徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

中部徳洲会病院(沖縄県) 院長
大城 吉則(おおしろよしのり)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

大城 吉則(おおしろよしのり)

中部徳洲会病院(沖縄県) 院長

2022年(令和4年)06月27日 月曜日 徳洲新聞 NO.1344

ワークライフバランス取れた職場環境へ
皆の力で『医師の働き方改革』の実現を
何事も一致団結して取り組むのが徳洲会の矜持

第6波の新型コロナ感染者数が減少し一息つける状況となり、屋外でのマスク不要論、海外からの渡航者の制限緩和など、国はウィズコロナへの方針転換を模索しています。感染拡大時には静観されていた「医師の働き方改革」への要求もいよいよ本格化してくるものと考えます。

第二次世界大戦で壊滅した日本経済は、1950年代から70年代の高度成長を経て、80年代のバブル期には「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とまで称賛されました。一方、この経済成長を支えた勤勉な労働者は、海外からは「働きバチ」、「エコノミックアニマル」とも揶揄され、長時間労働にともなう過労死も社会問題となりました。このような背景から国は、2019年4月に働き方改革関連法を施行し、長時間労働、労働環境の改善に取り組み始めました。医療界でも1990年代後半から医師の長時間労働や過労に関連した突然死、自死などが相次いで表面化し、医師の働き方改革も急務とされました。

複数主治医制やタスクシフト 一層のチーム医療進化が必要

一方、我が国の医療は、医師の自己犠牲的な長時間労働で支えられていること、医師の需給の地域格差、国民の医療へのかかり方など多様な問題があります。さらに医師の診療業務は国民の健康・生命を守る高い公共性、診療の応召義務、医療の進歩に対応する知識と技術の向上を求められる特殊性など、働き方改革を進めていくうえで困難な課題が浮き彫りとなってきました。働き方改革関連法では、一般企業での時間外労働の上限は100時間/月、720時間/年とされていますが、医師に関しては100時間/月、1年間では一般医師が960時間(A水準)、地域の救急および高度医療などに従事する医師が1860時間(B水準)、初期研修医や専攻医など一定期間に集中的な技能向上を目指す医師が1860時間(C水準)と、通常よりも長い時間外労働が容認されました。医師の働き方改革は、大企業への施行(19年4月)から遅れること5年後の2024年4月施行です。

今年4月に伊波潔総長から医師の働き方改革の責任者のバトンを引き継ぐことになり、これまでの管理者研修講習会やインターネットから、関連資料を収集し、その歴史的背景と内容、施行までのタイムスケジュールを確認して、この改革の趣旨と国の本気度を再認識しました。医師の過重労働を軽減するためには、これまでの医師の業務の一部を他職種に委ねるタスクシフト、担当患者さんの状態によってオン/オフの切り替えが難しく、長時間労働の要因とされる主治医制から複数主治医制への移行、当直体制の見直し、女性医師の支援、若手医師の効率的な教育システムの構築などが提唱されています。

タスクシフトは当院でも医療クラークや薬剤師の活用、特定看護師の育成など着実に取り組んでいますが、この改革の主人公である肝心の医師は働き方改革に対する認識が低いのが実情です。働き方改革では個人に集中している負担を複数人に配分し、新たな雇用を生み出すワークシェアリングを行い、効率性と生産性を上げることが大きな目的です。医療でも過重労働となっている医師の負担を軽減するため、複数主治医制の導入、適切なタスクシフトによる一層のチーム医療の進化が必要です。心身共に健全な状態になって、初めて安心・安全、良質な医療が提供できることを我々医師も自覚する必要があります。

重要な第一歩は勤務状況把握 医師各自の出退勤時打刻が要

医師の働き方改革は待ったなしの状況です。各医療機関の取り組みが不十分と評価され、地域医療を担うB水準医療機関、教育機能として必要なC水準医療機関に承認されない場合、徳洲会グループの重要な役割である地域医療への貢献、若手医師の育成に多大な支障を来す可能性があることを理解しなければなりません。医師は、これまで労働時間管理がされていない職種と言われ、医師自身も就労時間に無関心でした。医師の働き方改革を進めるうえで最も重要な第一歩は、勤務状況の把握です。そのためにも医師各自の出退勤時の打刻が不可欠です。

何事にも一致団結して取り組むのが徳洲会グループの誇るべきところです。皆の力で医師の働き方改革を実現し、効率的な働き方、ワークライフバランスが整った魅力的な職場環境にするため、皆で頑張りましょう。

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