徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

名古屋徳洲会総合病院 院長
加藤 千雄(かとうかずお)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

加藤 千雄(かとうかずお)

名古屋徳洲会総合病院 院長

2023年(令和5年)08月07日 月曜日 徳洲新聞 NO.1401

ヒトは力を合わせ仲良く過ごす遺伝子もつ
一人で生きるようプログラムされていない
規律正しく協力し合いながら仕事進め効率アップ

“皆で頑張りましょう”

毎週、このフレーズを決まった時間に朗読するようになったのは、副院長を拝命した今年1月からです。それまでは、ただ循環器内科部長として、外来と病棟、またアブレーション治療を管理しながら所見をまとめ、自分の論文作成や若手の論文指導に時間を費やすことが日課でした。それが、この4月に院長職を拝命、まさか全国に4万人ほどいる職員が目をとおす「直言」を結ぶこの一節を、書くことになるとは夢にも思っていませんでした。

私は1985年、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)を卒業後、名古屋第二赤十字病院(現・日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院)で研修、循環器内科スタッフとなった3年目に、有床診療所を経営していた父を亡くしました。第二日赤病院は東海地方で代表的な臨床不整脈専門病院のひとつで、天職を得たものと、勉強を始めた矢先でした。結局、大学に帰局し大学院生になり、医局から亡き父のクリニックへの応援を頼みつつ、日赤でも非常勤として循環器カテーテル業務や当直などで雇っていただき、クリニックの院長としても働く“三足の草鞋”を履く生活が始まりました。たまたま、その頃、カテーテルアブレーションが国内に導入され、教授から指名を受け、国内最初の治験施設のひとつとして施術させていただく機会にも恵まれ、その草鞋を約20年履き続けることとなりました。しかし、クリニックの借金を完済したことをきっかけに一大決心し、クリニックを閉じ、2014年、縁あって当院に入職させていただきました。

カテーテルアブレーションは 「伸びしろ」大きな医療技術

不整脈の根治を目指すカテーテルアブレーションは、1992年に国内で治験が始まりました。本法は、心臓の中にある不整脈の発生源となる異常部位に、電極カテーテルを運び、高周波電流を流すことにより、その局所(心筋組織)を焼灼し根治を目指す非薬物療法です。それまで開胸して異常部位を冷凍凝固や直接切除するなどし、治療してきた不整脈外科に比し、侵襲度や正確性で、大きなアドバンテージを得ることができるようになりました。何より心停止下で異常部位を探す開胸下手術に比し、実際に心拍動下で不整脈を誘発しながら治療する本法により、当然ながら正確性で開胸手術に比べるまでもなく、成績が大きく向上しました。本法の有用性や安全性が認められ、肝臓への治療では「ラジオ波焼灼」と称され<同じなのに、なんでわざわざ日本語に訳すのか理解できませんが──後出しだから?(笑)>、全く同様の治療法が腹部領域でも応用されるようになっていることからも、その効果を伺い知ることができます。

当初は一部の不整脈にしか適応されませんでしたが、98年に心房細動に対する有効性が示され、対象症例が飛躍的に増えることとなり、技術の進歩も相まって、現在、本邦では年間10万例を超える症例が治療されています。また、費用対効果も優れていることから、手技点数も保険収載後に減点されることなく現在に至っている「伸びしろ」が大きな医療技術のひとつです。

心臓が効率よく血液を送り出す 私たちの職場環境にも相通ずる

心臓が効率よく血液を全身に送り出すためには、整った脈で規則正しく、かつ心臓の各部位が協調して収縮する必要があります。

ふと考えると、私たちの職場環境にも相通じるものがあります。すべての物事には調和、リズムが必要なように、私たちの職場で、皆が規律正しく、仲良く、協力し合いながら仕事を進めることは、その効率を高めるために非常に重要です。

心房細動を含め、いくつかの不整脈には、遺伝子変異が関わっていることが知られています。自分自身の協調性について振り返ると、先頃のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)や東京オリンピックなど、日頃は職場や学校、生活環境や考え方も全く異なる人たちが、皆、同じ方向を向いて応援し、素晴らしい成果を上げることができました。やっぱりヒトは皆で力を合わせ、仲良く過ごしていく遺伝子をもっているのだと、あらためて思い知りました。ヒトは一人で生きていくようプログラムされていません。皆で仲良く笑顔で過ごすことを是としているはずです。そんな遺伝子を最大限活用することは、極めて重要です。

皆で頑張りましょう。

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