徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

医療法人徳洲会 副理事長
名古屋徳洲会総合病院 総長
大橋 壯樹(おおはしたけき)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

大橋 壯樹(おおはしたけき)

医療法人徳洲会 副理事長 名古屋徳洲会総合病院 総長

2023年(令和5年)02月27日 月曜日 徳洲新聞 NO.1378

徳洲会は常識に捉われない発想で発展
知恵出しあい質の高い医療提供目指す
努力すれば到達の可能性ある高い目標設定は有益

年度末になり、それぞれの診療科、部署は来年度の目標を作成しているところと思われます。簡単には手が届かなくても、努力すれば到達する可能性のある目標値を設定することは、さまざまな点で有益に働きます。

たとえば、外科医にとって手術数の目標を高く設定することは、医療技術の向上につながります。多くの手術をすることで、外科チームも手術に慣れて手術時間が短縮し、より安全で精度の高い手術が可能になります。さらに多くの患者さんが病院に集まるとともに、研修を希望する優秀な若い医師、スタッフも集まり、外科チームの質向上も得られます。これはすべての診療科に当てはまり、多くの症例を経験させていただくことは医療技術の向上につながるのです。

医療技術、診療態度の向上が 質高める多様な相乗効果生む

日本には病院が多くあり、黙っていても手術が嫌というほどできるシステムにはなっていません。競争することで、さらに質の高い医療が望まれ、患者さんもその恩恵を受けるものと思われます。

より多くの手術を行うために我々は何をすべきか。ひとつは診療態度の向上です。先日、徳洲会1年次研修医中間研修会でのグループワークで気になることがありました。良い病院の条件として「他科へのコンサルトがしやすい」という意見が多く出たのです。ふだん、救急現場や病棟での受け持ち患者さんについて研修医が上級医にコンサルトする時に、問題があるのではと危惧しました。研修医からの紹介といえども大事な患者さんです。「ありがとう」と言って素早く対応し、丁寧に教えて診療するのは当然のこと。あの先生は嫌な顔をせずにすぐに親切に診てくれる、という評判が立てば、症例数が増えるのみならず、その先生のもとに多くの研修医が集まるはずです。院外からの紹介患者さん、救急要請の患者さんは、なおさら大事に対応しなければなりません。

また、地域の住民、医療機関からの知名度を上げなければ、手術数の増加は見込めません。医療講演を開催し、医療機関への訪問挨拶を行い、地域の学会、地方会に積極的に参加することも大切です。年報を読みやすい形で提供し、各種パンフレット、ホームページを充実させることも欠かせません。

当院では術後の患者さんの会を設け、定期的に刊行物を送り、年に1回、集会を行っています。患者さんからも喜ばれ、口コミとして知名度も上がります。医療機関を対象としたセミナーも年2回主催し、当院の診療内容を広く知っていただく良い機会としています。病院のブランドは、すでにあるところに近寄って頼るものではなく、自ら作り高めることも重要です。

医療技術の向上として、新しい診療、高度で低侵襲な治療にも積極的に取り組んでいかなければなりません。当院では、経皮的大動脈弁置換術(TAVI)、ダヴィンチ手術、経皮的僧帽弁クリップ術(マイトラクリップ)を導入することによって弁膜症手術数が伸びてきており、これらの手術手技にも慣れ、安定した成績が望めます。

このように医療技術、診療態度の向上は手術数の増加につながり、その結果、提供する医療の質を高めるさまざまな相乗効果が得られると信じています。手術室や器具など設備の充実と、医師をはじめ看護師、コメディカルなどスタッフの充実も必要不可欠です。

安心・安全な医療が大前提も 最善の医療目指し創意工夫を

もちろん、手術数を争うことばかりに固執するのは厳に慎むべきであり、逆効果です。患者さんやご家族に丁寧かつ誠実に説明し、手術適応基準、ガイドラインに沿って、無理のない手術を行うことが前提となるのは言うまでもありません。

離島・へき地など人口の少ない病院では、手術の絶対的な需要も少なく、手術数を増やして医療技術の向上を狙うという理論は通用しない場合もあるでしょう。しかし、その病院を受診する患者さんにも質の高い高度の医療を提供すべきであり、岸和田徳洲会病院消化器内科のように徳洲会グループで基幹病院との連携を行うことにより解決できると思われます。大きな目標を掲げ、常識に捉われない発想で発展してきた徳洲会が知恵を出しあい、いつでもどこでも誰でもが最善の医療を受けられる社会を目指さなければいけません。皆で頑張りましょう。

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