直言
Chokugen
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直言 ~
東上 震一(ひがしうえしんいち)
医療法人徳洲会 理事長 一般社団法人徳洲会 理事長
2023年(令和5年)01月30日 月曜日 徳洲新聞 NO.1374
徳洲会は1973年、大阪の地に設立され、今年で50周年を迎えました。徳田虎雄・名誉理事長がたった一人で始めた“徳洲会”という名の社会運動は、半世紀を経て日本最大の民間医療グループ(74病院を含む400余りの医療・介護系施設を擁し、総職員数は4万人弱)として結実し、“生命だけは平等だ”の不変の理念の下、今もなお拡大を続けています。
私たちの判断基準は弱きを助け、悪しきを挫くという極めて平易で単純明快なものです。弱きとは病気に苦しむ人、社会的弱者を意味し、悪しきとは弱いものいじめをする人(あるいは、そういう制度)です。私は徳洲会という“正義”を貫き通したいと考えています。徳田・名誉理事長は常々、医業収益の1%ぐらいは医療を待ち望む世界の人々のために使うべきだと話されていました。現在、徳洲会の総医業収益は5,000億円を優に超え、その1%は50億円超になります。まさに腹にこたえる支援です。200カ国に病院をつくり、世界の厚生省になるという目標は、一人の巨人の壮大な夢、希望、ロマンで終わらせるものではありません。徳洲会の存在価値を示す具体的な目標として捉えるべきものです。アジア、アフリカを中心に43カ国と結んでいる医療協力の覚書(MOU)に現実的な速度で実を付けていきたいと考えています。
私が理事長に就任してから新たに動き出している海外プロジェクトについて、進捗状況を報告します。
アフリカでは17カ国で徳洲会が寄贈した透析機器と、徳洲会病院(主に湘南鎌倉総合病院)で教育を受けたスタッフにより、透析センターが運営されています。そのなかのコンゴ民主共和国では、首都キンシャサの警察病院敷地内にある透析センターを拡大する形で、心臓血管疾患、消化器早期がん、腎不全などの治療に特化した100床規模の病院建設を進めています。また隣国のタンザニアでは首都ドドマにあるドドマ大学構内に透析センターを開設したのに加え、2018年からの徳洲会(湘南鎌倉病院)と東京女子医科大学との合同医療技術協力により、同大学敷地内にあるベンジャミン・ムカパ病院で、タンザニア人のみによる腎移植が始まっています。このプロジェクトを強化し、「腎移植センター」を付設するため、同大学や同院の幹部と協議をスタートしています。
アジアでは20年以上に及ぶ各国への医療協力の歴史があります(7カ国に透析機器などを寄贈)。そのなかのインドネシアとモンゴルについては、具体的な病院建設計画を協議中です。インドネシアには昨年9月に訪問し、首都ジャカルタにある国立循環器病センターのハラパンキタ(現地語で我が希望)病院でスタッフと老朽化した病棟の建て替えについて協議しました。同院は心臓手術が年間2,000件に達する非常にアクティビティの高い心臓専門病院です。とくに同院の主要スタッフと徳洲会医師との関係性は深く、齋藤滋・湘南鎌倉病院総長(心臓センター長)や横井良明・岸和田徳洲会病院顧問(心臓循環器センター長)の名を出され、親しげに握手を求められました。また病棟では同院に以前、手術留学していた徳洲会の若手心臓外科医のことを尋ねてくるスタッフもいました。病院再建支援を契機に、同院との関係をより密にし、スタッフ交流を拡大することはメリットがあると考えています。とくに心臓外科医にとっては手術留学のオプションが確保できます。保健相との面談では新築した病院に「ハラパンキタ・徳洲会心臓血管センター」という名称を掲示する許可もいただきました。
モンゴルには昨年8月と12月に訪問し、国立第三中央病院(心臓専門病院)に「徳洲会心臓血管センター」を設立するMOUを政府と締結し、大統領と面談しました。
今後、徳洲会の国際協力を現実的なスピードで一歩一歩、着実に進めていきたいと考えています。国際協力は離島・へき地病院を支える努力と同じく、徳洲会の存在価値を世界に示すプロジェクトです。「人は何のために生まれ、生きているのか。何をしたら死ねるか」――激しく問い詰める徳田・名誉理事長にこたえていくつもりです。
皆で頑張りましょう。