてくれました。ありがとうございます」という言葉をよく耳にしました。「これが薩摩気質か!」と思いつつ、職員の優しさ・勤勉さに感謝しています。

より離島医療に貢献するため 診療科の拡充やシステム構築

話は変わりますが、私が好きな言葉のひとつに、母校である福岡県立明善高等学校の校訓、「克己・盡力・楽天」があります。己に打ち克ち(克己)ひたすらなる努力(盡力)の果てに、その結果は天運に委ねようとする安心立命の平らかなる心境(楽天)を意味しています。とくに楽天という言葉が、校訓に謳われているところが、私は気に入っています。鹿児島県は「道は天地自然の未知なる故、講学の道は敬天愛人を目的とし、身を修する克己をもって終始せよ」と唱えた西郷隆盛公や、私がいつも意識している言葉、「『人間として正しいことなのか、正しくないことなのか』、『善いことなのか、悪いことなのか』ということを基準として物事を判断している」と語った京セラ創業者の稲盛和夫氏を輩出した地でもあります。私がこれまで意識してきた言葉や、考えを語った先達が生まれた鹿児島に、私が来たことも何かの縁だと思い、自分自身の内面の鍛錬を怠ることなく、当院の発展に寄与したいと考えています。

最近の当院での出来事として、屋久島で発生した緊急外科手術症例を当院近くの港にあるランデブーポイントまでヘリ搬送し、緊急手術を行うという経験をしました。山本晃司・屋久島徳洲会病院院長と連携を密にし、同院の電子カルテも当院で閲覧可能にするなどグループ病院のメリットを最大限に生かしました。待機的手術は可能な範囲で当院外科チームが屋久島病院で行い、屋久島での手術が困難な症例は、最近では当院へ紹介していただき手術を行うシステムが構築されつつあります。グループ内で完結できる医療が少しでも進んでいることを嬉しく思います。さらに多くの診療科で鹿児島県の離島医療に貢献できるよう、当院の充実、システムの構築を図っていきます。

基幹型臨床研修病院の再取得 院内活性化も視野にあと一歩

歴史的背景が根強く残る鹿児島県特有の事情はあるものの、当院が今行うべきことは、量的・質的に提供できる医療を充実させ、地域の方々に選ばれる病院となることに尽きます。そして、基幹型臨床研修病院の再取得もあと少しで手の届くところまできています。院内の活性化のためにも、ぜひ早期の取得を目指したいと考えます。

9月現在でも新型コロナの院内クラスターが発生している状況ではありますが、10月からはコロナ病棟を廃止し、病棟再編を行います。当院のみならず、各徳洲会病院はそれぞれ対応に追われていることかと思いますが、皆で頑張りましょう。

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