直言
Chokugen
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直言 ~
満元 洋二郎(みつもとようじろう)
医療法人徳洲会 常務理事 名瀬徳洲会病院(鹿児島県) 院長
2023年(令和5年)04月17日 月曜日 徳洲新聞 NO.1385
徳洲会の“生命だけは平等だ”の理念に共感し、郷里の奄美大島にある瀬戸内徳洲会病院に2003年4月に入職、単なる離島医療ではなくスタンダードな医療を行い、あっても困らない病院から“なくてはならない病院”への脱却を目指しました。離島・へき地医療に携わる者には救急患者さんを断らないのは当たり前のことです。スタッフが少なく専門外でも医師である以上、最後の砦という現実からは逃げられません。その状況で何が最善か、つねに考え、最善の医療には最新医療機器が必要だと思い至りました。
入職2カ月後に徳田虎雄理事長(現・名誉理事長)とお会いする機会があり、私が「当院はお金もないし実績もありません。しかし、やる気だけはあります。投資してください」とお願いすると、「必要な物を挙げて報告しろ」とひと言。数億円もの投資をいとも簡単に了承されたのです。私には一世一代の大勝負でしたが、徳田先生には些細なことだったのでしょう。懐の深さに完敗しました。02年12月の入職前の面談で初めて先生にお会いした時、まず驚かされたことは、その風貌です。ボサボサ頭にヨレヨレの背広、履きつぶした靴。しかし、眼光の鋭さは驚異でした。そして、その片言隻句は私の心に深く沁み込み感動を覚えました。今思えば“好悪、損得、美醜、ひいては物事の善悪までも超越した存在”に畏怖したのかもしれません。
陽明学に知行合一という言葉があります。真の知識とするには、実際に行い実践による裏付けが必要という意味です。“離島・へき地医療”というお題目だけではだめです。生かさず殺さずでは現場の人間は疲れてしまいます。元気がないと怠惰になり、自分を責めるのではなく、他人や世間を責めます。やはり言を成すこと、つまり誠実なことが大事です。誠実な人の言葉しか信じられません。信じられないと力が出なくなります。リーダーが高い山を目指し先頭に立って登ると、期待が大きくなります。厳しい試練の先にある景色を見たくなります。誠実なリーダーがいないと組織はだめになります。番頭がリーダーではいけないのです。
名瀬病院はケアミックス病院です。私が総長時代、医療・介護・福祉の連携を実践し入退院調整を地域医療連携室で行いました。そして離島病院では治療に限界があるため早期発見・治療、予防医療を旨としました。これを基本方針として今後も拡充します。私は徳洲会入職以来、瀬戸内病院院長、名瀬病院院長、東京西徳洲会病院副院長、喜界徳洲会病院院長、宇検診療所所長、加計呂麻島診療所所長などを経験しました。素行自得(位に素して行えば自らを得る)というように、それぞれの位に応じ、やるべきことがいっぱいで、鍛錬になりました。22年5月に安富祖久明・最高顧問(当時は理事長)から18年ぶりに名瀬病院院長に、同年7月に東上震一理事長から5年ぶりに常務理事に任命され、還暦を過ぎても試練を与えてくれる先生方に感謝しています。
名瀬病院は“後進が夢をもてる奄美群島の基幹病院”を目指します。奄美の悲願である心臓外科の設置、ロボット手術の導入、病院の新築移転が目標です。当院では新たに2人の副院長任命を承認いただきました。ひとりは平島修・内科部長です。当院は先端的な医療を目指しますが、やはり根幹は総合診療です。当院に根差してグループの総合診療科の土台を築いてもらいたいです。兵庫医科大学臨床疫学の森本剛教授と連携し、臨床論文の執筆をはじめ希望すれば博士号を取得できる環境もあります。もうひとりは小田切幸平・産婦人科部長です。離島の中核となる周産期センターを目指してほしいからです。子どもの生まれないところに未来はありません。目標をもって頑張ってもらいたいです。
今後も徳田先生が提唱する「ヘルシーリゾートアイランド構想」の実現に努めます。全国各地の医療と福祉を必要とする方だけでなく、健康な方にも世界自然遺産の奄美群島で心身を癒やしていただくことは素晴らしいと考えます。人口減・高齢化の最先端を走る奄美で今後の日本の医療ビジネスモデルを構築し、世界一の島々を目指したいです。奄美は楽しいです。一緒に働きませんか? 皆で頑張りましょう。