直言
Chokugen
Chokugen
直言 ~
中山 義博(なかやまよしひろ)
医療法人徳洲会 常務理事 大隅鹿屋病院(鹿児島県) 院長
2023年(令和5年)03月13日 月曜日 徳洲新聞 NO.1380
当院の院長を拝命し約7年になります。この間、さまざまなことが起こり、困難のあまり、くじけそうになったこともありましたが、周囲の協力もあり、何とか乗り越えてきました。院長として組織をまとめ、ひとつの方向に導くことがいかに大変か、勉強の毎日です。今回、常務理事に就任させていただいたことで、自院のみならず、グループ全体の成績の向上を考えていく責任を痛感している次第です。
当院は鹿児島県の大隅半島にある鹿屋市に1988年に設立されました。大隅半島は東京都と面積はほぼ同じなのですが、人口は20万人程度で、鉄道もなく、最近になりようやく高速道路が整備されたいわゆる“陸の孤島”です。鹿児島県の中心都市である鹿児島市まで約2時間もかかります。このようなへき地であるため、最大の問題点はマンパワー不足です。とくに医師不足は深刻で、当院は391床ですが、常勤医師は30人余りです。常勤医師の約半数が自院からの初期研修医上がりであるため、今年度の初期研修医入職者が0人であったことが、苦しい状況に拍車をかけています。
院長としての重要な仕事のひとつは医師対策だと考えています。院長になってから徳洲会以外からも、母校の佐賀大学を中心に医師をかき集めてきました。この時、一番の障害となるのは地域性です。大隅半島には、これといった産業や観光施設がなく、また教育機関が少ないため、子どもさんがいる多くの医師が着任を躊躇するのを嫌というほど見てきました。これは多くのへき地の徳洲会グループの院長先生方にも共通した悩みでしょう。医局のみでなく、薬剤部、検査部などもマンパワー不足で、グループからの派遣で何とか業務を遂行している状況です。派遣をいただいている病院の皆様には、この場を借りてお礼を申し上げます。
一方、比較的人材を集めやすい部門もあります。昨年の職員採用面接の時の出来事です。診療放射線技師2人の採用枠に4人の応募があり、この4人が優秀で採用2人を決めるのに本当に悩みました。その他、リハビリテーションや臨床工学技士も採用枠を超えた就職希望者が来てくれます。看護師も業者紹介に頼ることなく採用できています。このように、へき地でも枠を超え就職希望者が来てくれることは、ありがたい限りです。先日の九州ブロックセミナーで、ある院長先生が放射線科の専門学校がないため、放射線技師が集まりにくいと言っておられました。鹿屋市より人口が多い都市でも、条件によっては人材不足に陥る部門もあるようです。この時に思い出したのは、当院でたまたまですが、優秀な放射線技師の就職希望者4人のうち2人を不採用にしたということです。グループ内でさらに密に連携を取り合うことで、人材確保がより有効にできるのではないでしょうか。
当院は関連クリニックが吾平、高山と2カ所あります。日々連携を取り合っており、クリニックからは多くの患者紹介をいただき、当院からは特診など外来業務などに医師派遣を行っています。これにより、お互いの業績向上につながっています。また、当院の常勤医師8人をグループ内の6病院に派遣していますが、一方で心臓血管外科、内科などはグループから派遣をいただき、非常に助かっています。少ない常勤医師を派遣することは確かに苦しいところではありますが、許容範囲内であれば、自院の業績が下がるのも僅かな範囲で留めることが可能であります。何より出先の病院で患者さんや職員の皆さんが助かれば、大きな意味をもつと思われ、今後とも積極的な派遣を継続していきたいと考えています。
2024年には「医師の働き方改革」が本格的に始動します。その結果、医師数が少ない病院では時間外労働の制約により、業務に支障が出ることが容易に想像できます。この時に行うべきことは、業務量を減らすことではなく、業務の効率化ではないでしょうか。その一環として、グループ内派遣体制のさらなる活性化が必要ではないかと考えます。医師の派遣の際の移動時間を考慮すれば、ブロック内での派遣が理想的でしょうが、困難な場合はその枠を超えることも必要になってくると思われます。
皆で頑張りましょう。