直言
Chokugen
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直言 ~
大橋 壯樹(おおはしたけき)
医療法人徳洲会 副理事長 名古屋徳洲会総合病院 総長
2022年(令和4年)10月31日 月曜日 徳洲新聞 NO.1362
10月6日、神奈川県で日本胸部外科学会に合わせ第7回徳洲会心臓血管外科部会が開かれました。東上震一理事長を筆頭に過去最多の30人余りの心臓血管外科医が集まり、中村喜次部会長(千葉西総合病院)の司会の下、不整脈外科の権威である新田隆先生(羽生総合病院)の講演と各病院からの演題発表がありました。その後、電子カルテから直接引き出され、NCD(手術症例データベース)と連動した手術台帳や、手術動画などをネットで共有できるプラットフォームの「サミット」、徳洲会の膨大な手術データを利用した学術研究について話し合いました。入職した理由もさまざまで、大学や経歴も違い、将来の目標も異なる心臓血管外科医が一堂に会すると、親しみが増し徳洲会の一体感を感じました。
徳洲会には約30病院に心臓血管外科があります。病院の規模や地域によって、手術の内容、手術数は異なりますが、どの病院でも必要とされ、有用な治療を行っています。徳洲会の心臓血管外科医は研修医育ちの人から、徳洲会外の病院から来られ活躍されている人まで、多士済々です。また徳洲会で育ち、その後、徳洲会外の病院でさらに活躍されている人も多くいます。権威ある学会や論文での発表も多々あり、徳洲会は手術数のみならず、さまざまな点で日本の心臓血管外科に大きな影響を与えています。今回、国際的に最も評価されている浅井徹先生が、順天堂大学から湘南鎌倉総合病院に来ていただけることになり、徳洲会の心臓血管外科のさらなる発展が見込めます。
近年、心臓血管外科を取り巻く状況は変わりつつあります。ステントグラフト内挿術、TAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)からMICS(低侵襲心臓手術)、ロボット手術、補助人工心臓と、複雑で多岐にわたり、循環器内科との境界もなくなってきました。今や心臓血管外科医が、すべての手術をこなす時代ではなくなったのです。また高度先進手術も認定施設要件が厳格化し、集約化が現実のものとなりつつあります。こうしたなか、徳洲会グループで心臓血管外科をどのように発展させるか、私も手探りの状態です。全国の徳洲会基幹病院の心臓血管外科を充実、発展させることが、地域の患者さんのためにも大事です。
そのためには都市部にある超規模、大規模病院が先端的で低侵襲な手術を積極的に導入し、多くの若い外科医を訓練して、次代を担う心臓血管外科医を育て、徳洲会内外で活躍する人材を輩出しなければなりません。規模の小さい病院、地方の病院でも心臓血管外科治療が必要なのは言うまでもなく、多士済々の徳洲会の心臓血管外科医が、そのような病院に出張し、手術に参加する体制を構築する必要があります。これは離島・へき地医療の拡充を目指す徳洲会の理念にも合致します。
当院は大垣徳洲会病院、仙台徳洲会病院、榛原総合病院などの手術に参加し、それぞれ横のつながりにより医療の質の向上を目指しています。大垣病院からはTAVI、ロボット手術の適応患者さんを当院に転送していただき手術を行っています。
このような出張ローテーションを可能にするには、心臓血管外科の診療体制が重要となります。入院診療は主治医制ではなく、グループ制にし、すべての医師が入院患者さんを把握し手術内容を理解することで、誰でも容易に出張ローテーションができるのみならず、休暇取得も可能になります。またサミットを利用し当院で行った手術動画をスマホやパソコンでシェアして、今後の手術に生かしています。学会発表もサミットでシェアしています。サミットの内容は誰でも閲覧できますが、視聴者を徳洲会あるいは院内に限定することもできます。また緊急手術、他院への手術参加などの連絡事項はChatisというアプリで行っています。緊急手術や出張などで全員が一堂に集まることができないため、ネットを利用した診療、学術活動の共有は効率的で有用であり、診療体制の発展につながるはずです。
高度先進手術、低侵襲手術の恩恵を受けるのは、都市部の基幹病院を受診できる患者さんのみならず、離島・へき地でも容易に受けられる日が来るようにしなければなりません。
皆で頑張りましょう。