徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

館山病院(千葉県) 院長
竹内 信一(たけうちしんいち)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

竹内 信一(たけうちしんいち)

館山病院(千葉県) 院長

2022年(令和4年)05月16日 月曜日 徳洲新聞 NO.1338

地域に「なくてはならない病院」へ
高齢化見据えリハビリ核に医療展開
退院で終わりではなく在宅までお付き合い

館山病院は1891年(明治24年)、地域住民の方々の要望に応えて現在地に、安房(千葉県南部地域)出身の川名博夫医師が内科病院として開業し、市民病院的な立ち位置で医療を開始しました。その後、1923年(大正12年)の関東大震災によって、病棟や他の建造物のほとんどが崩壊しましたが、翌24年には現在の資生堂の支援を受け病院を再建、今年10月には創立131年を迎えます。当院は戦後から激動の昭和、平成の時代を経て、建て増しを繰り返し、現在の外観となっています。建物の老朽化が激しく、療養環境、職場環境ともに決して良いとは言えず、また、2011年3月の東日本大震災を経験したことから、病院の新築移転が全職員の悲願となっていました。

機動力を発揮できる ケアミックス病院へ

新病院の建設に思いが募るなか、17年11月、徳洲会グループの支援の下、海抜4mほどの現病院から直線距離で約1・5㎞、海抜10m地点にある国有地を落札(南海トラフ地震での館山市想定津波の高さは10m)、そこから新病院の設計、建設が始動しました。新病院の立地環境は、国道を挟んだ向かい側に安房消防本部、館山消防署、現在建設中の館山警察署があり、26年度には千葉県安房合同庁舎も移転予定で、いわば館山市の中心、東京都で言えば霞が関の官庁街といった所です。

新病院のコンセプトとしては「海と山のリゾートホスピタル」をキーワードに、豊かな自然を感じるホスピタリティと機動力のあるケアミックスの病院を実現するため、次の5つを掲げています。①「地域密着型」、「ケアミックス」病院として機動力を発揮できる病院、②リハビリテーションを核として「急性期・回復期・慢性期医療」の診療体制を整備。外科(整形外科、脳神経外科、泌尿器科)の手術対応を強化し、二次救急医療の信頼を構築、③災害時に対応できる病院、④病院と在宅医療、介護との関係強化を推進、⑤地域に愛され、地域になくてはならない病院――。

こうしたコンセプトの下、建物は鉄骨造5階建てで、館山湾からの風を受け流す曲面を生かしたデザインを採用し、人を優しく迎えるリゾートホテルのような外観を呈しています。許可病床208床に対して220床規模で設計し、手術室は現病院1室から4室に拡大、血管撮影室1室を新設、透析ベッドは10床から25床に増床、内視鏡室も1室から4室に拡大、1日滞在型の通所リハビリテーションを新設、救急搬送や感染者受け入れのための環境も整備しました。

安房地域全体の高齢化率は40%を超えています。高齢の方々の生活を考えると、退院で終わりではなく、病院が訪問看護や通所リハビリテーションにも積極的にかかわり、自宅での生活に戻っていただき、エンディングを迎えるまでのお付き合いをする――そのためにはリハビリテーションの重要性が、より一層増します。このため新病院はリハビリテーション重視の方針を打ち出し、全病棟フロアにリハビリスペースを設けました。さらに、療法士のアイデアで、5階には屋外運動場さながらのリハビリスカイウォークや、建物の外形に沿った幅約3m、1周250mのリハビリ用ロードを設置し、市街や遠くは富士山を眺めながら歩行訓練ができるように工夫を凝らしました。

また、食事は人生の中心にあり、健康生活の大切な要素で、とくに高齢の方々にとっては、嚥下機能の低下が健康悪化や嚥下性肺炎の発症に直結しかねません。そこで、口腔リハビリテーションを本格的に導入し、食べる力を改善しながら健康維持につなげることを目指します。

100床の老健施設併設 24年春に運営を開始予定

医療と介護の一体化を目指す当院は、在宅復帰を目指す要介護の方々を入所対象とする100床の介護老人保健施設(老健)を24年春に併設し、運営を開始する予定です。新型コロナウイルス感染症については、今後も医療が必要な感染者を積極的に受け入れていきます。

一方、新型コロナウイルスの流行により、自粛生活が長期化し、高齢の方々の体力低下が心配されます。それまで元気だった方々が、要介護手前の虚弱状態である“コロナフレイル”に陥る危険がありますので、このような高齢の方々に対するリハビリテーションにも積極的に関与したいと思っています。

皆で頑張りましょう。

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