徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

徳洲会感染管理部会 部会長
湘南鎌倉総合病院(神奈川県)感染対策室 部長
佐藤 守彦(さとうもりひこ)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

佐藤 守彦(さとうもりひこ)

徳洲会感染管理部会 部会長 湘南鎌倉総合病院(神奈川県)感染対策室 部長

2022年(令和4年)01月17日 月曜日 徳洲新聞 NO.1321

オミクロン株第6波への備えを万全に
油断せず基本的な感染対策の徹底を!
医療人として矜持をもち自らの行動を律する

世界各国で急速に新型コロナウイルス陽性者が増えています。

たとえば、フランスでは新型コロナウイルスの一日当たりの新規陽性者が11月上旬には約1万人でした。それが12月1日には約5万人となり、さらに年が明けた1月11日には約35万人となりました。万単位で急速に陽性者が増えたことに恐怖を覚えますが、流行の主流がデルタ株からオミクロン株に代わったことが大きな原因と思われます。

フランス以外の国々でも同様に急峻な増加曲線をたどり、年明けにはイタリアで一日当たり約21万人、英国では約20万人、米国では約141万人、アルゼンチンでは約10万人、インドでは約17万人、オーストラリアでは約11万人と、想像を絶するような感染状況となっています。

日本でも陽性者が一日当たり 数万人出ても不思議ではない

2021年11月24日、南アフリカ共和国は世界保健機関(WHO)に新しい変異ウイルスB.1.1.529系統を報告しました。26日、WHOはこの変異ウイルスを懸念される変異株(VOC)に指定し、ギリシア文字の15番目に当たるオミクロン(Ο)からオミクロン株と命名しました。オミクロン株は基準株と比較し合計59カ所の変異があり、なかでもウイルスの表面にあるスパイクタンパク質には32カ所の変異が認められています。これだけ多くの箇所に変異をもつようになったのは、免疫不全者の体内で慢性的な感染状態が成立し、時間をかけて変異が蓄積された結果と推定されています。

オミクロン株は感染性が非常に高いのですが、これはウイルスのスパイクタンパク質が、ヒト細胞の表面にあるACE2という受容体に対して、親和性が高いのが原因と考えられます。病原性については、無症状や軽症が多く、デルタ株と比較すると重症化率や死亡率は低いと言われています。しかし、陽性患者さんが桁違いに急増することにより、一部地域ではすでに現実のものとなっていますが、医療システムに大きな負荷がかかる恐れが強く、楽観視することは禁物です。

これまでの新型コロナワクチンについては、2回接種した後、時間の経過とともに効果が減弱していき、半年程度で効果が乏しくなってしまいます。しかし、ワクチンを3回接種することで、一定の効果が期待できると見られています。また、複数の国内製薬会社からも、いろいろな作用機序の新規ワクチンが上市される見とおしです。

治療薬については、デルタ株で有効であった「ロナプリーブ」という中和抗体薬の効果が減弱しています。これはスパイクタンパク質の変異箇所が増えたことにより、中和抗体が結合しにくくなったからだと考えられます。昨年末に承認を受けた「ラゲブリオ」という内服薬は、ウイルスが複製する過程で必要なRNAポリメラーゼという酵素を選択的に阻害することで、ウイルスの増殖を抑制します。ラゲブリオはスパイクタンパク質の変異に影響されないため、オミクロン株にも有効と言われています。

昨夏にピークを迎えた第5波が落ち着いた後、日本にとっては比較的平穏で幸福な数カ月が過ぎました。しかし、年明け以降はオミクロン株の市中感染が沖縄県、山口県、広島県、大阪府、東京都で拡大し始め、第6波の始まりが鮮明になってきました。陽性者が日を追うごとに増加しており、このままでは日本でも陽性者が一日当たり数万人出ても不思議ではありません。

家庭内での感染多いことから 同居家族にも節度ある行動を

そのようななかで、大切な患者さん、利用者さん、職員の皆さんをどうやって守っていけばよいでしょうか。

やはり、基本的な感染対策を必要な場面でしっかりと行っていくことが第一だと思います。病院や施設のなかではマスク、ゴーグルを着けて、必要な場面で手洗いを行う。プライベートでは不要不急の外出、繁華街に足を運ぶのを控え、家族以外との会食についても医療人としての自覚をもって自制する。また、オミクロン株の特徴として、家庭内感染が多いため、同居の家族にも節度を保った行動をお願いする。特別に難しい連立方程式を解く必要はありません。「これくらいは大丈夫だろう」と油断しないで、医療人として矜持をもち、自らの行動を律していく――そういう心構えが何よりも必要だと思います。

患者さんの幸せを求めて、皆で頑張りましょう。

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