徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

医療法人徳洲会 専務理事
山形徳洲会病院 院長
笹川 五十次(ささがわいそじ)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

笹川 五十次(ささがわいそじ)

医療法人徳洲会 専務理事 山形徳洲会病院 院長

2022年(令和4年)11月07日 月曜日 徳洲新聞 NO.1363

人生にはいくつかの分岐点があるものの
今日一日を真剣に生きていくことが大事
各々の役割を真摯に果たすことで未来が拓ける

私が徳田虎雄理事長(現・名誉理事長)と初めてお会いしたのは、2004年6月26日でした。海外からの多くの面会者がいらっしゃるなかで、理事長は私に隣の席に座るようにと指示されました。面会の方々との会話から、徳洲会がどのような理念で、日本にとどまらず、世界中の弱い立場の患者さんに医療を提供しようとしているかを教示していただきました。その時、理事長が唱えた“生命だけは平等だ” の理念は、医療従事者として当たり前のものだと素直に受け入れることができました。それまでの私は、大学病院で論文掲載を目的とした自分のための医療になることがしばしばあるなど、大学での活動に執着していました。しかしながら、実力が十分に備わっておらず、教授交代とともに居場所がなくなっていました。理事長とお会いしたことで、今までの自分を恥じ、自己本位な医療人生を正して、患者さんの目線に立ち、患者さん中心の医療を実践しようと決断し、同年9月1日、当院の開設日に入職しました。行き場のなかった私は、徳洲会グループに拾われ、救われたのです。

超・大規模病院からの協力 徳洲会の社会的な評価にも

開設当初より医師、看護師が不足し(現在も同様ですが……)、莫大な赤字を垂れ流し続け、東北ブロックのお荷物病院となり、グループから赤字の補塡を受けながら、苦しい日々を送っていました。私は08年2月1日に院長職を拝命しました。この地域で不足していた終末期の腎不全やスポーツ医学に注力したところ、職員たちの献身的な働きもあり、09年にようやく経営が安定しました。

当院のような地方の中小規模病院では、人員や医療技術の不足のため、疾患によっては患者さんの治療を完遂できず、悔しい思いをすることがあります。グループ病院からの専門技術をもったスタッフの協力は、大変ありがたく、その技術を目の当たりにすることで職員のモチベーションも高まります。現在、試験運用しているホンダジェットを高度医療提供のための移動手段として活用することは極めて画期的なことです。とはいえ、通常の業務だけでも多忙な超規模・大規模病院から貴重なスタッフを出していただくことを、いつも心苦しく思っております。思うようにはいきませんが、受け入れる側もスタッフ確保のための努力をしてまいります。しかしながら、継続的な協力をいただければ、患者さんに、より満足していただける病院になることができます。徳洲会グループに対する社会的評価も高まるものと思います。

地方病院での試行錯誤が今後グループ病院運営のヒントに

地方の病院として高齢化も大きな課題です。人口に占める65歳以上の割合を高齢化率と言いますが、山形県では05年に25・5%であったのが、20年には33・8%にまで増加し、40年には総人口の減少もあり、41%まで増加すると推定されています。高齢の患者さんは多臓器に疾患を認め、急性疾患からの回復が遅延します。社会的要因や環境の変化で症状も変動します。このため長期の介助を要することから、福祉との連携が重要になります。終末期医療のあり方や死をどのように迎えるかも問題となります。従来の疾患を治す医療とともに、看取る医療も考慮する必要があります。今まで以上に病院・介護・福祉の間の緊密な連携により、情報を共有し、健やかな生活が送れるように注力しなければいけません。ちなみに最も高齢化率の低い東京都でも、20年の23%から40年に27・8%に増加すると推計されています。地方の病院の現状は、近未来の日本の姿です。地方では先進医療は十分ではありませんが、時代を先取りした医療を実践していると言えます。地方病院の試行錯誤が、今後のグループ病院の運営のヒントとなるかもしれません。

徳田・名誉理事長の著書『生命だけは平等だ。』の中に「過去はすべて正しかったと割り切って、これからの人生に、真剣に打ち込もう」という言葉がありますが、私はこの言葉にいつも勇気付けられています。人生には、いくつかの分岐点があり、その時の選択が正しかったかどうかは誰にもわかりません。過去にこだわらず、今日一日を真剣に生きていくことが大事です。この言葉は個人だけでなく、組織にも当てはまります。それぞれの役割を日々真摯に果たしていくことで未来が拓けます。

皆で頑張りましょう。

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