徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

医療法人徳洲会 常務理事
湘南鎌倉総合病院(神奈川県) 院長
小林 修三(こばやししゅうぞう)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

小林 修三(こばやししゅうぞう)

医療法人徳洲会 常務理事 湘南鎌倉総合病院(神奈川県) 院長

2023年(令和5年)03月20日 月曜日 徳洲新聞 NO.1381

徳洲会の存在意義と医療の本質を
創立50周年を機に今一度考えよう
他人が価値を置かないものに価値を置くのが鍵

今年は徳洲会創立50周年にあたります。戦後設立の民間企業を見た場合、徳洲会の従業員4万人弱は日本第2位であり、医業収益は民間第1位。病院数や病床数は国立病院機構、日赤、厚生連、済生会に次ぎ第5位です。一方、日本で100位以内に入る733床以上の病院は徳洲会にいまだありません。

しかし、こうした規模より、その「存在意義」が大切です。民間であるにもかかわらず、「いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療を受けられる社会を目指す」という壮大な目標を掲げ、わが国の離島・へき地医療から、さらに世界へ向かう医療支援の取り組みは職員全員の誇りです。東上震一理事長がアジア、アフリカなどの途上国の要人と話される時、度々「わが法人の存在意義は」という言葉を発せられます。皆さん、創立50周年を機に今一度、徳洲会の理念と存在意義を意識し、誇りをもって働きましょう。夏目漱石の『草枕』の一節にあるように、他人が価値を置かないものに価値を置くことこそ存在意義であり、成功の源泉です。

同時に、温故知新の言葉どおり、皆さんが当たり前だと思うことをどんどん改善していく機会にもしたい。チームとして大切なことは、つねに前向きで協調性を有し、明るく肯定的で努力を惜しまないことです。正しいと信ずることは、勇気をもって「正しい時」、「正しい言い方で」、「正しい人に対して」しっかり言うべきです。渋沢栄一の「これだけは譲れない」というものがないと、善は悪に負けます。おかしいと感じて異論を唱えると干され左遷される。そして上司の顔色を伺い忖度するのです。福島原発事故調査委員会委員長を務めた黒川清先生は、こうした「『規制の虜』となってはならない。グループシンクで、出る杭を打つような組織はやがて廃退する」と言っておられます。マインドセットされた忖度エリートは徳洲会に不要です。自分に「一流」がない人間は、猜疑心の塊となり曖昧にしてごまかすものです。

本質を貫き毎日一人でも 多くより良い医療を提供

救急の現場で目の前の患者さんを助けることは当たり前です。毎朝、医師やスタッフは日報を見て、昨日、自分たちが何をどうしたかを知ってほしい。数字だけではなく、その後、どう治療したのかも、もう一度考えましょう。救急患者さんには、さまざまな病気が隠れています。地域や家族背景に応じ、急性期から慢性期への医療まで考慮するべきです。外科医は一流の技をもち、内科医は病気の本態に迫らなければなりません。病気がなぜ起こるのか、なぜ進行するのか、目の前の患者さんから得た疑問や経験を生かし、可能なら臨床研究も行い、同じような多くの患者さんを救いたい。自分に厳しく、ごまかさず、安全第一で質の高い一流の医療を提供する努力をしましょう。院長や診療部長はチームを率いて学会からも注目される一流の集団をつくり上げなければなりません。チームリーダーは「仲良しグループ」をつくるのではなく、教育にも熱心であるべきです。「教えるとは希望を語ること、学ぶとは誠実を胸に刻むこと」と、フランスのルイ・アラゴンの詩『ストラスブール大学の歌』にあると聞きます。

私はせっかちで不器用です。大阪商人の子どもで、学者や医師の家系ではありません。大胆にして細心、決して小心であってはならぬと肝に銘じています。全てに好奇心をもって前へ進むことを心がけています。一人でも多くの目の前の患者さんを助ける行動こそが、不安を打ち消し、前へ進む勇気をもらえます。医療は目先の利益にこだわらず本質を貫くことが大切です。利益は後から必ず付いてきます。どんな困難にあっても本質を貫く覚悟です。

弱者を置き去りにせず 先端的な医療にも挑戦

都会の大病院は心臓手術や臓器移植、さらに立派な研究も行い、一流のスタッフが「大学病院よりここで働きたい」と言うような病院でありたいと願います。当院ではFirst-in-Human試験(ヒトに初めて投与する段階の治験)で一流の論文を発表し、医師主導の臨床研究や先進医療、特許取得などで成果も出しています。しかし、高齢者の穏やかなエンディング、子どもの医療、がん難民、精神科救急など弱者を置き去りにせず「Passion・Mission・Love」を合言葉に、「この病院へ来て良かった!」と言われる"やさしい病院”を目指します。

皆で頑張りましょう。

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